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優しく見守る影
レイズがぐすんぐすんと鼻をすすりながら、肉をかき込む。
涙をこぼし、皿にぽたぽたと落としながら、それでも食べ続けていた。
――その姿を、扉の影からリアナがそっと見守っていた。
「レイズ様……」
胸がじんと熱くなる。
(あれほどの鍛錬をなさって……それでも“軽い運動”だと虚勢を張って……
当主である自覚を、確かに示されていました……)
ぽろりと目尻から涙がこぼれる。
「……嬉しいです。私、とても嬉しいです」
震える声で小さく呟いた。
(ですから……どうか、心行くまで食事を楽しんでくださいませ……)
完全なる勘違い。
レイズが流している涙の理由を、リアナは一切理解していなかった。
だがその誤解は、彼女の胸の中に温かな確信を育てていく。
「当主様は、変わられたのだ」と――。




