第一話 生命
はじめまして、スプマンテロックです。
この物語を見つけていただき、ありがとうございます。
『死神リベンジ』は、
**「死にたい少年」と「生きたい死神」**の物語です。
家族を失い、いじめに苦しみ、
生きる意味を見失った高校生・大崎弓弦
彼が選んだのは、自ら命を絶つことでした。
しかし、その瞬間
一人の死神が現れます。
これは「死」を描くだけの物語ではなく
人は、なぜ生きるのかを表現したいと思い
ストーリーを組み立てました。
誰かに必要とされるとは、どういうことなのか。
そして、一度「死」を選ぼうとした人間が、
もう一度「生きたい」と思うことができるのか。
弓弦と死神の一年間を、
どうぞ最後まで見届けていただける嬉しいです。
月が綺麗な8月の夜、渋沢高校の屋上に立つ一人の生徒。
夏休みで閑散とした空気が流れる校内には、人影もない…
校舎から見える景色は校庭が見渡せたはずだが、夜の暗闇でポツンと街灯が1つ目立つだけだ…
体育祭や文化祭で賑やかだった光景とは違い、夜は静かで暗い…
学校ほど、昼と夜で陰と陽に差がある場所はないだろう…
屋上の金網を登ると、急に恐ろしさと悲しさが満ち溢れてきた…
金網の向こうは、風が強く今にも飛ばされてしまいそうだ…
後ろ手に金網を握りしめて、
遠くの空を見上げた…
「ここまでか…短い人生だったな…」
大崎 弓弦17歳
渋沢高校2年 普通科
両親を3年前に事故で亡くし、祖母と2人で暮らしていた。
…その祖母が先週、突然亡くなった…
小さな葬儀を上げ…
ようやく落ち着いた日常を迎えた時…自分が何者かを考えた。
勉強が出来るわけでもなく、スポーツが得意なわけもなく…何よりもいじめられていた…
誰も弓弦に話し掛ける友人もいない…学校の先生すら目も合わせてもくれない…
「ふ〜…」
深呼吸にも近い、大きなため息を吐いた。
「俺は存在しているのか?ばあちゃんが死んでから…隣りの家のおばちゃんとしか話して無い…」
弓弦は目を閉じた…
破られた教科書…隠された上履き…無視される教室…机の落書き…、何も楽しくない…
死んだばあちゃん…、ごめんなさい…
沢山迷惑かけたね…
その時、背中から突風が吹いた。
「あっ…!?」
フワッと弓弦が宙に舞った…
お腹が締め付けられる、恐怖と突然近付くアスファルト…
あー〜!!声が漏れる…
中々地面に落ちない…
これが走馬灯か…「あれ?…」
地面から50センチ手前で逆さまに宙に浮かんで止まっていた…
「あれ…もう死んだ…?」
弓弦がそう考えた時…目の前に足が見えた…
誰だ…女の子?
視線も動かせない…
その時…声がした
『あなた…馬鹿だね…せっかく生まれて来て、すぐに死ぬなんて…』
「誰…?、死んだ方がマシって場合だってあるだろ!」
『無いわ…』
「え?…」
『あなた…生命の確率を知らないの?それに死が楽になるなんて、思わない方が良い…』
「楽だなんて…思ってないよ…」
『そうかしら…理不尽な環境、イジメ、苦痛…貧困や挫折…死より辛い事ある?』
「君にはわからないよ…僕の気持ちなんて…そんな事より、君は誰?」
『…私は、死神。あなたを迎えに来たの…』
「死神?…」
『そう…死神には姿カタチは無いのよ…これはあなたの前に自殺した少女の姿をもらったの…』
「もらった?…」
『そう…もらったの!でもね、死神の魂では現世に出られない…』
「ふざけてる?…さっきから…」
『ふざけてないわ…ねぇ…さっき私には、自殺するあなたの気持ちがわからない!って言ったよね…?』
「言ったよ…、」
『じゃあさ…私と取り引きしない?』
「取り引き?…」
『そう…、私は現世を生きて見たいの…それでこの身体をもらった…でも、死神の魂では現世に出られない…、だから、あなた…私と魂を交換しない?』
「魂を交換…?何言ってるんだよ…そんな事できるわけ…」
『出来ないなら言わない…』
「それって、僕には何のメリットがあるの?」
『それはね…あなたは死神の魂で生きていける…
無敵の死神の魂で生きて行ける…最強だよ』
「……」
『それに今なら私が50センチ手前で止めたから、身体は死んで無い…身体はそのまま使えるから魂が変わるだけ…』
「身体が入れ替わるって事?」
『やっぱりあんた馬鹿ね…魂を交換するだけよ…意識を交換なんて言ってないでしょ。』
「意識はそのまま…身体もそのまま…、魂だけ交換って…今とは、何が違うの?」
『人はね、身体に魂が入ってはじめて意識を持っているのよ…魂とは電池みたいなもの、電池を交換すると思ったらいいわ…』
「僕は死にたいんだけど…」
『まだ、そんな事を言ってるの?…死ぬのなんていつでもできる…死神になれるなんて滅多にない経験だよ…1年だけだから…頼むよ。』
「いやだよ…死神なんて…」
『死神の魂は、絶対に死なない最強の魂なんだよ…不死身ってやつ。』
弓弦は興味を持ちはじめていた…
「最強か…?」
死神はそれを見逃さなかった。
『そうよ…最強なの、もしあなたが、誰かに殺されそうになった時、あなたに向けられた刃は振り下ろした者に向かう…』
弓弦は無言で考えていた…
「もう暴力に怯える必要はないって事?」
『…そうよ…死なないんだから無敵でしょ!』
弓弦は静かに考えた…
「いいよ…」
弓弦の目の前は真っ暗になった…
『契約成立だ…』
薄れ行く意識の中…死神の声が耳に残っていた…
******…
弓弦が目を覚ました時…渋沢高校の屋上で倒れていた。
…朝日が目に刺さる…
「イタタ…」
コンクリートで倒れていたせいか、身体中が痛い…
ゆっくりと、身体を起こして座った…
後ろから
『やっと目が覚めた?…』
弓弦はびっくりして、振り向くと制服を着た女子が立っていた。
「誰?…」
『何言ってるのよ…取り引きしたでしょ…』
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
『死神リベンジ』第一話、いかがでしたでしょうか。
物語の始まりは、主人公の弓弦が
「死」を選ぶところからです。
でも、この作品で私が描きたいのは、
死そのものではなく、
「生きる」ということです。
弓弦の前に現れた死神は、
これから彼の人生を大きく変えていきます。
なぜ死神は弓弦を助けたのか。
なぜ彼女は、人間として生きる事を選んだのか?
弓弦が使うことになる「死神の魂」とは・・・
この先、少しずつ明らかになっていきますので、
ぜひ第二話も読んでいただけたら嬉しいです。
「死にたい少年と、生きたい死神。」
第二話の 契約の真相を見届けてください。




