表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【悪役転生 レイズの過去を知る 】―俺だけが知る結末を、今度こそ覆す―(現在物語を全話を丁寧に修正しています。180-189話修正、大幅に加筆しました。)  作者: くりょ
レイズは強くなる

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
97/792

過去のレイズを知る①リリアナ

屋敷の廊下を、レイズは力なく歩いていた。


窓から差し込む昼の光が床を白く照らしている。だが、その光さえ今日はどこか遠く感じた。


昨日まで胸を満たしていた高揚感はもう残っていない。


残っているのは村人たちの怒りそして恐怖の言葉だけだった。


『ふざけるな!!』


『お前がしたことを忘れるわけがないだろ!』


何度も振り払おうとした。気にする必要はないと自分に言い聞かせた。けれど、その言葉は胸の奥へ深く刺さったまま抜けない。


本来のレイズが何をしたのか。


何を壊したのか。誰を傷つけたのか。

今の自分は何も知らない。

それなのに、その重みだけは確かに感じてしまう。


そんなことを考えながら角を曲がったその時だった。

そこに一人の女性が立っていた。


長い髪を揺らしながら、柔らかな表情でこちらを見つめている。ただそれだけなのに、不思議と胸の奥がざわついた。


「……あ」


言葉を探そうとした瞬間だった。

彼女の方が先に口を開いた。


「――よく頑張りましたね」


たった一言。

それだけだった。

それだけだったはずなのに。

胸の奥で張り詰めていた何かが音を立てて崩れた。


「あ……れ……?」


視界が滲む。

気付けば涙が零れていた。

止めようとしても止まらない。

情けないと思うのに、どうしても止まらない。


すると女性はゆっくりと歩み寄り、何の迷いもなくレイズを抱きしめた。

その腕は温かかった。

柔らかかった。

そして何より、懐かしかった。


「ほんとうに……大きくなりましたね」


耳元で優しい声が響く。


「なのに、変わりませんね。レイズは」


その言葉に胸の奥がまた熱くなる。


「……きみは……」


震える声で問いかける。

すると女性は少しだけ困ったように笑った。


「あら…もう前みたいにリリアナって呼んでくれないんですか?」


その瞬間、記憶ではなく感覚が理解した。

この人は特別な人だ。

服を用意してくれた人。

世話をしてくれた人。

そんな言葉だけでは足りない。


もっと近くて、もっと深くて、もっと大切な存在だとレイズは魂で理解する。


リリアナもまた静かにレイズを抱きしめ続けていた。


ようやく会話ができた。

ただそれだけで胸がいっぱいだった。

母であるセシルの代わりに。


母として。誰よりも近くでレイズを育ててきた。


泣けば抱き上げ、笑えば一緒に笑い、眠れば毛布をかける。


そんな日々をずっと繰り返してきた。

だが、ある日。


『本当のお母さんでもないのに!!』

『もう話しかけてくるなよ!!』


その言葉が突き刺さった。今も消えていない。

リリアナの心の奥深くに残り続けている。


それでも彼女は離れなかった。

衣服を整えた。食事を気にかけた。


影から支え続けた。

だからこそ今、こうして泣いているレイズを抱きしめながら思う。


――よかった。


本当に。よかった。

それだけで十分だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
たくさんの方に読んでいただき、本当にありがとうございます。 完結済の長編です。レイズたちの物語をぜひ最初から。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ