静寂の中で確かに残した優しさ
ここまで読んでくれた皆様へ。
今回の内容は少し重たい話ですが、
是非引き続きお楽しみください。
店の中に、重たい沈黙が落ちていた。
「……なんなんだよ、あいつ……」
先ほど啖呵を切って出ていった男の言葉が、まだ耳に残っている。
「なんで……あんなに……」
残された村人たちは顔を見合わせ、答えを見つけられずにいた。
テーブルの上には、レイズが置いていった一杯のエール。
その琥珀色の液体は、静かに揺れ、光を受けて淡く輝いている。
マスターが小さく問いかけた。
「……飲みますか?」
男は苛立ったように振り返り、吐き捨てる。
「いらねーよ! そんなもん、おまえが飲め!」
怒鳴り声を残し、男は乱暴に店を出ていった。
しばしの静寂のあと。
「なら……あっしが、もらっても……」
気まずそうに手を伸ばした別の男が、ためらいがちにそのエールを口に含む。
次の瞬間――彼の目が大きく見開かれた。
「……っ!? な、なんだこれ……! キンキンに冷えてやがる……! こんな旨いエール、飲んだことねぇ……!」
周囲の視線が一斉にその男に注がれる。
そして、誰もがさっきの光景を思い出した。
――穏やかな眼差しで、怒りを抑え込みながらも差し出してくれた青年の姿を。
「……まさか……」
一人が小さく呟く。
「……俺たち、なにか……とんでもない勘違いをしてたんじゃないのか……?」
ざわめきが、静かに広がっていった。




