第五十三話 利権
東邦大学病院
マサは運び込まれた病院で、意識が戻ることなく、1日が経過した。
三滝は、マサの横に座り、
『お前…何回入院したら気が済むんだよ…まったくよ〜、このまま年越しちまうぞ…』
そこに、さっきが現れた。
『さつき…お前、もう大丈夫なのか?』
さつきは
顔を2針縫って包帯を巻いていた。
『私は大した傷じゃない…、マサはまだ起きないのか?』
『ダメだな…、ダメかもしれないな…』
『マサ…ディズニーランド、また行こうな…』
そう言って、さつきは帰って行った。
三滝がすぐに、さっきを追いかけて、
『ゆずるはどうなったんだ?』
さつきは振り向きもせず
『冨樫に聞いてよ…、私が聞きたいくらい』
三滝は、
さっきが居なくなってから、マサに話し掛けた。
『ゆずるが、さつきを助けてくれたらしいんだが、なんでゆずるが逮捕されなきゃいけねーんだよ…、冨樫にも電話が繋がらねーし…、警察は何やってんだろうな…
早く目覚めてくれよ…マサ…』
三滝の目から、涙が溢れ落ちた。
〜 警視庁捜査一課
『この事情聴取はおかしくないですか?』
『じゃあ、どう説明するんだよ…この状況は、』
3人の刑事が詰め寄る。
『だからって、ゆずる君を拘束するのは、法律違反だろ!』
『確かに、大崎弓弦が所持していた拳銃には、弾が装填されたまま、1発も撃たれていなかった…でも、それは撃った後に弾を装填したかもしれない…』
『馬鹿な事を言うな…その撃たれた弾は見つかっていない。それに撃たれた組員は10名…
ゆずる君が持っていた銃の弾数は7だ…
はじめに1人が発砲、ほぼ同時に撃ち返され死亡…その直後に9人がほぼ同じタイミングで弓弦君に向けて発砲してる事は、一ノ瀬剛の証言から明らかだ。
そして不思議なのは、9名がほぼ同時に撃たれて倒れた。…』
『その証言自体がただしいのか?…一ノ瀬が言った事だろう?』
冨樫が頭を抱えて…
『ゆずる君からの証言と、一致しているから…間違いないと思います。』
『おかしいだろ…それは…』
冨樫がポツリ言った…
『跳ね返った…、…』
『馬鹿言ってんじゃねーよ』
と、冨樫は頭を叩かれた。
〜 弓弦の事情聴取
冨樫が、ゆずるの所にやって来た。
『ゆずる君、長い時間悪かったね…もう帰れるよ。』
ゆずるは、冨樫の顔を見て…
『冨樫さん…あの、さつきは?大丈夫でしたか?』
『さつきちゃんは、左目の横を2針縫ったのと、左手首を捻挫してます。』
ゆずるの表情が厳しくなった。
「どうして、一ノ瀬剛を釈放したんですか?…
今回の事件は、警察のミスですよね?」
冨樫は返す言葉がなかった…
…これは警察の利権だ、誰だっておかしい事はわかる。なのに誰も何も言わない。
みんな、今の生活が民間よりマシだと理解している…ただ、波風立てずに定年を迎えたいだけだ…買った家のローン、子供の学費、頭をよぎるのだろう…
見て見ぬ振りは、罪にはならない。
冨樫が振り絞って答えた。
『ゆずる君…これは警察のミスだ、その通りだ。…本当に申し訳ない!』
ゆずるは冨樫を睨んで…
「今から、マサさんの入院する病院に一緒に行きませんか?」




