滅びたアルバードそして誓い。
レイズは湯に肩まで浸かりながら、頭の中でひとり思考を巡らせていた。
(……最強の序列なんて、もう書き換わってるよな)
一番は――ヴィル。
二番は――セバス。
三番は――目の前にいるクリス=ウラトス。
ガイルもとんでもない存在だが、死属性を駆使すればまだ戦える。
理不尽な壁ではあっても、戦略次第で突破口は見える。
だが、ウラトスは違う。
肉体のポテンシャルが桁外れすぎる。
どう足掻いても、今の自分には勝ち目などない。
(……そんな怪物が三人もいて……いや、四人目すらいるかもしれないのに)
自然と胸の奥に重い問いが生まれていた。
(――なんで滅びたんだよ、アルバードは)
それは声にはならず、ただ湯気の中で静かに沈んでいく。
レイズは目を閉じる。
けれど答えは見つからないまま、胸の奥で疑念だけが膨らんでいくのだった。
クリスは湯気の向こうで真っ直ぐにレイズを見つめ、深く一礼した。
「レイズ様、私は誓います。これからは、必ずお側で支える存在となるよう努めます。どうか、私どもをお導きください」
言葉は誠実で、表情は揺るぎない。まるで剣の約束を交わすかのような厳粛さが、湯殿に満ちた。
その宣誓に、レイズは一見格好よく応えようとした。低く、重みのある声で――
「期待している」
だが視線を落とすと、そこにあるのは互いに裸の身体。湯気は濃くても、事実は事実だ。レイズの頭の中で、きらりと別の声が即座にささやく。〈場所を考えろよ……〉
二人のあいだに流れる空気は真剣そのものだが、同時に何ともいえない気まずさも混じっている。礼節と現実が交差する、その滑稽さにレイズは苦笑をこらえた。
こうして、誰にも見えないところで――しかし確かに――熱い主従の誓いが結ばれたのだった。




