表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
68/586

ウラトスのストーリーを理解する



レイズは深く息をつき、今日の出来事を頭の中で反芻する。


「……クリス。」


心に浮かんだのは、ゲームで幾度となく敗北を重ね、やっとの思いで勝利した“あの男”――ウラトスの姿だった。


――勝利直後、カイルが問いかける。


『一体あなたは……何者なんですか? それに、その強さ……どうして……!』


問いかけに、ウラトスは一瞬だけ遠い目をして、不敵に笑った。


『……私は恩を返せなかった。助けることもできなかった。

 そして今も……なにも出来ずにいる。』


次の瞬間。


彼は迷いなく、自らの首を剣で貫いた。


――退場。


あまりにも唐突で、あまりにも説明不足。


プレイヤーたちは揃って「だからなんなんだよ!」とツッコんだ。

だが同時に、その強さと、滲む哀愁。

理解不能だからこそ、ウラトスというキャラは一部のプレイヤーに絶大な人気を誇った。


年齢は公開されなかったが、描かれた姿は四十代後半から五十に見えた。

強さと渋みを併せ持つ“謎の剣士”。


――そして。


レイズは震える胸の奥で、確信にたどり着く。


「あれは……ヴィルに恩を返せなかったんだ」


脳裏に浮かぶウラトスの最後の言葉と、今のクリスの横顔が、重なって見えてしまう。


-


ウラトスの言葉が脳裏で反響する。


――「助けることもできなかった」


それは、一体誰を?


答えは明白だ。


レイズ。


彼が守れなかったのは、他でもないレイズ自身だったのだ。


そして、突如として襲いかかってきた理不尽な敵意。

その理由も、今なら分かる。


ウラトスが斬りかかったのは――レイズを殺した“カイル”だったから。


『……今も、なにも出来ずにいる』


その言葉の意味も、はっきりした。

レイズの仇を討つことすらできず、無念を抱いたまま消えていったのだ。


レイズの頭の中で、パズルの欠片のように散らばっていた要素が、ひとつの像を描き出していく。


――そうか。


ウラトスの物語は、ずっと“レイズの死”を背負い続けた者の物語だったのだ。



こうして、ゲームでは決して語られなかった物語の断片を、自分だけが手に入れた。

胸の奥が熱くなるほど嬉しく、誰かに説明してやりたい――そう思えるほどに。


だが同時に、拭いきれない疑問が残った。


――あれほどの強さを持つウラトスが、なぜレイズの側にいなかったのか。


その一点だけは、どうしても理解できなかった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
たくさんの方に読んでいただき、本当にありがとうございます。 完結済の長編です。レイズたちの物語をぜひ最初から。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ