第四話
第四章
あ、あのっ!ぼ、僕の名前は時田竜二です。あ!えっと、25歳です。あ、あとは、ぼくなんて、ブサイクで暗くておくびょうでバカでアホで女の子にキモイって言われるだろうし、運動神経悪いし、視力も悪いし、いつもメガネかけてる根暗だし…
ダ、ダメ過ぎるぼくですが、い、いんでしょうか。もともとぼくはこの会に入りたかった訳じゃなくて、入らされたというか…ぼくは、幽霊になってすこしだけ力のようなものがあって…すみませんんっ!!ぼくみたいなクズがもっても宝の持ち腐れですよね。
本当にすみません。と、とりあえず、力を持ってるって知られて…、会員の皆様に
『入らなかったら、どうなるかわかって(おるかのう)(いらっしゃる)る?」
と、おど…言われまして。厚ましく、この会の会員メンバー4番になりました。
だから、今回の義務、ちゃんとはたしたいです。それに若者の恋もちょっとおもしろそうというか。ぼくなんて女子にとってはミジンコ以下の存在だったから体験したことがなく…すみません。ぼくなんてもう、生まれてこなきゃよかった、みたいな?死んでよかった、みたいな。だからせめてゴミとして任務を頑張ります…
☆
『千秋ちゃん!こっちむいて~」
「死ね」
ごめんなさい!もう死んでます!!
「ああ、千秋、また囲まれているのか?」
すっごくきれいな人です。ぼくなんて足の垢にも及びません…。この人が正政さんでしょうか。
「ああ」
あ、お二人が校舎に入って行きますので、ぼくも厚ましく、付いていきます。
「千秋」
「ん?」
「お前、美咲さんが好きだろ?」
「…ああ」
ひぃぃっすごいです!ぼくだったら照れもなくこんなこと言えません。
「それがね。困ったことになったんだ」
「なんで?」
「うん、僕も美咲さんが好きになっちゃったんだ」
「はああ!?」
「困ったね―」
どどどどうしましょう。これは伝説の三角関係では…
「お前!」
「だから困っちゃった。親友と恋、どっちをとろう?」
「俺を取れよ!」
「でもこれ初恋?手離したくないな」
ど、どうしましょう…
「手離せ!」
「ひどいな―と、言う訳で勝負ね」
「はあ!?」
「つまり、どっちが美咲ちゃんの心を射止めるか、勝負」
「てめぇ、ふざけんじゃねぇぞ!!」
「ふざけて…もう教室だね」
「ちっ」
―ガラガラ
ど、どうしましょう。なんだかすごいことに…。教室に入りたいのですが、弥生さんの話だと、正政さんは僕たちを感じることができるとか…ああ、どうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう……
☆
―キ―ンコ―ンカ―ンコ―ン
あれ?ぼくが混乱しているうちに授業は終わってしまっていたようで、生徒さんたちが帰り支度をして教室から出て…あれあれ、ぼくそんなに迷いましたっけ?
「ついてくんな!しっしっ」
「冷たいな―。ぼくは美咲に会いたいだけだよ」
「なに呼び捨てにしてんだよっ」
「千秋なんですっと先輩だもんねー」
「るせーぞ」
ああ、どうしよう、険悪ムードだ…
「ち、千秋さん!」
「今の俺は機嫌が悪い。よるなさわるな気色悪い」
「す、すみません」
す、すごいですね。
と、こんな感じで演劇部までにバツタバッタと千秋さんは男女問わず倒れていきました。あこがれます…。ああ!ぼくなんていう存在価値がマイナスのゴキブリみたいなやつに好かれても迷惑でしょうか。そうですよね。ぼくなんて……
―ガチャ
開いたドア。開けたのは千秋さんではなく、外に出たとてもきれいな人だった。
―ドキン
あ、あれ?このときめき、ぼくの!?あれ?心臓が早鐘のように打っている。ぼくが病気になる訳ないし…。あ、あれ、もしかしての恋!?ああ、ぼくはなんてこと…。ぼくなんかを見てくれる訳ないし。そもそもぼくは幽霊だし、ウジムシだし、バカでアホで…
「ゲッ、部長」
「あ、姉さん」
ええ?この方は正政さんの姉上だそうで…。そういえばどことなく似ているような。肩までの髪すこしたれ目で、聖女様のようにやさしげで、そのほほえみがぼくに向けられたら、ねんでありえないことを考えそうで…。神々しいオーラも見えそうです。
「あら?千秋くんに正政、どうしたの?」
ああ、声までステキです。鈴のように澄んだ声、やさしい眼差し…。それらを受け取れるなんて、身勝手ですが今ばかりは生きている方がうらめしいです。
「ぶ、部長…戻ってきたんですか」
「ええ、今日はひまがとれたのよ」
「そうなんだ。でも、今日僕が用があるのは美咲さんで」
「あら、そう?じゃあどうぞどうぞ」
「ぶ、部長!?」
「なにか文句でも?千秋くん?」
「く…いいえ」
「うふふ、じゃあ入りましょう?」
「…はい」
―パタン
ドアが閉まった声はぼくの耳にはやけに大きく響いて、この恋はかなり訳がない。そう改めてわかりました。
ああ…入らないと。
ドアをすりぬけて見ると、そこは
修羅場
でした
「美咲さん好きです愛してます!」
「まあ、美咲さんが私の妹?うれしいわぁ」
「えええ!?私!?」
「ダメよ!私の会の存在価値がなくなっちゃうでしょ!?」
「そっちかよ!でいうか会.てなんだよ!?」
「つき合ってください!」
「あ、じゃあ俺も~」
「ふさけんなくそ虫共!全員消え失せろおお!!」
「あわわ、千秋くんおちついて―」
「そうだよ?僕と美咲さんがどうなろうと千秋には、関係ない、でしょ?」
「そんな訳あるかああ!!美咲!なんとか言ったらどうなの!?」
「ええ!?私!?」
「あんたに決まってるでしょ!」
「美咲さんが妹なら毎日楽しそうね…」
「部長!目を覚ましてぇぇ!!」
「先輩!アホ面してないでなんとか言って下さい!」
「アホ面!?」
「千秋、女の子にそんなこといっちゃダメだよ?」
「その余裕顔やめろ正政!」
「そうよどうしてあんたが出てくんの!?『美咲を取り合う三角関係!千秋と正政』なんて長い名前の会長やりたくないわ!」
「そんなもんつくんなブス!」
「ブスとはなによ!」
「ええっと、なんで私は取り合うの?っていうかなんで千秋くんも?」
「この鈍ちんが!」
「ええ!?」
「気にしない方がいいですよ、美咲さん」
「正政くん…なんで私?」
「好きになってしまったんですよ」
「美咲さん、弟をよろしくね」
「ええ!?」
「部長!目を覚まして―」
「やめろ正政!」
「あなたが好きです。愛しているんです」
「ま、正政くん…」
「やめろぉぉ!!」
「やめなさいいい!!」
「で、でも私、正政くんをただの友達だと思ってて…」
「今すぐでなくともいいんです。僕を一人の男として見てくれませんか?」
「正政くん…」
「か、会長!千秋さんがピンチです!」
「ええ!わかっているわ、千秋くん!」
「はあ?なんですかっ!?」
「あんた男でしょ!?」
「千秋く―ん、結婚式にはくるのよ~?」
「部長飛ばしすぎ!ていうかシリアス場面で入ってこないで下さい!」
「行くかそんなもん!」
「え~?困ったわ~」
「全く困ってないでしょう!?」
「あら~?正政は~?」
「あ、えっと、今日は帰るって」
「先輩なんていったんですか!?」
「ひぇっえっと友達からね、とか?」
「友達になったあとどうすんのよ!?」
「バカッ」
「アホッ」
「ええ!千秋くんも絵美ちゃんもひどい!」
「だめよ?私の妹をいじめちゃ」
「過去も現在も未来も絶対に妹にならないわよ!」
「当たり前です!」
(訳、俺がもうらから当たり前だ)
「あら?そうかしらね、ふふ」
―ガチャ
「え、それはどういう…」
―ガチャ
「あ、早退で…」
「わ、私も…」
「俺も…」
「僕も…」
―ガチャ
そうして、部屋には千秋さん一人が残りました。絵美さんはなぞめいた言葉を残された聖女様を追いかけ、その他の部員は逃げました。正直幽霊のぼくでも逃げ出したいです。
「ふ…ふふ…」
先程からものすごい気迫を発されていた千秋さんが突如不気味な笑い声を出しました。あのう…ぼく、逃げていいですか。ダメですよね…はははぼくゴミだし
「上等だ…やってやんよ!」
ひぃぃぃぃッ。恐いです恐いです鬼は外です。目が異常にギラギラし始めた千秋さんにぼくはガタガタとふるえることしかできなかった。
☆
一日目、正政さんが愛妻弁当というものを持ち昼休みに美咲さんの教室まで押しかけたので千秋さんがそれを奪ってすべて食い、自分の弁当を美咲さんに押し付けていました。
二日目、なぜかやたらと協力的となった絵美さんは3人でカラオケにいき、こっそり一人ぬけようとした所に千秋さんがきて、女の子で100点満点をたたき出し、他の三人はカラオケボックスを壊そうとする千秋さんを止めようと、必死でした。
三日目、昨日と同じパターンで、でも今度は千秋さんの邪魔なく、三人からぬけだし、人気遊園地のデートにすることに成功した絵美さん。二人きりにさせるものかとかけよろうとする千秋さんですが。ナンパ男に何度からまれ、暴言暴力をふっては泣かせていました。そしてなにかひらめいたようで、その後のナンパ男になにか交渉している模様
その後のナンパ男の行方を追うと、正政美咲ペアにからんでは粉砕している。二人のデートはたびたびの邪魔でまったく続行ならず。その頃の千秋さんといえば、もっとナンパ男をひきつけるかのように、不安げにおどおどして、可憐な女の子を演出していた。
四日目、今度は海にきた絵美さんを含めた3人。正政さんはまたしてものたびたびの妨害をバッタバッタを倒し、一方のまたしてもこそこそとついてきた千秋さんは男子ロッカーに入ろうとしては注意され、入ったら入ったで着がえていた男子たちから注目され暴言を吐き、泣かせるというワンパターンを繰り返し、ビーチに行ったら寒いからパーカーを着ているし秋さんは女の子に間違われた。ナンパ、暴言、というまたしてものワンパターンを繰り返した。正政さんと美咲さんのデートモドキは、絵美さんがクラゲに刺されたため中止。
そして五日目に、あの事件は起きたのです。
朝会のときでした。
―ガヤガヤ
―ガヤガヤ
―キ――――――ン
「静かにしてください」
ああ!この声はぼくの女神様…すみませんすみません。ぼくのようなうじ虫に神扱いされてもうれしくないですよね…
「では、朝会を始めます」
―シ―ン
「礼!」
生徒さんたちはだまって礼をしています。とてもきれいな礼ですね。軍を思い出します。
ぼく、こんなうじですけど、軍医だったんです。流れ弾に当たって死んだんですよね。ぼくらしい雑魚っぽい死に方ですよね…
「次は、1年D組代表、神崎千秋さん」
ああ、昔にひたっていたらなんでしょう。千秋さんが呼ばれています。
「はい」
―タンタンタン
階段を上る千秋さん
「1年D組は……金賞です。」
「はい」
―パチパチパチパチパチ
―パチパチパチパチパチ
鳴り響く拍手。そんな中、あの人は言いました。
「神崎さん、何かコメントを」
「え?」
「真代さん、そんなものは…」
「コメントを」
先生の言葉を遮ってまでコメントをほしがるあの人を見て、ぼくは首をかしげました。
「はぁ…、えっと、この度は」
そんな時、コメントを述べようとした千秋さんが固まりました。一点を見つめて。
目線を辿ると…そこには楽しそうに話す一組の男女。もちろん、正政さんと美咲さんです。
「神崎くん?」
先生の不審そうな声にも千秋さんは反応しない
「っ…!」
このピクリとした反応もやはり原因は美咲さんで。ぱっと肩をはらう動作をする正政さんとそれに笑顔を見せる美咲さん。
「どうした?」
先生のあせった声。生徒さん達もやはり不審そうに千秋さんを見る。ただ、正政さんと絵美さん、あの人を除いて。それを見て、恥ずかしいことにぼくはやっと気づいた。つまり、すべて作略だったのだ。すべて、ぼくはカビのように存在価値がマイナスではあるけど。すこしだけ0に近づけるチャンスが来たかもしれない。
ぼくのゴミかスのような能力―-意識操作
聞こえだけはいいが、もともとしたかったことをさらにしたくなるというカビカス。
たとえば、告白の決心がつかなかったにつかうと、告白を決心できる、とか。
ぼくは、この能力を千秋さんにつかいました。つまり、
「あ―も―もんどうくせえ。いいか、正政、美咲は俺んだ。手出してんじゃねぇ。美咲先輩、鈍いんで今言っときます。俺はあなたが好きです。男として、だから、つき合ってください。」
ああ、やっぱり千秋さんはぼくのあこがれです
☆
やっちゃいました…よかったのでしょうか。




