~道~ 2
綺麗に整えられた道。そこを行き交う人々の声。どれもこれもスケールが大きい。
ここが独立都市ロンファン。
全てが予想外だ。
確か、中心部にあるんだよな。
二時間後、落ち合う所になっているのはロンファンの心臓部だ。
そこには、裁判所や会議場、造幣局などがあると聞いている。まさに心臓だ。
そして、世界中立平和機関がある。
ここは世界中にある支部をまとめる本拠地で、組織の方針も全てここで決まっている。
僕は正式に部隊に入るため、やって来たのだ。
... ... ...実を言えば、会いたい人物がいるんだけど。
まあ、二時間ならゆったり観光もしつつ、たどり着くだろう。
さっきからずっとワクワクしてたんだよな。
僕は都市の中心部に明るく駆け出した。
これで完全装備だ。... ...間違いなく怪しい人物だがな。
ロンファンで一番賑わっているだろうここ、ユリエリアだ。
心臓部(ちなみに別名サクラエリア)の外っかわで、ツバキエリアの内側にある。
サクラエリアは行政機関が多く、ツバキエリアは旅行客のための宿が多い。
そして、ユリエリアは店舗が多い。
となると、必然的にユリエリアが一番賑わうのだ。
そんなユリエリアにサングラス、黒いマフラー、黒い帽子の全身黒ずくめの男がいたら誰だって怪しむ。
ほら、可愛い系の女の子がこっち怪しげに見てる。
全く、身に付けているもので人の反応はよく変わるもんだ。
服も、肩書きも。ヤな世の中だってこと。
おっと、本来の目的を忘れてたわ。
愚痴なんて言ってられっか。
例のヤツを探さなければ。そして、洗礼洗礼♪
俺は神経を集中させ街中を探る。
人は多いが、こんなもん問題のうちに入らねぇ。
変なオーラ、変なオーラ。
ビクッ、引っ掛かった。
釣れた獲物は、暖かいうちに頂くとするか。
足に力を込め、進む!
ターゲットまで1,5km。目と鼻の先だ。
あれ?どんどん街が廃れてく。
裏通りに入ってしまったのだろう。
困ったなぁ。故郷の方にもこういうとこはまちまちあったが、土地勘がないのでどうしようもない。
一旦立ち止まってみよう。まず、上を見る。青い空。次は左。黒い建物。右!左と同じ。下は... ...地面。
立ち止まってても、何も始まらない。
ゆっくりと歩き出す。
「おい小僧。人のナワバリに挨拶も無しに入るとはいい度胸してるな。少しよってけ」
ふと、周りを見ると明らかにヤバい人々に囲まれていた。
背中にタラッと汗が伝った。
「ほい、これ買ってけ。飲むと楽になるぞ」
奴らのアジトらしき所につれてかれた僕は、怪しげな薬を買わされそうになっていた。というか、麻薬。
出来は中々のものだが、買う気にはなれない。
「お前もどうせ人生に疲れたんだろ。悪いことは言わねぇ。買ったほうがいいと思うぞ」
リーダーらしき男が言った。
10歳の子供が人生に疲れることはないと思います。
「僕には必要ないです。では、失礼してもいいでしょうか」
ゆっくり、できるだけ大きな声で言ったはず。
もう見逃してください。
「うるせぇ!このクソガキが。調子も乗ってんじゃねぇよ」
男はそう言うと、殴りかかってきた。
影の何倍も遅いスピード。ああ、惨めだ。
僕は何もすることなく立ち尽くした。
次の瞬間、殴られていたのは男のほうだった。
いや、周りにいた奴らまで倒れている。
「さぁて、ヒーローの登場だぜ」




