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【悪役転生 レイズの過去 】―悪役の過去を知り未来は変わる。  作者: くりょ
レイズになる

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外へ行くことの許可をもらう。

レイズの胸は、妙に高鳴っていた。


(おれのまわりには、最強が三人もいる……なんてイージーな世界だよ)

そう心の中で笑いながらも――同時に脳裏をよぎるのは、チュートリアルであっさり殺された“レイズ”自身の記憶だった。


(……おいおい、最強に囲まれてたはずのおれが、あんな序盤で死ぬとか。おまえ……)

自分自身に呆れつつも、不思議と“なぜそうなったのか”をぼんやり理解している気がした。


――まぁ、ひとまず。

戦力的には今、かなり余裕がある。


そう考えた瞬間、ふと現実的な疑問が頭をよぎる。

(そういえば……アルバードって、地理的にどのあたりに位置してるんだ?)


ゲームでは何度も遊んだ世界。

それなのに、「アルバード」という名前だけは記憶にない。


未来を知る自分が知らない場所。

その違和感は、少しずつ胸の中で大きくなり始めていた。


そんなことを考えていると――

「当主様」

リアナが姿を現した。

レイズが口を開こうとした瞬間――。


「うむ。ご苦労。では食事へ向かう」


すかさず“それっぽい”言葉で切り上げる。

リアナは目を輝かせ、両手を胸の前で組んだ。


「さすが当主様ですっ!!」


その尊敬の眼差しに、レイズはどこか居心地悪くも、ほんの少し誇らしさを覚えるのだった。


食堂に足を踏み入れると、すでにヴィルとイザベルが席に着いていた。


――だが、空気は妙に重苦しい。


イザベルの目元は赤く、どこか泣いたあとのように見える。

「……イザベル、なんかあったのか?」


声をかけると、彼女はびくりと肩を震わせ、慌てて笑みをつくった。

「な、なにもないわ……」


そう誤魔化しながらも、レイズの顔を一目見ると、再び沈んだ表情に戻ってしまう。

「……」


その様子にレイズは言葉を失うが、ヴィルが静かに口を開いた。

「……気にしなくてよいのです」


祖父の落ち着いた声に押され、それ以上は追及できず、三人は食事を続けることになった。


――だが、胸の奥にざらついた違和感だけが残る。


何かを隠している。

それだけは、はっきりと感じ取れた。


やがて沈黙を破ったのは、レイズ自身だった。

「なぁ、ヴィル……」


スプーンを置き、真剣な眼差しを向ける。

「俺の知ってる世界だと“アルバード”なんて存在してなかったんだが……一体どこに位置してるんだ?」


その問いに、ヴィルは少しだけ間を置いてから答えた。


「……アルバードは、人の領土と魔族の領土。そのちょうど狭間に存在しているのです」


「……!」

レイズは思わず息を呑む。

(……人間と魔族の境界線……!)


あまりにも危うい立地。

だが同時に、胸の中で一つの疑問が確信へと変わっていく。


(――まぁ、そりゃそうだよな。これだけの化物がいれば、魔族どもも手を出せねぇわけだ……)


それほどの戦力を抱える領地。

ヴィル。

クリス。

そして、きっとグレサスですら一目置く存在たちだったはずだ。


そんな場所が未来で語られない。

そんなことが、本当にあり得るのか。


(……やっぱり、おかしい)


胸の奥のざわめきは、もう好奇心だけではなかった。

未来を知る者としての違和感。

知らないはずがないものを、自分は知らない。


それが何よりも不気味だった。

だからこそ、レイズは確かめたくなった。


「なぁ、ヴィル。明日は街のほうまでジョギングしたいんだけど……だめかな?」


その言葉に、食卓の空気が一瞬止まる。

ヴィルの瞳が細められる。


それは“ここから出ることを厳禁”と最初に釘を刺した本人の視線だった。


「……そうですね」


低く、考えるように言葉を選びながら続ける。


「私は最近、レイズに対しての“監視”は必要ないのではないかと思い始めていました。ですが……街へ行けば、後悔することになります。私はお勧めできません」


「後悔……?」

レイズは思わず首をかしげる。


意味が掴めない。

イザベルはその言葉に、かすかに肩を震わせた。

「……レイズくん。私も……おじいさまの意見に賛成かな」


伏せた瞳の奥に、言い知れぬ不安を宿している。

レイズは眉をひそめる。

二人とも、何かを知っている。

それなのに教えてくれない。


そうされればされるほど、真実を知りたい気持ちは強くなっていく。

「一体なんなんだよ……! そんな言い方したら余計に行きたくなるだろ!」


勢いよく立ち上がると、ぐっと胸を叩いて宣言する。


「大丈夫だ。俺はなにも後悔しない。……それに、護衛をつけてくれれば安全だろ?」


その言葉にヴィルはしばし沈黙したのち、静かに頷いた。


「……わかりました。では、条件をつけましょう。リアナとクリスを同行させます。それでよろしいですか」

「リアナと……クリス?」


レイズは思わず絶句する。

護衛という言葉からは想像もしていなかった名前だ。


特にリアナ。

彼女の明るい笑顔と、何気なく見せる怪力のギャップを思い出し――背筋にひやりとしたものが走る。


(おいおい……まさか、リアナもめちゃくちゃ強いのか……?)


内心で冷や汗をかきながらも、無理やり笑ってみせる。


「ま、まぁ……いいだろ。それで頼む」

ヴィルはふっと口元を緩めた。


「安心してください。ここにいる者は皆、今のレイズより――ほんの少しだけ、強いのです」


「……ほんの少し?」

レイズは顔を引きつらせ、イザベルは苦笑いを浮かべる。


その言葉がどのくらいの“物差し”なのか、レイズにはまだ理解できなかった。

それでも胸の奥に芽生えるのは、不安よりも期待だった。


ようやく、この屋敷の外へ出られる。

外には、この世界の人々が暮らしている

外には、ゲームでは知らなかった景色がある。


そして何より――。


このアルバードが、なぜ未来に存在しなかったのか。

その答えへ繋がる手掛かりも、きっと外の世界にある。

そう思うと、胸の高鳴りはもう止められなかった。


レイズは静かに拳を握る。

明日。

初めて、この屋敷の外へ足を踏み出す。


その一歩が、未来を変える始まりになる。

そんな予感だけが、胸の奥で静かに鼓動を打ち続けていた。

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たくさんの方に読んでいただき、本当にありがとうございます。 完結済の長編です。レイズたちの物語をぜひ最初から。
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