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世界はいつも空色に染まる  作者: 三雲シュン
Ⅱ章 Sky Garden
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玉樹の推理

なんとその男は彼らが数日間世話になった居候先の家主、小説家の石榑崇だったのだ。


「いいや、ここではヨージさんとでも呼ぶべきかな?」

「その口調だと知ってたかのような様子だな。」

「…何となくな。色々あんたには不審な点が多過ぎた。」

「ほほぅ。…ご参考までに聞かせて貰おうか。」

石榑はこれまでの接し方とはうって変わって、威圧感のある声で言った。


「…どこから話したものかな。まず第一にリュウくんとミオちゃんが現れた時だ。あんたは嫌な顔一つせず居候を了承してくれたよな。僕と瀬古の二人を加えて四人。二人程度ならともかくとして、いくらなんでも初対面の四人を文句なく泊めてくれるなんてお人好しはそうそういない。

第二にあんたが本当に小説家なのかってことだ。何日経ってもあんたが実際に小説を執筆しているところは見なかったし、まぁこれは僕の固定観念だったけど…あんたどう見ても頭脳系には見えない。どうにも小説家とは思えない疑惑が湧いてきてね…。瀬古に頼んで本屋で調べてきてもらったんだ。結果は大当たり。石榑崇なんて小説家はいないってことだった。リュウくんたちが来る前、あんたにペンネームは何ですかって尋ねた時、本名の石榑だよって答えたよな。咄嗟にいい名前が思いつかなかったんだろうが…それがヒントになったよ。

そして第三に、僕らが来た時、家が妙に綺麗だったことだ。まさに新築、咄嗟に用意した仮屋のようにね。」

玉樹は誇らしげに、滔々と説明を続ける。


「成程。それでどう推理したんだい?」


「あんたは何か一連の真相を知っていて、僕たちを敢えて家に住まわせたんだ。過去から来た僕たちを。けれど流石にこの推理は所詮推測に過ぎなかった。確証が得られずにどうしたものか迷ったんだけど…突然現れたあの子の話を聞いて確信できたんだ。」


「…サキの話か?」


「…ああ、そうだよ。あんたの話では瀬古は街の裏通りで倒れていたところを助けて…って言ってたけど、あれ、嘘だろ?あの子の話じゃ時空間の出口の座標設定が銃撃でずれたんだろうって言ってた。僕もミオちゃんもリュウくんも目覚めたのは例の森。けれど瀬古は街の裏通り。おかしいだろ?恐らくはあんた、森で倒れていた瀬古を連れ去って、急遽確保した新居で小説家を装った。そして金髪青年が街で倒れて云々の噂を街に流し、自然な形で僕と接触を試みたんだ。」


「いやはや、凄い。正解だ。じゃその目的は?」


「まあまずは僕ら四人を回収することだろうな。予想外のトラブル発生でわざわざあんたが街へ赴いて、僕らを見つけ出す必要性が出たんだ。一連の計画の人質としての役割なんだからな。情報収集に励んで街を徘徊している僕たちが、残る二人と接触することになるのはもはや必然的。その手間を省いたんだろ?でもそれだけじゃないはず。それならミオちゃんとリュウくんが現れた時点でさっさと縛り上げて、コントロールセンターに連行すりゃおしまいだ。

そうしなかった理由として考えられるのは二点。まず僕らから過去世界の情報を入手すること。偽りの職業として小説家を選んだのも恐らくそのため。小説のネタに…とか言って自然な形で聞き出せるからな。」


「……。」

石榑は見事なまでに的中している彼の推理に半ば驚きの表情を見せる。


「もう一つは例の少女、豊野紗季を見つけ出すことなんじゃないか?ほぼ裏切ったと言ってもよい彼女を放置しておくのは、プロジェクトの進行にあたって支障となり兼ねない。監視カメラには映らないから可能性は低いものの、彼女がこの街に潜伏しているであろうと推理して、二人の時と同様に僕らが見つけ出してくれるのを待ったんだ。するとあんたの予想は見事に当たり、僕らがあの子を連れ帰って来た。そして首尾よくタイミングを見計らって、例の監視ロボ数十体を呼んだ。どうだ?」


「…流石だ。日本のトップ3に入る難関大学理学部の首席合格者だけあるな。洞察力と推理力が卓越している。」


「…僕らのプライベートな情報は既に調査済みってわけか。」

玉樹は全てを知り尽くしているかのような石榑の態度に対峙する。一方の澪は石榑からの初耳情報に怪訝な顔つきを見せた。


対して石榑は軽い吐息と共に嘲笑。


そしてゆっくりと顔の前に手を持っていくと、何が起こるのかと思いきや、顔の変装を剥がし始めたのだ。


「……。」

静まる三人。


ペリペリという音と共に顔を覆っていたマスクが剥がれていく。そうして石榑の素顔を初めて目の当たりにする三人。その顔はどこにでもいそうな中年男性だが、その一方で腹の内が分からない、冷淡な真顔を貫いている。


「…変装、だったか。サキにばれないための。」


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