ガイルは嫉妬する
ティグルにて
ティグルの地。
いつもの訪問者――ガイルが姿を現す。
彼の魔力の波長を感じた魔物たちは、まるで恐怖に駆られたように四散して逃げていく。
そんな中、ガイルは周囲の異変に気付いた。
「……なんだ? なんでこんなに荒れてやがる」
地面に刻まれた爪痕、砕けた岩、そして抉れた大地。
それは明らかに、凄まじい戦闘の痕跡だった。
「……ディアブロが、本気で戦った……?」
そんなはずはない。
ディアブロが自ら攻撃を仕掛けるなど考えられない。
しかし目の前の景色は、まさしく「ありえない」を示していた。
焦燥に駆られ、洞窟に飛び込みながら叫ぶ。
「おい!! ディアブロォォーーー!!」
奥から響くのは呆れたような声だった。
「……相変わらず声がでかいな」
ディアブロの返事に、ガイルは安堵し、口元に笑みを浮かべた。
だが次の瞬間、その笑みは凍りつく。
――ディアブロの身体に、深々と刻まれた「傷」があったからだ。
「お……お前……誰にやられた!? 俺でさえ、一度も傷なんざつけられなかったのに!!」
それは心配ではなく、嫉妬に近い叫び。
自分ができなかったことを成した存在への、どうしようもない感情だった。
ディアブロは、重々しい声で言った。
「……痛みというものは、こうも厄介とはな。――アルバードの小僧にやられた」
「アルバード……だと!? しかもその倅だぁ!? 笑えねぇ冗談言ってんじゃねぇ!!」
怒鳴るガイル。
だが、確かに目の前の傷が「冗談じゃない」と証明していた。
「……本気かよ……」
ディアブロは頷き、さらに続ける。
「やつには魔法が通じん。……それが決定的だった」
「魔法が通じない……? それって、お前と同じってことか?」
「いや、違う。もっと別の力だ。……“死属性”とやらが関係しているらしい」
「死属性……? そんな無意味な属性で、一体何が……」
だがガイルははっとする。
「……まさか。使い方を……理解したってのか」
ディアブロは低く笑う。
「ああ、それ以外に説明はつかん」
「けどな、実力で言えば――まだお前のほうが上だ、ガイル」
「はぁ!? 何言ってやがる!」
ガイルは怒鳴り、しかしすぐに黙り込む。
ディアブロは淡々と語った。
「我らにとって“魔力”は絶対だ。だが、我は魔力を保有しすぎている。……それを封じられれば、ただの肉体。そこらの魔物と変わらん」
その言葉にガイルは理解した。
「……つまり、魔力抜きの純粋な力比べになったってことか」
次の瞬間、ガイルは大声で笑い出した。
「クハハハッ! 馬鹿かよ! 魔力こそが最強だろうが! それを封じられたら……お前でも、ただの獣同然ってわけかよ!」




