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【悪役転生 レイズの過去を知る 】―俺だけが知る結末を、今度こそ覆す―(現在物語を全話を丁寧に修正しています。6-13話大幅に加筆してます。。)  作者: くりょ
レイズになる

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そして口に広がるのは涙の味。

レイズは無言で走り出した。

――自分がやったわけじゃない。


だが、過去の自分がやったことなら、それはもう自分の責任だ。

だから気にするな。

そう言い聞かせたつもりだった。


だが、喉の奥に広がったのは汗の味ではない。


ほんの少し。しょっぱい涙の味だった。


レイズは奥歯を噛み締める。

泣く資格なんてない。

苦しむ資格なんてない。


傷ついたのは自分ではない。村の人々なのだから。

レイズはその感情ごと押し潰すように地面を蹴った。


ただ前だけを見て走り続ける。

その背中を追いかけるリアナ。

出発の時に浮かべていた無邪気な笑顔はもうなかった。


胸の中にあるのは心配と敬意だけ。


(……レイズ様。やっぱり強い方…)


あれほどの仕打ちをうけながら立ち止まらない。逃げない。

前を向こうとしているのだと。


尊敬と切なさが入り混じり、リアナは小さく唇を噛んだ。


一方でクリスは表情を変えなかった。

いつも通り。

冷静沈着な騎士の顔。

だが胸の奥底では別の感情が燃え続けていた。


(……あの方を笑った連中。許さない)


静かな怒り。

底の見えない殺意。


(命に代えてでも、この方を護る)


その決意は誰にも見えない。

だが確かに。

クリスの忠誠はこの日、さらに深く刻まれていた。


やがて三人はアルバードの屋敷へ戻る。

門の前にはリアノとイザベルの姿があった。

心配して待っていたのだろう。


二人は帰ってきたレイズへ声をかけようとした。

だが――。


その表情を見た瞬間。言葉が出なかった。

何も言えない。

何を言えばいいのか分からない。


だから二人は黙っていた。

ただ黙って帰ってきた三人を迎え入れる。


レイズは何も言わず、そのまま屋敷の中へ歩いていく。


リアナも。クリスも。


後を追わなかった。

追ってはいけないと分かっていたからだ。

今のレイズには一人の時間が必要だった。


レイズの姿が廊下の奥へ消えていく。

そして静寂を破ったのは――リアナだった。


「うっ……」


押し殺そうとした声が漏れる。

次の瞬間には涙が溢れていた。

ぽろぽろと。

止まらない。悲しかった。悔しかった。


苦しそうなレイズを見ていることしかできない自分が。


嗚咽が静かな屋敷へ響いていく。

リアノは何も言わず姉の肩を抱いた。

イザベルもまた唇を噛み締めて俯いていた。


誰もがそれぞれの痛みを抱えていた。

そして――。




その様子を一室の窓から見つめる女性がいた。

リリアナである。

リリアナはヴィルから事情を聞かされていた。


今のレイズが何者なのか。

なぜ変わったのか。


何を背負っているのか。

到底受け入れられる話ではなかった。


信じたいとも思えなかった。

だが一つだけ確かなことがある。


今のレイズはアルバードのために誰よりも努力していた。


誰よりも鍛練を重ねていた。

そして長い間沈み続けていたアルバードへ、再び光を取り戻している。


その事実だけは否定できなかった。

だからこそリリアナは決意していた。

もう逃げないと。

向き合おうと。


脳裏に蘇るのはメルェを失ってからのあの日。


自暴自棄になっていたレイズの叫びだった。


『お母様でもないのに!!』

『母親みたいにするな!!』

『二度と話しかけてくるな!!』


今でも忘れられない。

思い出すだけで胸が痛む。

あの日の傷は今も残っている。


それでも――。

どうしても話したかった。

どうしても向き合いたかった。


例え今のレイズが別の誰かだったとしても。

リリアナの目に映る少年は。


必死に前へ進もうとしているその姿は。

間違いなくレイズだった。


リリアナはゆっくりと拳を握る。

そして静かに立ち上がった。


もう逃げない。

今度こそ。


あの子と向き合うために。

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たくさんの方に読んでいただき、本当にありがとうございます。 完結済の長編です。レイズたちの物語をぜひ最初から。
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