プロローグ2-1
【石川結菜(岩沼中・トロンボーンパート)】
私が岩沼中の吹奏楽部に入ったのは、部活見学のときに見た“音”の迫力に惹かれたからだった。……なんて言うと、きっとみんな「立派な理由だね」って言ってくれる。でも、ほんとのところは、あのとき先輩たちが楽しそうに笑って吹いてた姿が、ただ、まぶしかっただけ。
でも、その先輩たちは、もういない。今の三年生は十一人。だけど、そのうち三人は、練習には来るが、サボってばっか。残った八人も、正直なところ、ずっと温度差があった。部長の先輩が頑張っても、空回りするばかりで、気がつけばやる気のある三年数名と二年生約三十人、いや、他のサボりの人を除くと二年生も二十人ほどで部を回してた。
……一年生の時は、まだ楽しかった。先輩たちの背中を見て、下手なりにがむしゃらに食らいついてた。でも、今年に入ってから、空気が少しずつ変わった。練習が進まない日が続いて、誰かが泣いて、また次の日も同じだった。
県北大会まであと二週間になった時――ついにあの三年の三人がまともに音を出し始めた。その姿は、どこか懺悔みたいで、でも本気で、見ていて涙と苛立ちが止まらなかった。
県北はギリギリみたいな感じでどうにか県大会へいけたが、実際目標に掲げている「東関東大会出場」なんて無理、いやそもそも金賞取れるわけないって言う感じだ。
何度も辞めようかと思った。けど、結局やめられなかったのは、結局はこの部活が好きだったからだ。




