第三話
第三章
こんにちわ、私の名前は弥生 飛鳥よ。珍しい名前でしょ?この名前の所為で随分と愚かな男子共にからかわれ、不細工女共の虐めのネタになったわ。忌々しい記憶ね。享年13歳、信じられる?これからって時に死ぬなんて…恋もオシャレも何もまだまだしてないのに…!だからこの会に興味をもったの。私は生きているときは多分リア充って呼ばれる人種だったんだと思う。告白はけっこうされたし、オシャレしててしてクラスの中心だったから。まあ、愚痴ってもしようがないけど、なんでじいは自己紹介をしながら観察しろっていったのかしら?なんでも神様が見るとかなんとか…まあいいや取り敢えずLet's go!
☆
「好きです付き合ってください!千秋さん!」
「死ね」
「一目ぼれしました!つきあってください!」
「くだばれ」
「愛しています!結婚してください!」
―ドガッ
うわぁ、なにこれ…すっごいモテモテね。ていうかこいつ男なんでしょう?なんで男にモテてんのよ。
「おはよう、千秋」
ん?この凶悪な男に声をかける勇者はだれかと振り返ったら…
きゃあああああ、イケメンだああああ、人類の宝よ!財宝よ!
「なんだ、正政か」
正政…正政様ね!かっこいい♡♡
「相変わらずのモテッぷりだね」
苦笑する正政様ステキィィィッ!
「すきです!真代さん!付き合ってください!」
死ねブス。正政様に告白すると かどんだけ身の丈知らずだし
ブスのくせに。ファンクラブとかないの!?全員でいじめ倒してしまえ。
「ごめんね。君とは初対面だし、好きでもない女の子と付き合えないよ」
そーだそーだそのとーり
「やっぱり千秋さんと付き合ってるんですか!?」
―シ―ン
あ、やばいわ。千秋キレたわ。クラスがシーンと静まっている。
「ふざけんなブス、さっきから黙ってきいてりゃくっさい息はきやがって同じ部屋にいるのだって苦痛になってくるんだよ。この虫けら中のゴミくず。オラウータンにでも発情してろこのメスブタ。ハエと共に寝食をしようの会にでも入っとけ」
「ひ、ひどい…」
「知るか、さっさと消えろブサイク女」
「っ…」
とぼとぼと教室からでていく女生徒を見ながら、私は思った。
え、ちょっ、この千秋に好かれるって美咲って人最強じゃね?
と。
☆ ☆ ☆
―キ―ンコ―ンカ―ンコ―ン
やっと美咲とやらに見えるわ。授業終了の鐘を開きながら私は首をぐるぐると回した。うん、私まだ13だもんね!だから授業まったく理解できなくずっといねむりしてても大丈夫!のはず。
「じゃあな正政」
え!?
「うん、それにしてもずいぶんと入れ込んでいるんだね」
「べつにそんなことねーし」
「へ~」
「もう行くからな!」
そう行って千秋は教室から出ていく…
って、ちょっとおおおお!!なんで正政様と別々なのよおおお!!
くっそおおお!困ったわ!愛を取るか任務を取るか…
迷ったのは一瞬だけだった。
そのまま千秋のあとから教室を出ようとする正政様にはりつく。
当たり前よ!この弥生飛鳥彼氏いない歴13年!やっとめぐり会った運命の相手逃がさないわよ!任務?なにそれおいしいの。
―くすくす
うん?正政様の背中で幸せを感じていたら正政様の一人笑い。でもなぜかぞっとする。
「きみさ、千秋の所に行った方がいいよ?僕、まとわりつかれるのは嫌いだな。」
え?周りはだれもいないし、この言葉私に…?
でも私は見えないはずなのに?そうよね、うん、ありえない。
「ねえ、聞こえないの?はやく行ったら?」
そう言って正政様は私に顔を向けて、目を―合わせた
「ひっ」
こわい。好きな人に認識されてうれしい?そんな脳みそお花畑じゃないわよ!
「ねえ?」
「ご、ごめんなさいっ!」
逃げた。うん、逃げなきゃおかしいわ。こわかった…
「じゃそういうことだから~」
『は~い』
あれ?建物や人間全員すりぬけて逃げていた内に、いつの間にか灰色のドアの前にいた。ドアには『演劇部』というプレートが、さすが私ね、強運すぎてこわいわ。
っておい!私がきた直後にぞろぞろと出てこないでよ!
「今日はこれで終わりよ~」
終わらないでよ!
☆ ☆ ☆
その後千秋に張りつき家へ。よかった、正政と一緒の登下校じゃなくて、様?つけるかボケ。
それからはずっと千秋の家ですごした。学校に行くと正政がいるもん…
え?これじゃあ観察できないって?フッ、この私がそのことを考えないとでも?
この週末一泊二日の演劇部の合宿があるのよ。というかそれは名義上で実際は遊びに行くそうだけど、それが熱海!熱海といえば温泉!温泉といえばあ~れ~とかよいではないかよいではないかとか!!つまり恋が発展するに違いないの!!さらに!千秋と美咲は知らないみたいだけど、千秋のかわいそうな恋をみた部員たちの計らいで、旅館に泊まるとき、あの2人の部屋は一緒つまり合室!!これでなにも起こらなかったら千秋!あんたはゴミムシかウジムシよ!
そんなことを千秋とうりふたつの顔をした千秋母が鼻歌を歌いながら大量の荷物をリュックにつめようとし、千秋に止められてるのを見ながら考えていた。
☆ ☆ ☆
ついに待ちに待った土曜日に!
バスにゆすられ30分
電車にゆぶられ2時間半
私は浮いていたからへいきだったけど千秋はつらそう…
とりあえずLet's go to hotel!
歩いて30分
迷って40分
疲れて50分
旅館についたのは本来10分の道を60分で歩いたあと。
…うん、なんかもう虚しいね
まあ、なんやかんやで旅館について、その後30分は休み。気がついたらもう11時過ぎていたので、大慌てで観光に勤しんだ。
おい、さすがに観光って…おい。
途中千秋は美咲を二人きりにしていい雰囲気にしよう作略を部員共は実行したがどうみても二人は姉と妹にしか見えずナンパしてきた男は指では数えきれない。その度に千秋が不機嫌になりどんどん暴言がひどくなり最後ぐらいのナンパ男をママ―と泣かせていた。一度だけ、調子こいでんじゃねぇこの尼共!!とかいうバカ男が千秋になぐりかかり見事返り討ちにされていた。千秋は空手の黒段だ。…まあ幼いころから色々な意味で襲われてきていたんだろうな。警察沙汰にもなりかけたが。奴は役者だったわ。うるうると目を潤ませ上目使いでこう言ったのだ。
「あ、あたしこわくて、お姉ちゃんを守りたかったの」
奴はそんな可愛い声も出せたのだ。正直あれは女の私でもクラッとくるわ。つまりその結果デレデレとなった警察や周りの人々ににらまれたチンピラはぶるぶると怯え上がり。その後アドレスや電話番号をせがまれた千秋はさらに不機嫌となったのだ。哀れ千秋。なにを着ても男装としか思われず女装したらさらにナンパ数が増えるだけ。美咲もしや女友達気分…?もし将来付き合ってもデートしても普通ならあら彼氏さんと言われる場面はあら妹さんといわれてしまう千秋。うわぁ哀れすぎる。
まあ、色々あって千秋にとっては不愉快となった一日。でも!まだまだ夜は長いのよ!温泉と言えば混浴!ハプニング!しかも同室!楽しみだわ!
★
さすがに不機嫌オーラMAXの千秋に声をかける勇者はおらず、なだめなだめで旅館についた演劇部一行。フロントで各室の鍵をもらいそれぞれ荷物を置きに行く一行。そこで、あの美咲の絵美とかいう友達が真顔で言った。
「千秋、あんた美咲と一室だから、がんばれよ。でもなんかしたら殺す」
ちょっと発言が矛盾してるけど。これは千秋にとってもの大チャンス!
って千秋、フリーズ
時計の秒針が2周半した頃。機能を停止していた千秋がピクリと動いた。
「…え…」
きょときょとと鍵とそばで絵美とおしゃべりしている美咲を交互に見比べる。かわいいけど男としての尊厳なくしてるわよ。フロントにいたほかの男性客がぽっーと見愡れてるよ。
「あ、じゃあ私いくから、じゃ」
「え!?私絵美ちゃんとなんじゃ…?」
「違う違う。あとはそいつに聞いて」
美咲との話しをさっさと切り上げ自分のへやへと向かう絵美。
いいのかよ。
うろたえる美咲。しばらくあわあわとしてやがて気を決したように今度はじ―っと鍵を見始めた千秋に話しかける。
「え―と、千秋くん?」
「… …」
「あの―?」
「…だって…」
「え?」
「一緒の部屋…だって…」
かすれた声で怯えたように美咲を見る千秋
「え!?」
「……」
「え、ええ~~!?だって私はまだ女の子で17才千秋くんはもう男の子で16才で同室、同室、同じ部屋!?」
よくわからんこと言い始めた美咲。混乱中
「やっぱり…いやですか?」
今度は何を考えてるんだか、静かな目で千秋が美咲に問いかける。
「へ?ち、違うって、私はいいけど、千秋くん 私のこと嫌いでしょ?だから」
「は!?俺は先輩がいやだって…いや、俺ぜんぜんOK。むしろどんとこい」
いいのかよ!?
「ええ!あわあわ私はいいよ!ぜんぜんいい!うん」
「……」
「あわわわわ」
激しくうろたえ真っ赤になる美咲とこれまた真っ赤になって黙り込む千秋。
お前らなんなんだ。
思わずつっこみたくなった私を誰が責められようか。
「…とりあえず、部屋に行きましょう」
「う、うん!」
依然として赤い顔をした美咲と。若干顔の赤みが引いた千秋。さすが。
純和風の中にあるエレベータに乗り、3階の部屋に向かう二人。
☆
うむ、うむ着いた和室はなかなかにしゃれていた。適度に広く、小さいテレビが一台、窓からは外の景色が見えた。でももう少し小さくてもいいな。おふとんがくっつくぐらいに…むふふ
「ってもう六時!?速くしなきゃ!」
「は~い」
いかんいかん、妄想している内にいつものねけてる美咲とバカにしている千秋に戻ってしまった。顔色もいつも通り。ちっ
そして食堂。
ニヤニヤしながら二人を見る部員を千秋は邪眼で退治して、言った。
「腹へった」
絵美以外の部員はこの絶対零度の言葉にガタガタブルブルふるえ、いただきますとかろうじて聞こえる声で言った。
伊勢海老なんか食べたいよ…
刺身なんかほしいょ…
フグなんていいな…
なべなんて、なべなんて…大女子きだぁ――!!
くっそ―!やっぱり幽霊になっても食べたいもんは食べたいのよ!
ふわふわと自由なのはいいけど、どうして私はなべが食えないのよ!
こればかりは生きている人間が恨めしい!!
これ以上は見てられなくて、私は千秋たちの和室に戻った。
☆ ☆
戻ってこないなぁ…
千秋たちの和室に戻って約1時間もう8時だ。
いくらなんでも遅…はっ、まさか二人で…
こうしちゃいらんないわっ。
しゅっと浮き上がり壁をすりぬけ外へ。千秋レーダー!!
はっこっちに千秋の気配が!
…って美咲いねーし。なんかキモイやつもいるし
「はぁはぁ、ついに、夢の女風呂を…」
「やったな!兄貴!」
「おう!!」
肩車の二人組で、上の小っこいのが兄貴だ。…君達、千秋がいるってことは美咲が入ってるいることで、それをのぞこうとするのを後ろにいる大魔王は許すと思う?
「おい」
不機嫌度MAXの声、ご愁傷様。
「あん?」
千秋の絶対零度の声に比べたらかわいいうさぎちゃんのような脅し。ばかだなぁ。
「あ、兄貴!女の子ですぜ!」
「おお?こりゃ上玉じゃねぇか、お姉ちゃん、かわいいな」
「死ね」
「かわいい顔して気が強いのな!そんな女を泣かせるのもいいな」
「……」
「なぁ、俺達といいことしねえか」
そういいながら肩車からちょっと無様に降りた「兄貴」は千秋の腕をつかむ。否、つかもうとした。
―ドガッ
―バキッ
―ドスドス
もはや毒口をあびせかけることもせず、実力行使に出た千秋。あいつら本当にばかだなぁ。
―フン。
ゴミクズを見るような目で男たちを見下す千秋。うらやま…あれ!?私Mじゃないよね!?決して男がうらやましいなとか思ってないから!本当!本当!
そう、そういえば千秋と美咲一緒じゃなかったんだ!ちっ、千秋のへタレ。
っていうか千秋温泉入らないのか。まだ普段着だけど。
―ズルズル
気絶した男を引きずり植込みにぶっさし、そのまま踵を返し宿へと向かう千秋。中に入ってしばらくくねくね進み女湯男湯と暖簾があるつきあたりに着く。
あ、風呂か。私べつに痴女じゃないからいちいち覗かないけど。
「あ、お客様、そちらは男湯でございます。」
男湯の暖簾をくぐろうとする千秋に声をかけるフロントのお姉さん。
「俺男」
千秋もめんどうくなったみたいで、振り返りもしない。
「あ、やっべ。そういやかわいい男の子がいるって先輩がいってた。」
お姉さん、イメージ壊さないで。
それにしても混浴がないなんて、計算外だわ。二人で入ってきゃーきゃさせるつもりだったのに。…まあ千秋は間違って女湯入っても貧乳女子で済むかもしれないけど、それ言っちゃおしまいよね。
さすがに男風呂に平気でいけるほど私は枯れてないから、女風呂に行ってみよう。
と、見たのがすごい。美咲スタイル抜群すぎ…私だって別に貧乳じゃないもんねっ。肉体が13歳なんだからしようがないし、うんうん。
そして温泉から出た美咲は浴衣を着た。
エ.ロ.イ
もう具体的に言うと私の女としての欠片のプライドが粉々になるから言わないけど、これで欲…えっと興ふ…いや、つまり落ちない男はない!
そして部屋に戻った訳だけど、千秋はもう帰ってた。カラスか。
「ああ、先ぱ…」
美咲を見て目を見開き固まる千秋。うんうん、わかるよ、その気持ち。
「どうしたの?」
本当に鈍感だよねぇ。
「い、いや、なん、でもないです…」
ぶんっと首をテレビに向ける千秋、ふっ
「じゃあふとん敷こ!ふとん!」
「ふふふふふとん!?」
「うん?」
「ああ、ああ、そうでしたっけ…」
「やろうやろう!」
「…はい」
そしてなぜかテンションが高い美咲は鼻歌を歌いながら、何かを悟っちゃった千秋は黙々とふとんを敷く。
で、肝心の位置だが、二人ともそれぞれ端っこに敷いているため、間は約一メートル。微妙な数字だな。
時計を見ると10時を切っていた。
「そろそろ寝る?」
「いえ…」
ウーム、一緒の部屋だから仲はいままでよりも縮まってるんだろうけど。なんかいま一つなのよね。もっとスリルとか…
―ザ―ザ―
あ、雨だ
「あ、雨だ」
「そうですね」
ここはテンプレの…
―ゴロゴロ
雷きた―――!!あるかあるか!?
―ピッシャ―!!
「きゃあああああ!!」
「うおっ!?」
キタ―!!トラウマ前科前例なんでもいいから雷嫌いキタヨ―!!
「か、雷恐い…」
「せ、先輩近い…」
近いだろ近いだろよっしゃあ!!これで2人の仲は一気に接近だ!!
「ううっ」
「先輩…」
―カッシャーン!!
「きゃあ!!」
「う…」
千秋よつらかろう。なにかつらいって?ふっ、理性と本能のせめぎ合いだ。
「ぐすっ…」
ついには泣いてしまった美咲。
「先輩、大丈夫ですか?」
「うえ…」
「……」
―なでなで
無言で己にほぼ抱きついている状態の美咲の頭をなでる千秋
―なでなでなでなで
―ビッチャ―ン!!
―ビクッ
―なでなでなでなで
―カッシャ―ン!!
―ヒクッ
―なでなでなでなで
そうして小一時間も続けていたら、いつの間にか雨はやんでいた。
「あの、先…」
―ス―
美咲は寝ていた。
ってふざけんなあああ!!!これからがいいとこなんだろーが!!
くっそおおおお!!千秋もなにおだやかな微笑みで美咲の頭をなでてるのさ!
「っと…」
寝ている美咲を自分の布団に入れ、自分はもう一つの方にうつった千秋。
そして
「おやすみ…」
と、それはそれは愛しそうに、大切そうに、小さく笑った。
☆
翌日、
「ごめんね、ごめんね、ごめんね!」
「いいですよもう。先輩のバカはいつものことですし」
「ぐはっ」
「ま、雷が恐い時点でもうガキですけどね」
「うう…」
とこのように完全に元通りの二人。くっそお。きのういいとこまでいったのにぃ。でも、千秋のあの愛しい物を見るような。そんな目をみて、なにも言えなくなってしまった。まあ言っても同じだけど。
「は―い、忘れ物はないわね―?」
『は~い』
チェックアウトして、午前中に観光した。勇者は何人もいたけどやっぱり撃沈。
お土産を買ってバス電車歩きで、高校に戻って自由解散したのが3時だった。
「じゃあまた明日~」
「お―」
「は~い」
「ほい」
結局この旅行モドキでなにが進んだのかな。
「あ、千秋くん」
「はい?」
美咲と千秋に動きありです隊長!
「昨日はありがとう!なでてくれて、すっごくうれしかったし、恐さなんか感じなかった!ありがとうね!千秋くんもやっぱり頼もしい男の子なんだって改めてわかってよかった!」
「え、ええ?いえ、そんなことは」
「すっごい安心できた。だからありがとうね。じゃあそれだけっ!」
「あっ……」
き、聞きましたっっ!?美咲が…!頼もしい!男の子だって!!立派な進歩だよ!お赤飯たかなきゃ!
☆
女友達卒業おめでとう。千秋。




