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第1話:『捕食の事実』

SF小説です。よろしくお願いします(`・ω・´)ゞ

第1話:『捕食の事実(前編)』

マリアナ海溝の底。太陽の光が永遠に届かない、気圧数千メートルの漆黒の深淵。そこには、人間たちが想像すらしていなかった高度な知性と有機インフラが構築された「タコ文明」の最高議事堂が存在した。


その中心に君臨するのが、タコ界の絶対的指導者であるタコス長老である。彼は完全なる「タコ至上主義」を掲げ、これまで地上の劣等種(人間)など、深海の生態系を汚すだけの「目に見えない埃(ほこり)」程度にしか見なしていなかった。ゆえに、あえて地上へ干渉する時間すら無駄だと切り捨ててきたのだ。


だが、その静寂の王国に、今や地鳴りのような怒りの神経波が満ちていた。


議事堂の円卓の周囲には、タコ文明の重鎮たちが集結している。その中の一人、保守派の重鎮として知られるタコヤキが、硬質な体表を不安げな鉄紺色に染めながら、タコス長老の前に最新の観測データを差し出した。


『……長老。確認いたしました。地上の劣化哺乳類どもが、我々の同族を用いて行っている「儀式」の記録映像です』


タコス長老の体表が、怒りを通り越して漆黒の闇の如き無機質な黒へと染まる。彼らに「声」や「言語」という非効率なツールはない。全身に張り巡らせた神経の塊、皮膚の色と発光パターンを瞬時に変化させる「全身言語(ニューロ・シンク)」によって、億単位の個体がひとつの意思を共有する。


送られてきた映像データは、人類の生態圏における「食料流通網」の解析結果だった。


そこにあったのは、人間たちの市場や飲食店と呼ばれる温かい光に満ちた空間。ガラスケースの中に並べられ、あるいは鉄板の上で、あるいは醤油という塩分と化学調味料にまみれて――「バラバラに解体され、食肉として無残に消費されている我々の同族(下等種だが、遺伝子のルーツを同じくする血族)」の姿だった。


人間の子供が、無邪気に串刺しにされたタコを頬張っている。大人の男が、黄金色の発泡酒とともにそれを胃袋へと流し込んでいる。


議事堂を、凍てつくような静寂が支配した。怒号はない。激昂もない。彼らにとって感情の爆発は無駄なカロリーの消費でしかないからだ。ただ、地球の表面積の70%を支配する冷徹な知性体が、一斉に「殺意の計算」を始めた。


重鎮タコヤキが、不気味に腕をうねらせてシグナルを送る。


『我が同族を、あの二足歩行の害獣どもは「美味い食材」と称し、養殖し、日常的に消化している。これは生存権の侵害であり、宇宙の秩序に対する許されざる冒涜です』


タコス長老の目から、冷ややかな、しかし底知れぬ熱を帯びた光が放たれた。


『――許されざる暴挙だ。我々はこれまで、あの愚劣な寄生虫どもを泳がせてやりすぎた』


タコス長老の体表が、静かに、しかし絶対的な「審判」の色である血赤色に発光した。長老の宣言が、神経網を伝わって全深海拠点へと轟く。


『全軍に通達する。これより、人類に対する全面的な「駆除計画(プラン・ゼロ)」を始動する。まずやつらの生命線を繋ぐすべての「海」を閉鎖せよ』


地球の海が、音もなく牙を剥いた瞬間だった。








『捕食の事実(後編)』

マリアナ海溝の深淵に広がるタコ議事堂。タコス長老から放たれた「駆除計画(プラン・ゼロ)」の勅令を受け、議事堂の空気が一段と張り詰めた。


その最前列で、たたき上げの軍人で質実剛健なオクタン将軍が、太い腕をどっしりと組み、冷徹な低周波のシグナルを発した。


『長老のご意志通り。あの愚劣な害獣どもは、もはや生かしておく価値すらない。我が軍が総力を挙げて、やつらの命の綱である海を完全に閉鎖し、文明の息の根を止める』


その隣で、タコ貴族の名門出身である軍事顧問のタコールが、ニヒルな笑みを浮かべるように体表の模様を妖しく明滅させた。


『将軍、焦ることはありません。しかし、ただ叩き潰すだけでは面白くない。やつらは自分たちが地球の主だと本気で信じ込んでいる。その慢心を、一番絶望的な形でへし折ってやるべきだ』


さらに、保守派の重鎮であるタコヤキが、その丸みを帯びた巨体をわずかに震わせながら、重々しく同意のシグナルを送る。


『……左様。我々の同族を食用にするなどという暴挙、万死に値する。だが、地上への本格的な侵攻には、物理的なアプローチの徹底が必要不可欠。まずは沿岸部のインフラを断ち、やつらを内側から自壊させねばならん』


議事堂に集まった億単位の個体たちの意思が、完全に一つに収束した。感情の爆発ではなく、極めて合理的かつ冷徹な「絶滅の合意」である。


タコス長老は、血赤色に染まった体表をゆっくりと落ち着かせると、最終的な出撃指令を下した。


『許可する。まずは前線の若き部隊長――マダラに中隊を率いさせ、手始めに沿岸の移動体を排除せよ。副隊長であるタコワサにその補佐を命じる』


『――地上の下等な哺乳類どもに、深海の底から這い上がる本当の恐怖を教えてやれ』


この瞬間、マリアナ海溝の奥深くから、全人類の運命を狂わせる「静かなる進軍」が始まった。地上では、人々がまだテレビやネットの画面を見て、いつもと変わらない日常を過ごしている――その裏で、地球の主権が書き換わるカウントダウンが、音もなく動き出したのだ。


(第1話・完)


とりあえず1話です!

タコさんの侵略に世界は!?


そんなかんじです。

まだまだ続きますよ~~

ブックマーク評価してくれると嬉しい


気ままに投下していくつもりです。

よろしくです。

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