おまけSS「13話その後」
本編完結記念です。
翌朝。
朝焼けの中、学院の門前には、各魔術隊からの迎えを待つ卒業生たちが集まっていた。
「ミリ、身体には十分気をつけてね」
クレイは私の両手を握ったまま、真正面から真剣な顔で覗き込んでくる。
「……あ、あの、クレイ……」
私は繋がれた両手にちらりと視線を落としてから、クレイを見上げた。
当の本人は、まるで気にした様子もない。
「どうしたの」
「ものすごく見られてるんだけど……」
元クラスメイトたちの好奇の視線が、容赦なく突き刺さってくる。
なかでも、女子生徒たちのものが痛い。
いや、痛いなんてもんじゃない。
「ローデン、いつから」
「恋愛に興味なさそうな顔して」
「ただの幼馴染って言ってたじゃないの」
ひそひそと聞こえてくる声は、もはや呪詛に近い。
そのうち背中から呪術でも飛んできそうだ。
クレイはようやく顔を上げ、周囲を見回した。
不愉快そうに眉を寄せただけで、彼女たちはさっと目を伏せる。
それを確認すると、クレイは再び表情を和らげ、私に向き直った。
(生きた心地がしない……!)
昨夜のパーティでも、始終この調子だった。
クレイは楽しげだったが、私は三晩手を繋いでいたとき以上にやつれた自信がある。
だというのに。
「夏までには書類をまとめて、一度ミリの隊舎に行くよ。手続きは僕がやるから任せておいて。隊の人には、結婚を考えている相手がいるって言ってね」
矢継ぎ早に飛んでくる言葉に、思わず目を瞬いた。
「ちょ、ちょっと待って。……昨夜はああ言ったけど、あなたのご両親が納得するかしら?」
「……」
「私とあなたじゃ、あまりにも釣り合いがとれないというか」
すると、クレイがすっと目を細めた。
「ミリとの結婚を許さないなら、独身を貫いて死ぬって、ずっと伝えてる」
「……ずっと?」
「ずっと」
あまりにも迷いなく返されて、言葉を失う。
私の背後から、女子生徒たちの悲鳴が聞こえたような気がした。
クレイは繋いでいた手を握り直すと、そのまま私の手を自分のほうへ軽く引き寄せた。
「それじゃ、待ってるから」
そう言って、私の手の甲にそっと唇を落とす。
「ミリ、好きだよ」
彼は満面の笑みを浮かべると、朝日に金の髪を輝かせながら、迎えの馬車へと歩いていった。




