魔力の壁。
そうして再び合流したレイズとイザベル。
今日は予定通り、魔力の質を高める特訓を行うことになった。
陽の光が差し込む庭の一角で、イザベルは両手を腰に当て、にこっと笑う。
「レイズくん。それでね――魔力の質を高めるって、どんなイメージがあると思う?」
真剣な問いかけに見えるけれど、声色はどこか明るくて柔らかい。
彼女にとっては大事な魔法の鍛練でも、堅苦しい雰囲気にする気はないのだろう。
レイズは首をかしげ、腕を組む。
「質、ねぇ……量を増やすとかじゃなくて……なんだろ、濃くする? 澄ませる? ……いや、ちがうな」
あれこれ頭の中でイメージを探りながら、口に出しては首を振る。
そんなレイズを、イザベルは楽しそうにじっと見ていた。
イザベルはふっと真顔になり、手を前に差し出した。
「魔力の質っていうのはね……こういうこと」
その掌に魔力をまとわせる。
淡い光が揺らめきながら、手を包む膜のように現れる。
彼女は軽やかに息をつくと、その魔力の厚みを自在に変化させていった。
分厚くなれば岩のように硬そうに見え、薄くすれば水面のように透き通る。
「こうやって厚みを調整して、自分の身を守るの。
……これができるかどうかで、生き残れるかどうかが変わってくるんだよ」
――これが“魔力壁”。
ゲームを知る者にとっては、シールドそのもの。
序盤で「攻撃が全然通らないキャラ」が出てきて苦戦することがあるが、それはこの壁が分厚いからだ。
そう思えば、イザベルの魔力壁がどれほど強力なのかがよく分かる。
イザベルはにっこりと笑みを浮かべ、手を差し出してきた。
「ねぇ、レイズくん。これ、掴める?」
「……は? 掴めるわけないだろ……」
そう口では言いながらも、レイズはそろりと手を伸ばした。
指先が光の壁に触れようとする――その顔はやけに緊張していた。
レイズは眉をひそめながら、そっとイザベルの差し出した手へと指先を近づけた。
――触れられるわけがない。
そう思っていたはずなのに、そこには確かに「壁」のようなものが存在していた。
「……な、なんだこれ……」
透明で形もないのに、確かに分厚い何かが手を覆っている。
指を押し込もうとすればするほど、ぐぐっと強烈な反発を受け、まるで岩を握ろうとしているようだ。
本気で力を込めても、びくともしない。
不思議な感覚だった。
――イザベルの細い手を、自分の手で包んでいるように見える。
だが実際には、絶対に触れられない。
「ほらね?」
イザベルはどこか得意げに微笑んだ。
「これが“魔力の壁”。質を高めるっていうのは、こういうことなの」
レイズは悔しそうに歯を食いしばり、さらに力を込める。
だが壁はひび一つ入らない。
「くっそ……こんなもん、絶対いつかぶち破ってやるからな……!」
イザベルはその言葉に目を細め、どこか嬉しそうに笑った。




