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1.悪役令嬢の取り巻き始めました


 わたしは、クラリッサ・アルドン。16歳。


 最早、聞き飽きてるかもしれないけど、

 前世日本人の転生者です。


 これから、わたしが住んでいる王国の"魔導学院"という学校に入学するところ。


 せっかく、入学できると言うのに。


 わたし、そこに行きたくないんです。



 ==================

 


 わたしが転生した世界。


 何だか、怪しいのだ。


 何が怪しいって、

 何かの"物語"の世界なんじゃないかと。

 しかも"乙女っぽい何か"の物語。


 魔法がある。

 魔導学院がある。

 何故か周りの皆の顔面偏差値が高い。


 しかし、わたしには覚えがなかった。


 前世では、あんなにゲームやマンガ、ラノベなどのエンターテイメントに触れてきたのに、だ。


 この世界での自分が、"ざまぁ"とか"断罪"やらで、追放やら、考えたくないけど、殺されてしまったら……怖すぎる。

 


 前世の自分は、目立たないように生きていた。


 だってね。

 やれ友達が、やれ彼氏が、やれ不倫がどーの。存在が目立つ人たちはいつも忙しそうだったから。

 わたしは、そんな暇があるなら2次元に時間を費やしていたかった。


 そうやって生きていたのに。

 運がなかったのか、就職した会社が何やら事業悪化したのどーので、あっという間にブラック化。


 多分、過労が原因だったのだろう。あ、これはヤバい、と思った記憶が最後。

 自分が死んだ瞬間は覚えていない。

 痛いやら苦しいやらの思い出が最後じゃなくて良かったけど。

 


 そんなわたしが、前世を思い出したのが、今から4年前。12歳の時。


 自宅の階段から落ちて、そのショックで思い出した。

 

 ただ、それまでのわたしを上書きしてしまう……という感じではなく、前世で生きてきた記憶があると、すうっと思い出したという感じだった。


 そこからは、周囲を気にしつつも。


 せっかく生まれ変わったのだから、今度こそ人生楽しまなきゃ!と、家族や周囲の人たちと魔法や、魔道具というもの、それに食べ物などを色々と一緒に作って、喜怒哀楽ありつつ過ごしてきた。

 



 そして、冒頭に戻るんだけど。

 


 今から────

 魔導学院、入学式です!

 



===============

 

 

 

 ───入学式はびっくりした。

 

 新入生代表の挨拶で、何と王子様か登壇した。


 それに驚いて、周りをひっそり、不審じゃない程度に見渡すと、悪役令嬢っぽいボンキュボン!の、ものすごい美人はいるし、イケメンが何人も王子様の近くに座ってるし。


 ──これ、わたしが知らないだけで、やっぱり乙女系の物語でしょう!?

 


 入学前、やはり目立たない努力は必要でしょうと、変装とまではいかないけど容姿は隠す事にしてきて、本当に良かった。



 髪はキッチリミッチリ結い上げ、前髪は眉毛が完全に隠れる程までにし。あまりに伸ばして隠し過ぎると、興味持つ人が出てくるから、絶妙な長さに抑える。


 顔は、大きめの真ん丸な認識阻害の魔道具であるメガネをかけた。あんまりにもやり過ぎなメガネは、これまた興味持たれるだろうから、ほんの少し大きめなだけ。


 制服は、ノーマルのまま。ひと手間かけてレースやらリボンやらビーズやらを足してる人もかなりいるけど、あえてそのまま。可愛い制服ゆえに、そのままの制服が気に入っている人もいるから、これで良いのだ。

 


 ──うんうん。

 これでわたし、目立ってないはず。



 そして入学式が終わり、その直後クラス分けが発表される。


 発表の後は、科目によっては建物が別になるので、周囲の人が分かれて歩いていく。


 わたしも自分のクラスを聞いたので、ゆっくり急がないで歩いて行く………のだけど。


 王子様たちやご令嬢たちの、一部分だけキラキラと光る集団は、わたしの前を歩いて行くではないか。


 ──わー、離れて!離れて歩かないと!


 あれは、目立ってる!

 目立ってるよ!


 こんな、いかにも【学園もの】みたいな状況、何が起こるか、わたしにはさっぱり分からない。


 わたしは、今世は長生きしたいのだ。


 出来れば故郷の領地で好きな事をやって生きていきたい。


 そのためには、どうしたら良いだろう。

 

 本当は、誰にも関わらずに過ごしたい。


 でも、よく考えてみると、この地味令嬢の姿で、おひとり様になってしまったら、それもまた危険な気がする。

 おひとり様って結構目立つし。

 

 

 ──何か、ないかな?いい方法。


 と、そこで、わたし閃いたよ!

 

 前を歩く悪役令嬢っぽい美人!

 さっきまで取り巻きが何人かいたと思うのに、クラスが違うのか1人まで減ってる!


 ──これだよ、取り巻き!!!


 元々取り巻きが何人かいて、それが今減っている。それに1人増えても、今ならあやふやになるんじゃ?前世で読みまくったラノベやらでも、取り巻きが目をつけられるのは、かなりの少数派だったハズだ。


 美人が目眩ましになるし。

 集団になるから、おひとり様にもならない。かつ、情報もたくさん入るだろう。


 ──よし、頃合いをみて話しかける!

 


 そうしてわたしは、すっごい美人の悪役令嬢っぽい人と知り合い、その取り巻きになる事に成功したのだった。


 


 ============


 


 あ、王子様一行だ。


 反対側の廊下から、キラキラ男子軍団。


 こちらは悪役令嬢っぽい人、わたし、他2名で取り巻き軍団。


 これは、ぶつかるな。

 いろんな意味で。


「あら……殿下、ご機嫌よう。

 少々宜しいかしら。あなたたち、マントを付けた大柄な複数の男性が横一列に幅をきかせて歩くなど、作法がなっておりませんわ。これでは通れませんから、もう少し端に寄って歩いて下さいませ」


「アンネリゼ様のおっしゃる通りですわ。我が学院の廊下は公共のもの。王家とその側近のものではございませんことよ」


「お身体が少し不自由な先生方もいらっしゃるのです。ご考慮されるのが当然では?」


「そうですわー皆様のおっしゃる通りですわー」


 ちなみに最後がわたしである。

 何が琴線に触れるか分からないから、とにかく右にならえで行くのだ!


 王子様の右隣にいた、とてもガタイが宜しいイケメンと、左隣にいた神経質そうな細メガネのイケメンが、悪役令嬢っぽいアンネリゼ様の前にグイッと出てきた。


「いち令嬢ごときが直接殿下へ苦言を申すなど!幾度も止めるよう申しているであろう!」


「殿下はこの国の太陽であり、いずれ至高の存在になる御方なのだぞ!生家の序列はなく平等を、と謳う魔導学院といえど、卒業してしまえば序列は元通りになり、結局は自ら頂く御方になるのだ!殿下が同時期に在学することこそ誉れ。周りの者共が自ら控えるのが当然であろう!それなのに、自重もせず何という不敬な事を言うのだ!」


 この国の太陽は、王様が一番偉いという事を指す。

 王は政治やらのトップでもあるけど、一番重要な事は、この国全体を覆う大結界を維持することだ。


 ちなみに王様だけでそんな大結界が維持できるはずもなく。

 各地域の領主が結界維持の補佐を担う。

 そう考えると、王様がいないとならないのはもちろんだけど、領主も必要不可欠なんだけどね。



 ──しかし、反論したいな。


 王子様に言ったのに、なんで子分が騒ぐのか。横に広がって歩いてたのは子分たちの方でしょ、とか。


 そもそも魔導学院の他に、貴族向けの王都学院もあるんどけどな。


 吠えてる2人、そっちに行けば良かったのに。

 

 魔導学院、略して"魔学"は狭き門で、魔力量・属性・魔力操作、それに基本学術と、全部が必須。試験もあって、合格しないと入れない。

 

 対して王都学院、略して"王学"は、魔力量が結界維持できる程度有り、貴族であれば試験もなく入れる。騎士になりたい人、文官を目指す人たちにとっては、優秀な専門の先生方も揃っていると聞くので、そちらに入った方が良いと教わった。

 

 魔学でも、いざ領主になっても困らない程度には教えてくれるけど、名前を冠するだけに魔導師や魔道具技師になれるようなカリキュラムが組まれている。



「止めよ、2人とも。アンネリゼは間違っていないだろう」


 つい周囲のやり取りを聞かないで、長考してしまっていると、落ち着いた低くて良く響く声が聞こえてきた。

 王子様だ。


「し、しかし殿下……」


「前々から言っているが、在学中は護衛や補佐はいらぬ。勝手についてくる必要は全くない。これ以上ここで揉めるのであれば、そなたら2人は王学の方へ強制的に移動させる」


「「……は!申し訳ございませんでした!」」


 筋肉男と神経質男は、揃って王子様に向かって敬礼しだした。


 こっちに完全に背を向けてるけど、どういうこと?これ。


「……令嬢たちにも、謝罪をしろ」


「……え?私達が、でしょうか?」


 ──うわー。

 女なんかに言い負けたくないとか思ってそう〜。 顔と態度に出過ぎ。


 あのね!同世代のアンネリゼ様を敵に回したら、在学被ってる女の子、ほとんど敵に回すのと一緒だぞ。将来お嫁さんになりたい人いなくなるぞ!


 そんな事を考えていた時だった。

 目の前から冷気が漂ってきたのは。


 ──え、これは、魔力?


「謝罪をしろ、と私が言ったのに聞けぬのか」


「ひ……っ」


 今まであまり上げないようにしていた顔を、上げて冷気の方を見てみた。


 王子様が氷の魔法をブリザードみたいに放ってるところだった。


 悲鳴を上げた男2人の前半分が真っ白になっていて、寒いのか2人ともブルブルと震えきっている。


 ──ひゃ〜!!

 

 こっちは少し冷気がくるだけなのに、あの2人だけに向けて、死なない程度の氷魔法繰りが出来るなんて!

 さすが王家の者なだけはある。



「殿下、謝罪はもう結構ですわ。これ以降同じ事を繰り返されなければ、わたくしは構いません……それに、お二人とも、本日はまともに声は発せられないでしょう」


 アンネリゼ様が呆れたように、そう言葉を発した。


 その言葉を聞いた王子様は、冷気を発するのをやめた。だけど2人は全身をガタガタ震えさせたままだった。


 ──わぁ、痛そう〜。

 くちびるが、薄っすら冷凍されかけみたいにみえる。口は空いてるから呼吸は問題なさそうだけど、吐く息が真っ白!

 そりゃ、話せないね!これは。

 


 王子様は、わたし達の様子をチラリと確認した後、苦笑いを浮かべた。


「……すまない、アンネリゼ。やりすぎたようだ」


「この2人は、前々から自分を売り込む事しか考えておらず辟易していましたでしょう。殿下の強さや聡明さを説明しても聞き入れなかったようですし。しつこく絡めば痛い目に遭うと、良い薬になったのではないですか?

 

 では、わたくしたちは失礼いたしますわ。優秀な火属性操者である、わたくしが助けるのが一番早いとは思いますが、罵倒され、謝罪も無かった者を助ける義理は一切ございませんわ」


 そう言って、キラキラ男子軍団の横を、颯爽と通り過ぎて行くアンネリゼ様。

 か、かっこ良すぎるぅ〜。


 その後を追いかけて、チラっと通り過ぎる時に、前半分氷男になった2人を見ると、絶望した目線をアンネリゼ様に送っていた。


 ──あーあ。謝ればよかったのに。


 その氷ね。

 アンネリゼ様の言う通り、すんごい繊細な魔力繰りじゃないと、大火傷したりとか、表面しか溶けないとかになると思うよ。

 だけど、火の魔法じゃなくて、他の魔法でも溶かせるんじゃないかな?

 風と水魔法でゆっくり溶かして、3日くらい寝込めばいいと思うよ。


 

 


 そんなこんなで王子様とその仲間と、悪役令嬢っぽいアンネリゼ様とわたしたちで、たまにドンパチやらかす日々が続いていた。

 





 

完結まで書いてあるので、毎日投稿する予定です。

うちのクラリッサを宜しくお願いします!


★★★★★★★★


2026/10/21

全体的に改稿しました。


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