語られる過去
「私には生まれた時から父も母もいなくて、ずっと孤児院で育ってきました。孤児院ではいつも一緒に、五人の友達と遊んで、食べて、寝て…、そんな毎日を送ってました。友達って言うより、生まれた時から一緒に育ってきた兄弟姉妹みたいな存在です。
そんな折…、八歳のとき。一人の男が私たちの前に現れたんです。その人は、私たち六人に『君たちはヒーローになれる。俺についてきてくれないか』、そう言いました。勿論私たちはその意味がさっぱり分かりませんでした。けど、この孤児院での生活は衣食住の面でも相当に辛い日々でした。だから私たちは彼の言葉を信じてついて行ったんです。」
銀髪の少女はゆっくりした、大人びた口調で話を続ける。
「そのついて行った先は…、コントロールセンターでした。」
「…!?」
「…察しはついてるかもしれませんが、その男はコントロールセンターの最高司令官、すなわちこのスカイガーデンを統治する指導者でした。」
「…どういうことだよ?」
瀬古さんが問い掛ける。
「その人は私たちに、あるプロジェクトの実現のため我々の協力をしてほしいと…、そう言いました。協力してくれたらこのコントロールセンター内での快適で自由な生活を保証すると。当時幼かった私たちは二つ返事で了承したんです。そのプロジェクトと言うのは、当時開発途上にあった時間遡行機械、つまりタイムマシンを完成させて過去世界との関係を築き上げる、ということでした。簡単に言えば。」
…少しずつ僕らの事情と近づいていく。
だがそうなるとここで一つの矛盾が生じる。この未来世界においても、タイムマシンが民間で使用されているという話は聞かないということ。それ以前にそんな機械が開発されているなんてウワサすらないのだ。
「タイムマシンって…それはつまり…?」
「そう、そのプロジェクトは一般に開示することなく、コントロールセンター内で極秘に進められている計画、ということでした。そうして私たち六人はそのプロジェクトに加担することになったんです。」
「…協力って…どういうふうに?」
「…私たち六人は彼の手によって、他の人間にはない、特殊な能力を手にしました。」
…特殊な能力。その響きは何ともSFチックに耳に伝わった。
「その計画を進めるにあたって不可欠な技能、とでも言えばいいですかね。私たちは最先端の脳科学テクノロジーの結晶とも言えるマイクロチップを、脳に埋め込まれたんです。そのプログラムと生の人間の思考との組合せで発揮される特殊能力。そのチップは六人それぞれが異なるプログラムを含んでいます。
例えば、タイムマシンを完成させるための物理や数学の応用プログラム、あるいは別世界との繋がりに成功した場合に必要になるであろう、他人と目を合わせることで相手の考えていることが分かる、という能力。他にもそれぞれが自分だけの特別な力を手に入れました。そして私の能力は…。」
淡々と動いていた口が一旦止まる。
そして暫くの間ののち、こう言った。
「私の能力は、別世界と何らかのトラブルが発生した場合、すなわち戦争という事態に発展した場合に備えた特殊な戦闘能力。狙撃手としての能力です。」




