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みんなの人気者

今回は短いです。


今月中にまた更新しますので、お許しください。

 今回、複数の国が協力……ではなく、同時に薬物撲滅運動に乗り出した。

 複数の国、複数の種族が協調して危険薬物の売買を取り締まったのである。


 有力者というのはそれだけライバルが多い。

 大きな動きをすれば糾弾されかねない。


 しかし有力者たちは遠慮なく動いていた。

 なにせ裏事情を込みで問題がなかったからである。


 普段は薬物売買を全力で取り締まっていないが、全力を出しても問題がない。

 なにせ薬物売買は違法だから。


 違法行為である理由も健康上であったり社会的な問題であり、なんら後ろめたい要素がない。


 なので有力者がその気になれば、叩き潰すことになんの問題もないのである。


 逆に言えば、条件付きとはいえ違法行為ではないとした場合、法の抜け穴となりうる。

 合法であれば取り締まるのは難しくなる。そして一度合法にすると、再度違法にするのは難しい。


 だからこそガイカクがらみで法律を変えるときには、大いに議論は紛糾したのである。

 それだけの価値があるということであり……。


 ガイカクは今後も価値を示し続けなければならないのだ。

 なお周囲はどっかでまた失敗してほしいな、と思っている模様。



 奇術騎士団本部にて……。

 ガイカクは自分用の資料室で、古い地図と新しい地図を交互に見ながら、メモ用のノートに書き記していく。


 古い地図は魔導的、地質的な地図である。

 新しい地図は国境などが描かれた、社会的な地図であった。


「適合する硬度の水の産地はこことここと、ここと……うんうんうん……ラグランジェ山脈、か。政治的に面倒な場所だな、俺が違法な製造業者ならここに建てるか。逆に目立つが、犯罪者がそこまで考えてるわけねえもんな。まあ複数の薬物製造業者がそれぞれアオテングを作ってる可能性もあるが、それは言い出したらキリがない。ひとまずここを潰す準備から始めるか」


 騎士団は特権が与えられている。

 ガイカクは普段から悪用しかしていないが、本来は今回のように政治的に難しい問題を可及的速やかに解決するためにある。


 複数の国家が領有権を主張する土地に、己の裁量で仕掛け、一気に解決する。

 それが騎士団に求められる能力だった。


「さて……速攻でケリをつけるのが好ましいな。麻薬密売組織は無駄に儲かる分、兵士の詰所とかもある。そこは久々の遠距離撃でドカン。そのあとは空から高機動擲弾兵と重歩兵を降下させて一網打尽、そこから動力騎兵隊で高速で撤収……やばい、楽しそうだな! 砲兵、上空から兵士の降下、さらにライヴスを突入させてから撤収! 鮮やか~~! 魔導的にも戦術的にもアリだな! よし、気球を製造して降下の練習をさせよう。落下傘も欲しいから丈夫で分厚い布の発注も……予算、足りるか? えええ~~~んん~~副業分の利益で賄える範囲だな」


 ガイカクの場合、騎士の仕事で黒字になることは少ない。

 人件費を安く抑えても、研究や特殊な訓練で予算が発生するからだ。


 それでも副業で儲かっていたり、スポンサーが太いおかげで何とかなっている。

 まあガイカクが騎士であるおかげでスポンサーがついているのだから、ある意味普通なことであろう。


「そうなると、動力付き気球の発注……後部ハッチが開放できる型を依頼するか。動力騎兵隊に作らせてもいいが、アイツ等には山岳仕様のライヴスを作らせたいからな。すでにある程度作れる動力付き気球と違って、山岳仕様は未知の領域だ。場合によってはルートの選考も……予定のスケジュールは……ふむふむ」


 頭脳労働を一手に担うガイカクは、だからこそ一々会議をしなくていい。

 彼が特別頭がいいからであるが、各部門の担当者同士で腹の探り合いなどする必要がないのだ。

 もちろん彼一人がいなくなると全部立ちいかなくなるのだが、それは今更である。


「ん……? そういえば、酒場に納品の時期か。夜間偵察兵隊に頼むとするか」


 スケジュール表を確認していると、酒の熟成が終わる日と書いてあった。

 もちろん製造に問題がある非合法な酒である。

 健康的な被害はないのだが、それでも普通では売れない酒を、ガイカクは製造しているのだ。


 自分が飲む分ではない。他の騎士団が飲むための酒である。

 当初は普通に飲ませていたり、各騎士団へ納品しに行っていたのだが、保管が難しい酒の場合は外注……というか、酒場に保管してもらっている。

 変な話だがボトルキープに近い。

 酒場に酒を納品して(厳密には預かってもらって)おけば、奇術騎士団が不在でも他の騎士団は酒が飲めるのだ。


 ちなみに、一時奇術騎士団本部で酒を飲む輩もいたのだが、そいつらは奇術騎士団の美味しい糧食をつまみにしだした。

 出禁である。


 出禁にする騎士団、出禁にされる騎士団というのも変な話であろう。



 夜間偵察兵隊は、騎士団御用達のちょっと高級な酒場に入った。

 結構な量の密造酒をもって、裏手から納品しに来たのである。


「どうも、奇術騎士団です。非合法の密造酒を納品しに来ました。サインをお願いします」


「おお、夜間偵察兵隊さんですね。それではお預かりのサインをさせていただきます」


 シュールな会話だが事実しか話していなかった。

 豪華な酒場の主人は、手をもみながら複数の酒樽を受け取る。


「……こう言っては何ですけど、素人が作った密造酒を店に置くのって、あんまりよくないんじゃ?」

「おっしゃる通り。手間のかかる工程を抜きにしていますから、普通ならこの店には置けない酒です。しかし……奇術騎士団が作った、非合法の酒ですからね。如何に騎士団にしか売れない……預かっているので渡しているだけですから売っているとはまた違いますが、とにかく、そういう酒を置いておけるというのは酒場の主としては気分がいいのですよ。それに料理人たちも、この酒が結構好きでしてね。これに合う料理を考えたり、この酒を使った料理を考えたりするのも楽しいのですよ。私も味見には参加させていただいていますが、なかなかエキサイティングですよ?」


「はあ……」


「元々、先代が道楽で無駄に酒蔵を高性能にしていたおかげで、この酒を預かる権利を得ています。他の酒場も悔しがっているのですよ」


「はあ……」


「格が落ちるどころか格は上がっています。なので遠慮なく……できれば酒造と共同して、本格的に卸していただきたいところですがね」


「さすがにそれは……」


「はははは! 失礼! ですが本心です。ああそうそう、よろしければお土産を持って帰ってくださいませんか? 珍しい酒が入ったので、いつものお礼……というか酒場のプライドですね。そちらに負けていないぞ、ということで」


 さすがは酒場の主人。

 実に口が流暢であった。


 夜間偵察兵たちは、店の奥へ入っていく。

 自然と店の中の声を聞くことになり……。


「各国の有力者が手を組んでくださったおかげで、違法薬物を売買していた組織が根こそぎ退治されたらしいぞ! ラグランジェ山脈とかいうところに一大薬物農場まであったそうだ! まったく世の中を舐めている!」

「もっと早く何とかしてほしかったが、贅沢は言うまい。これでヒクメ卿への依頼も中止、隔離病棟への協力も続けてくださるだろう!」


 あんまり聞きたくない声が聞こえてきた。

 おそらく、隔離病棟で働いている医者の言葉だと思われる。


 詳しいことはわからないが、ガイカクへの仕事を他の者が片づけたらしい。

 それもガイカクに騎士団としての仕事をしてほしくないから。


(お殿様、怒りそう……)


 気まずい気持ちで彼女らは奥へと歩く。

 そのさなかも声が聞こえてきた。


「ふひゅう……久々にいい酒が飲めるぜ。気分もいい、今日は最高の日だぜ」

「ああ。こともあろうに、俺たちへ『動力付き気球の偽物を作るから協力しろ』なんて言ってくる輩がいるとはなあ」

「奇術騎士団が技術を流出させたってことにして、失点をつけるつもりだったらしいな」

「中で人力で回して動かす動力付き気球のパチモンを俺たちに作らせるなんて……ぶっ殺されても文句は言えねえよなあ」

「なんでも騎士団が探していた工作員だったらしいぜ。おかげで引き渡したら大金がもらえた。これで奇術騎士団に回ってきそうな仕事を一つ潰せたな!」


 ドワーフの声が聞こえてきた。


「違法の塗料について調べてくるものがいたな。アレはどうなった」

「ああ、若い衆に潰させた。危ないところだ、場合によってはヒクメ卿に回りかねない仕事だったな」

「彼にはあんなつまらない仕事をしてもらっては困る。もっと芸術方面に力を使っていただきたい」

「聞いたところでは、彼は遠い国の漆器や磁器、その実物だけではなく製造法もご存じらしい。珍しい塗料もお持ちだとか……」

「実際に歓待を受けた者から聞いた。なんとかオークション……美術館に協力してほしい」


 人間たちの声が聞こえた。


(なんでみんな、お殿様に騎士団の仕事をさせたくないんだろう……)

(なんかこのまま世界が平和になりそうね)


 ガイカクの活躍によって、ガイカクは活躍の機会を奪われていく。

 それを知った彼がどのように受け止めるかは……。



「なんだそら~~~!」



 まあお察しであった。

本日、コミカライズの最新刊が発売されます。


よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
WEB版のアルヘナ領山賊顛末記以来だな…。3大希酒のキャララとダイアーサーは備蓄があり、ナマカキは保存できる場所が必要って言ってたしな…。そらツマミや肴は欲しくなるだろうが…、やらかしたのはヘーラ達豪…
騎士団に依頼しそうな連中が騎士団に仕事させないようにしてるとかギャグみたいだなあ
みんなで幸せになろうよ、ってか。
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