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ヴィルの心情。
はじめは疑念しかなかった。
この者はレイズに成り代わり、アルバード家に害をなす存在かもしれぬ、と。
それゆえ、容赦なく試し、容赦なく斬る覚悟をしていた。
だが──
真剣な眼差しで、額から滝のように汗を流しながら、必死に魔力を練ろうとする姿を見て、胸の奥に何かが揺らいだ。
(……やはり、レイズだ)
本当は長い間夢を見ていた。
いつか実の孫に、魔法と剣の稽古をつける日が来るのだと。
だがその夢は、現実には叶わなかった。
それがいま──形は違えど、確かに叶ったのだ。
血のつながりではなくとも、今のレイズは自分を慕い、真っ直ぐに努力している。
悪意もなければ打算もない。ただ、ひたすらに学びたいと願い、未来を掴もうとする姿がそこにあった。
「……かわいいやつめ」
昔のレイズも、今のレイズも。
どちらも変わらず、自分にとっては愛しい孫なのだ。
ヴィルは心に固くそう誓った。