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世界はいつも空色に染まる  作者: 三雲シュン
Ⅱ章 Sky Garden
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疑惑と希望

「ああ、さっぱりした。ずっと付けてるとなんだか苦しいんだよ…。でもこれ、よくできてるだろ?」


さらに彼は嘲るような表情で続けた。


「しっかし、計画と言うのはうまくいかないものだねぇ。二人がまさか逃げ出そうとは…。ま、見つかるのも時間の問題だと俺は思うがね。まぁ恐らくは、街の監視網を避けて後々君たちと合流するつもりであったことを考えると、向かったのは間違いなく…。」


「…森を流れる川の上流、僕らが目を覚ました場所…だな。」

玉樹は答えた。


「だろうねぇ。って訳で既に捜索にロボットたちが向かっているよ。どうやら君たちの命運は尽きたようだ。」


「…くっ…!」

怒りをあらわにする瀬古。そのままの口調で続ける。

「…それで?これから俺たちをどうする気だよ?」


「ふむ。お前らは他の三十二人と違ってプロジェクトの全容を知ってしまっている。当然彼らと会わせることはおろか、もとの世界に帰すことができるかどうかすら分からん。場合によっては天国行きもあり得るから覚悟しておけ。ま、俺もそれだけは避けたいがな。」


…恐懼の表情と共に身震いする三人。


そして石榑は不敵な笑みと共に扉を開ける。


「こんなことして卑劣だと思わないのか?」

出ていこうとする彼に玉樹が問い掛けると、

「…いずれお前らにも分かることだ。」

捨て台詞の如く呟いた石榑はさらにもう一歩踏み出す。


「…せめて名前くらい名乗ったらどうだ?どうせ石榑崇なんて名前も偽名なんだろ?」


すると数秒の間をおいて彼はこう答えた。


「氷室曜慈だ。」



石榑、本名氷室なるその男が部屋を出ていって数分、三人はずっと無言のままだったが、玉樹はその静寂を破って一声発した。

「…どうにも腑に落ちないんだよなぁ…。」


「…へ?何が?」

隣に座る瀬古が尋ねる。


「いや、これは前々から思ってたことなんだけど…何ていうか…この世界に違和感を感じるんだよね…。」


「…どういうこと?」

今度は二人の対面に座る澪が尋ねた。


「ここは空中に浮かぶ天空都市・スカイガーデン。作られたのは僕らの世界からおよそ25年後だ。けど…その頃までにそれだけの科学技術が発達しているとはどうしても思えないんだよ…。」


「…う~ん、言われてみれば…。」


「これだけの巨大な物体を宙に浮かして、限りなく自然に近い人工の生態系を創り上げ、天候なんかも自在に操作でき、街の管理は全てAIがとり行っている…。そんな高度なテクノロジーが果たして本当に2038年までにできるのかな…って。」


「…まあ、未来はどうなるか分からないものだからな。あり得るだろ。」

「そうかなぁ…。あとさ、この極秘プロジェクトのことなんだけど…。」

「…何だ?」

「僕らの世界を征服するのが最終目的なんだろ?そんなことしたらこの世界にも影響が出るんじゃないかって。」


「……。」

考え込む瀬古。


すると澪がようやく彼の言わんとすることを察知したかのように、手を叩いた。

「あ…確かに。過去をいじれば未来も変わるもんね。」


「…あ、成程。」

二人して納得する。


「過去が変われば未来も変わる、この考え方が正しいとするならば、奴らの過去世界の征服によって、この世界はほぼ全くの別世界へ豹変してしまうんじゃないかなぁ…って。」


「そうですよね。」

「ああ。確かにそうだな。でも…ならなんであいつらは…?」

瀬古は不思議そうに玉樹の顔を覗く。


「…僕にだってわかんないよ!けどもしかしたら…僕らが考えている以上に未来と過去の関係は単純なものではないのかもしれないな…。」


「そんなことより俺たちどうすんだよ、これから!あの二人も居場所がバレてる以上、あいつの言った通り捕まるのも時間の問題だぜ?」

「…何言ってんだよ。二人が本当にあの場所へ向かったとでも思ってる?」

「違うんですか?」

澪がすぐさま尋ねる。

「こうなることは事前に想定済みだよ。僕、釣りに行った時、一回だけいい釣りスポットを求めて、かなり上流の場所まで歩いて行ったことがあってさ。その時に見つけたんだ。誰も住んでいないテラス付きの木造プレハブ小屋。そこなら万一の場合、一番安全に身を隠せると思ってリュウくんにも話してあるからきっと…。」


「いやぁ、相変わらず行動が早いな、ショウゴは!」

「流石です!」

二人の称賛にかぶりをふる玉樹。

「いや、これくらい…。あとはあの二人次第だよ、結局。」


「…そうだな。」

「…うん。」


小窓に見える緋色に染まった夕暮れ空を見上げた玉樹は呟いた。

「明日が決戦の時…だな。」


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