プロローグ1-2
――変わるってことは、怖い。でも……信じてた人が、信じられなくなるほうが、もっと怖い。
俺はクラリネットパートの二年生だ。水戸のど真ん中にある、地域でもそれなりに名の知れた杉崎中学校の吹奏楽部に入っている。この学校の吹奏楽部は、過去に何度も東関東大会に進んだことがある。強豪ってわけじゃないけど、地道に結果を出し続けてきた部だった。
特徴は、顧問と生徒の距離が近いこと。合奏後は、雑談もするし、時にはラーメンの話で三十分くらい盛り上がる。部活っていうより、家族みたいな雰囲気だった。でも――その「近さ」が、仇になった。
事件があったのは、県央と県大会のそれぞれ七日前。きっかけは、ちょっとしたすれ違いだった。
県央の時はまだマシだった。部長が、「テンポを速くしたほうがいい」と言った。でも、副部長は「今のままがいい」と譲らなかった。そのやりとりを見た顧問が、「両方試してみよう」と言った瞬間。部長が涙ぐんだ。「先生、また副部長の味方するんですね」って。
その一言で、空気が一気に変わった。しかし、それだけだったからまだ良かった。
県大会七日前はもっと酷かった。過去の不満が、あっという間にあふれ出した。
一年の時の合宿のこと。朝練の負担。後輩への当たり方。誰が悪いわけじゃなかった。でも、気づかないふりをしていた“ずれ”が、音を立てて崩れた。
そんなとき、「もう、前を向こう」って。誰かが言った。その時から、また頑張る気持ちがみんなに芽生えた。
俺は……今も、少し怖い。またあの空気に戻ってしまうんじゃないかって。でも、それでも音を鳴らす。このクラリネットの音で、仲間を支えたい。
――本番前の舞台袖。俺たちは、数日で立ち直って最終的にここまできた。その証を、これから響かせるんだ!




