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【悪役転生 レイズの過去を知る 】―俺だけが知る結末を、今度こそ覆す―(現在物語を全話を丁寧に修正しています。180-189話修正、大幅に加筆しました。)  作者: くりょ
レイズになる

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受け入れられるわけもなく。

レイズは目の前の男を見上げながら、小さくため息をついた。


正直なところ、何をそこまで怒っているのか分からなかった。いや、正確には怒っている理由は理解できる。だが、理解できることと納得できることは別だった。


それ以上に気になったのは別のことだ。

(……こいつ、大丈夫か?)


アルバードの名を持つ人間へここまで露骨に敵意を向けるなど、普通なら考えられない。


まして相手は領主一族だ。


今のレイズならともかく、以前のレイズならどうなっていたか分からない。

呆れるというより心配が先に立った。


レイズは軽く手を上げると、カウンターの向こうにいる店主へ穏やかに声をかけた。

「すまない、マスター。彼にエールを出してやってくれ…」


店主は目を丸くする。

周囲もざわめいた。

誰も予想していなかった反応だったからだ。


それでも店主は慌てて頭を下げると、「か、かしこまりました」と返事をして奥へ引っ込んだ。


しばらくしてジョッキいっぱいのエールが運ばれてくる。

レイズはそれを男の前へ押し出しながら微笑んだ。


「心配するな…俺はすぐ帰る。それに、せっかくだから…飲んでくれ。俺のおごりだ」


レイズなりの気遣いだった。

前世でも酒場という場所は似たようなものだった。


酒を酌み交わせば少しは空気も和らぐ。

そう思っていた。

だが。

次の瞬間。


――バシャッ!!


冷たい衝撃が頭から降り注いだ。

一瞬、何が起きたのか理解できない。

髪を伝い、頬を流れ、服へ染み込んでいく液体。

レイズはゆっくりと顔を上げた。


男は空になったジョッキを握りしめながら、歪んだ笑みを浮かべている。


「そんな小細工で誤魔化せると思ってんのか!?」


店内が静まり返った。

誰も動かない。

誰も声を出さない。


レイズは額から垂れるエールを指で拭った。

正直、腹が立たないわけではなかった。

本来なら…間違いなく怒っている。


善意を踏みにじられたのだから当然だ。

だが、それ以上に気になったことがあった。


男の目だ。

怒りだけではない。

憎しみがあった。

長年積み重なった恨みがあった。


レイズは静かに問いかける。

「……お前。俺が誰か分かってやってるんだな?」


男は机を叩いた。

「だからなんなんだよ!!てめぇ!!」


怒鳴り声が響く。

「忘れるわけねぇだろ!!」


拳が震えている。

「俺たちの村で好き放題やっただろ!お前は!!」


その瞬間。

レイズの中で何かが繋がった。

そうか。

これは俺じゃない。

過去のレイズだ。

俺の知らないレイズが、この男たちに何かをしたんだ。


胸の奥が重くなる。

自分がやったことではない。

そう言って切り捨てることもできる。


だが不思議とそんな気にはなれなかった。

今はもう。

レイズの人生を他人事だと思えなくなっていた。


レイズはゆっくりと店主を見る。

「マスター」


店主がびくりと肩を震わせた。

「もう一杯だけ頼む」


戸惑いながら差し出されたジョッキを受け取る。そして。

「そうか…」


小さく呟いた。


「過去にしたことは謝る。だから…」


男は目を見開く。

レイズは静かにジョッキを差し出した。


その中身は密かに《フリーズ》で冷やされている。

「これを飲んでみてくれ。」


だが。

男の怒りは収まらない。


「ふざけるなぁ!!」


拳が振り上げられる。

しかし。

その拳は途中で止まった。


男の身体が震える。

冷や汗が流れる。

目の前に立っていたのはリアナだった。

いつもの明るい笑顔はない。


そこにいるのはアルバード家に仕える者としての姿。

瞳には明確な怒りが宿っていた。


「それ以上は…許さない…」


静かな声だった。

だが、男は一歩も動けない。

本能が理解していた。

目の前の少女が本気で怒っていることを。

そしてその直後。

店の扉が勢いよく開かれた。


クリスだった。

状況を一目見ただけで理解したらしい。

視線が濡れたレイズへ向く。

その瞬間。空気が変わった。怒り。

それもリアナとは比べ物にならないほど濃密な怒りだった。


「お前たち……レイズ様…………」


低い声。

男たちが息を呑む。

だがクリスが動くより早く、レイズが手を上げた。


「違う……」

クリスが止まる。

「この人は悪くない」


「しかしっ…!!」


「悪いのは…俺だろ。」


その言葉に店内が静まり返る。

レイズは男へ向き直った。


「あなたが怒る理由は分かった。」


その声に怒りはない。

「でも…この店は関係ない」


レイズは周囲を見渡した。

怯える店主。


固まる客たち。

重苦しい空気。


「マスターにこれ以上迷惑をかけたくない。」

そう言うと、レイズは踵を返した。


「行こう」

短い言葉だった。


リアナは悔しそうに唇を噛む。

クリスは信じられないものを見るような顔をしていた。


かつてのレイズなら絶対に言わない言葉だったからだ。

だが二人は何も言わない。

ただ黙って主の背中を追う。


店を出るその瞬間まで、誰一人として声を発することはできなかった。

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たくさんの方に読んでいただき、本当にありがとうございます。 完結済の長編です。レイズたちの物語をぜひ最初から。
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