メルェとリアノの出会い。 メルェ絵付き
リアノは、少し遠くを見つめるように言葉を紡ぎ始めた。
「……それは、私がアルバード家に仕えるようになってしばらく経った頃のことです」
街の片隅。誰にも気づかれないよう、ひっそりと生きる少女に出会いました。
――メルェ。
彼女は“魔族”であり、すでに両親を亡くしていました。
孤独で、居場所をなくし、寒さに震える姿は……幼い頃の私や、レイズ様の境遇と重なって見えたのです。
「……放っておけませんでした」
だからリアノは、誰にも内緒でメルェのもとに通い、食べ物や毛布を持って世話をするようになった。
そんな日々が、ほんの少しの安らぎを彼女に与えていた。
――けれど、その隠しごとは長くは続かなかった。
ある日、不意に現れた幼いレイズが、二人の前に立ったのだ。
『なんだこれ……!?』
驚くリアノをよそに、レイズはメルェをじっと見つめた。
そして――迷いなく叫んだ。
『アルバード家で引き取る!』
リアノもメルェも、言葉を失った。
だがレイズはそのまま駆け出し、祖父ヴィルに直談判したのだ。
『俺が責任をもって守る!だからこの子を家に住まわせて!』
もちろん、ヴィルは首を横に振った。
「レイズ。責任とは、軽々しく語るものではない。お前はまだ、知らなければならぬことが山ほどある。それにその子は・・・・。」
けれどレイズは諦めなかった。
「メルェは親が死んでいる。一人で生きていけるわけがない、僕が守るから!」
安易で、無鉄砲で――けれども真っすぐなその言葉に、やがてヴィルも折れるしかなかった。
こうして――魔族の少女メルェは、アルバード家に迎え入れられることになったのである。




