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【悪役転生 レイズの過去を知る 】―俺だけが知る結末を…。―(現在物語を大幅にリライト中)  作者: くりょ
新たな始まり

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魔族への依頼  (加筆してます。)



アルバードを抜け、魔族領の大地に足を踏み入れる。

いつもなら突き刺さるような鋭い視線が降り注ぐはずの場所。だが、その日は不思議なほど静かだった。


ただただ、足音だけが響く中――気配が近づく。


「……レイズさん、リアノさん。お待ちしていましたよ。」


現れたのはエルイだった。


「……待っていた?」


レイズは眉をひそめる。自分を“待っていた”――その響きがどうにも腑に落ちない。


だが、その違和感を胸に抱えながら進むと、やがて魔族の長が待ち構えていた。


「来たか。……用は理解している。」


威厳ある声が響く。


レイズは一歩前に出て答えた。

「ああ。対価を払いに来たんだ。」


懐から取り出したのは、輝きを帯びる石――メモリアルストーン。


「……それは、我らの石?」


魔族たちがざわめく。


レイズは静かに頷いた。

「ああ。だがこれは“その役割”とは異なる。俺はこれを――《メモリアルストーン》と名付けている。」


言葉と共に、彼はその使い方を示した。

しかし、魔族たちは首を傾げる。


魔族は本来、魔法を自在に操り、生活の全てを魔力で賄う。

ゆえに、魔力を媒介とする道具など、わざわざ必要としなかったのだ。


だが――レイズの次の言葉に、彼らの瞳が大きく見開かれる。


「お前たちも知っているだろう。……魔族同士でさえ、派閥があることを。」


一瞬で場がざわめいた。

図星を突かれたことに、誰も否定できなかった。


「だからこそ、これを渡す。争いが起きるとき、お前たちの助けになるはずだ。」


そう言ってレイズは、死属性の付与を施した特別なメモリアルストーンを差し出した。


「……試してみろ。魔力を込めてみてくれ。」


言われるがまま、一人の魔族が魔力を注ぐ。


――しかし、反応はない。

ただ、確かに魔力が掻き消え、空気からすり抜けるように“消失”した。


「……な、なんだこれは?」


息を呑む魔族たち。


レイズは冷静に告げる。

「それは――魔法を無効化する力を持つ。」


その言葉が響いた瞬間、空気が凍りついた。


魔族にとって“魔法を封じる力”とは、天敵以外の何物でもない。

彼らは一斉にざわめき、視線を交わし合った。


「なぜ……なぜそのようなものを我らに渡す?」


恐怖と疑念が入り混じった問い。


だが、レイズは静かに言葉を重ねた。


「お前たちの派閥――仲間の間でこれを広めてほしい。

 アルバードの“仲間”として、お前たちの勢力を伸ばすためにな。」


そして、ゆっくりと視線を巡らせる。


「これは対価だ。どう使うかは任せる。だが――これがあれば、お前たちは戦い方を変えられるはずだ。」


沈黙が流れ静かに


「……それは、我らに“魔属同士で殺し合え”と?」


低く響いた声に、その場の空気が一瞬で張り詰めた。

魔族たちの視線が鋭くレイズに突き刺さる。


だがレイズは、そんな空気をものともせず、口元に笑みを浮かべていた。


「いや――違う。」


ゆっくりとした口調で、しかし確信に満ちた声。


「お前たちがまとまらなければ、いずれアルバードは滅びる。

 今はただ、その“時間稼ぎ”をしているにすぎない。」


魔族たちの間にざわめきが走る。

レイズは一歩前へ出て、まっすぐに視線を向けた。


「だから――魔族たちを守るためにも、お前に頼みたいんだ、ヴェル。」


その名を呼ばれ、魔族の長が目を細める。


「……ヴェル、だと? そのように略して呼ばれるとはな。」


レイズは肩を竦め、悪びれもせず笑った。


「ああ、すまない。発音が難しくてな。呼びやすく、勝手にあだ名をつけさせてもらった。」


一瞬、場がさらに緊張する。

魔族において“名”は特別な意味を持つ。

それを軽々しく変えることは、時に侮辱と取られてもおかしくない。


「……人間よ。魔族にも“名前をつける”意味を分かっているのか?」


ヴェルの低い問いが、刃のようにレイズへ突き刺さる。


レイズはその視線を真正面から受け止め、静かに頷いた。


「ああ、分かってる。」


短く、だが確かな声。


「だが、俺はもうここのみんなを“仲間”だと思っている。

 そして――アルバードを、魔族を、お前も一緒に守るために協力してほしい。」


その言葉には、作戦や狡知を越えた、人としての真意がにじんでいた。


一瞬の沈黙が場を支配する。

だがその沈黙の奥には、確かに揺れるものがあった。

ヴェルビェイヌァイの瞳がわずかに細められ、その奥に複雑な光が宿った


「……まったく、ずるいものよ。」


ヴェルはゆるやかに笑った。

その笑みには、警戒と興味がないまぜになっている。


「それよりも――アルバードで面白いことをしていると聞いた。」


「……面白いこと?」

レイズが首をかしげる。


「ああ。」ヴェルは頷いた。

「我らの力を用いて、何やら“仕掛け”を作っていると。」


「ああ……それか。」

レイズは肩をすくめ、苦笑を浮かべた。


「すまない。お前たちの力を、勝手に使わせてもらっている。」


ヴェルは首を振った。

「そうではない。」


ゆっくりと言葉を重ねる。

「我らの力を“戦うため”でなく、“生活のため”に使うとはな……」


その声には、感嘆とも呆れともつかぬ響きがあった。


レイズはまっすぐにヴェルを見返し、静かに答えた。


「ああ。お前たちの力は奪うためだけじゃない。

 俺はそれを――証明しているんだ。」


その瞬間、場の空気が変わった。

敵対の中にも、わずかな“信頼”が生まれる音が確かに響いたように思えた。


「……だが、それを奪うために人は強欲になり、我らと戦うのではないか?」


ヴェルの問いかけは鋭く、深い疑念を含んでいた。


レイズは少し黙し、考え込むようにしてから答えた。


「――だからこそ、アルバードがあるんだ。

 そして、そのアルバードを守れるのは……お前たちの力だ。」


矛盾しているようでいて、どこか筋が通った答え。

ヴェルはじっとレイズを見つめ、やがて低く笑った。


「……よかろう。我らがアルバードを守ってやる。

 その代わり――お前は我らを守れ。」


その一言で場の空気はまとまった。

だが、ヴェルはすぐに声を落とし、付け加える。


「……しかし、“最果て”のやつらは別だ。

 あれらは決して我らと交わることはない。」


レイズはすぐに頷いた。


「わかってる。――ガイルのことだろ。」


「……ああ。」ヴェルは険しい目をした。

「奴は魔族の中でも特異。人への憎悪をその身に凝縮した存在だ。

 そして、その背後にいる“仕切る男”……あれは人間でありながら、既に魔の者として君臨している。だが――我らは奴に従うつもりはない。」


その声には強い決意と、誇りが込められていた。


「……それでも、アルバードは軍を持つつもりだ。」

レイズの声音には迷いがなかった。


「だが、それは人だけの軍じゃない。

 魔族の力も取り入れたい。――だから、誰か実力のある者の力を貸して欲しい。」


ヴェルは一瞬、目を細め、それから低く笑い声をあげた。


「まったく……人も魔族も混ぜた軍とはな。

 お前は本当に常識を壊す男だ。――では、エルイ。」


「……え、また私ですか……」


名を呼ばれたエルイは、あからさまに顔をしかめた。


「私なんて、そんな大した実力はありませんよ……!」


露骨に嫌そうな態度を見せ、肩を落とす。


だが、その仕草を見たレイズは、むしろ口元に笑みを浮かべた。


「よろしく、エルイ。」


不満げな彼女の反応とは裏腹に、レイズの眼差しは真剣だった。


エルイは肩を落とし、深いため息をついた。

「……どうなってもしりませんよ。ほんとに。」


そう言いながらも、しぶしぶ承諾する。


レイズは口元に笑みを浮かべた。

「ぁあ、それでいい。魔族の魔力は、王国に“威”を示すには十分なんだ。……実際には戦わせるつもりはないけどな。」


その言葉にヴェルが鋭い目を向ける。

「戦わせない……? では何のために?」


「作戦に関わることだ。」

レイズの声は短く、しかし確信に満ちていた。


一瞬の沈黙のあと、ヴェルが口を開く。

「それで……この後はどうするつもりだ?」


レイズは視線を上げ、空を仰いでから答えた。

「本当はティグルに行ってミスリルを手に入れたかった。だが……さすがにガイルが許さないだろうな。」


「……そうだろうな。」ヴェルは低く頷いた。

「最果てのやつらは憎しみ深い。ガイルの縄張りに足を踏み入れたら、生きては帰れまい。」


レイズは腕を組み、すぐに切り替える。

「だから、まずはダークエルフたちにも同じ話をするつもりだ。――あいつらならきっと理解してくれる。」


ヴェルの口元に、わずかに笑みが浮かぶ。

「よかろう。……それが賢明だ。」



リアノは小さく息を吸い込み、勇気を振り絞って声を上げた。


「その……ヴェル様! アルバードを助けてくださって、本当にありがとうございました。

 そして、この後のことも……」


ヴェルはわずかに目を細め、そして豪快に笑った。


「良い。――我らが助けに行ったのは、我らのためでもあったのだ。

 まぁ……我らが動かずとも、ダークエルフたちは動いていただろうがな。」


軽口を叩くように返すその声は、どこか温かさを含んでいた。


こうして魔族たちの了承を得て、レイズはリアノと共にその場を後にし、次なる目的――ダークエルフたちの村へ向かうこととなる。


背後から、ためらうような声が追ってきた。


「あの……私は……」


エルイだった。


レイズは振り返り、あっさりと告げる。

「ぁぁ、ここで待っててほしい。」


「……そうですか。」

エルイは肩を落とし、しゅんとした様子を見せる。


レイズは首をかしげた。

「……え? 行きたいのか?」


「い、いえっ! そういうわけではありません!」


必死に否定するエルイに、レイズは思わず苦笑を漏らす。


「……よくわからんやつだよな。ほんと、エルイは。」


呟きながらも、足を止めることなく歩を進める。

その横でリアノは小さく笑い、彼らの背を照らす光は、次なる道を示すかのように続いていた。


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たくさんの方に読んでいただき、本当にありがとうございます。 完結済の長編です。レイズたちの物語をぜひ最初から。
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