第五十六話 (筆者がリアルに)忘れ去られてた何か
また性懲りも無くウォル太視点。
「ん、あぁー!やっと着いた。」
と、俺は軽く体を動かしながら船を降りた。
あー。
体、ミシミシって感じの音が聞こえて来そうだわ。
「船内で痺れを切らしたお前は泳いで行くとかとち狂った提案を押し切ろうとした時はどうしようかと思ったが、まあ普通に着いたのならいいか。」
「あんときの目はマジだったからなぁ、兄ちゃん。」
「むしろ泳がせて行ったらどうなってたのか知りたいな。」
「「多分途中で行方不明。でも数日後には何事も無かった様に合流するに一票。」」
「は?お前等も泳ぐのに何言ってんだ?」
「「「お前と一緒にするな。」」」
えー?
割といいともうんだけどよ?
「さて、着いたのはいいが何処へ向かう気だ?」
「んー?久しぶりっつーかちょっとあそこで滞在してる時に宿屋のおっさんの事思い出してな、戻って見るのも悪かねえんじゃねえかってな。」
「グランガイツの方にか?まあ、ここからなら一日貫徹の走り通しで着けなくもない距離だが・・・・・っておいウォルター!」
「置いてくぞー?さっさとついて来い!」
さーって善は急げ。
一気に駆け抜け・・・・・って、うぉ!?
「おっさん!?撃つなよ!?」
「いや、嬢ちゃんが威嚇射撃しろっつーからよ。」
「・・・・・おじさん?モロ当たってたよ?」
「・・・・・当たった所であいつは死なん。問題無い。馬を借りて来るから大人しくしていろよ?」
・・・・・へいへい。
で、五分ほどして。
「シグ、お前って魔法少女とか好きだったのか?」
「・・・・・話が見えないんだけど。」
「いやな、お前だけ箒で俺の横並走してるんでな、ちょい気になった。」
「馬って揺れるから酔うんだよ。その辺分かってね。」
そう言うもんか?
むしろ見てるとケツが痛くなりそう・・・・・って、
「・・・・・なあ、シグ?」
「どした?」
「・・・・・何でお前の箒、サドルが付いてるんだ?」
「素で座ったらお尻が痛いだろ?」
・・・・・別に良いんだけどよ。
俺、ちょい自転車に繋がりそうなの見ると寒気が止まらんのよマジで。
前世のトラウマ的な意味で。
「おーい!兄ちゃん。」
あ、おっさんが呼んでる。
「何だおっさん?」
「村見えたからそこで一休みしようや、ぶっちゃけ俺がつらいって言うか腹減った。」
「・・・・・あ、もうそんな時間?」
「まあ、走り通しでも割合何とか『してしまう』お前とは違うんだよ。」
「・・・・・リンネ?普通何とか『なる』じゃね?」
「「「いや、ウォルター(兄ちゃん)の場合本気で何とかしてしまうからなぁ(だろう?)。」」」
と三人揃って言ってくれやがった後、
「ぶっちゃけレベルを上げて物理で殴ればいいを体現してるからな、お前。」
「・・・・・。」
シグが追撃をかましてくれやがりました。
俺に味方は居ないのか。
*****
「ふぃー、食った食った。」
「さてと、もう日も沈みそうだし、ここらで一泊か?」
と、俺達は適当な宿屋に入って食事をして一服中にシグがそんなことを言ってきた。
「えー。」
「えー、じゃないウォルター。お前のように私達は体力絶倫じゃないんだよ。」
「・・・・・この調子じゃ着くの明日か?明後日か?」
「一刻も早く着く必要は無いだろう。」
「兄ちゃん俺もう寝るわ、後よろしく。」
・・・・・。
リンネとおっさんの二人は言うだけ言って宿屋のおばさんに話を始めた。
「・・・・・暇だし、外に散歩行ってくる。ウォルターは?」
「俺もそうしようかな?ま、もうちょい休憩してからだけどよ。」
「ふーん?じゃね。」
と、シグも離れた。
・・・・・一人になっちまったな。
さて、どうすっかね・・・・・?
「ん?」
出て行くシグを見ていたら、真っ直ぐに町はずれに行くのが見えた。
・・・・・ちょっと気になるな。
ついて行くか。
と、尾行したのは良いんだが・・・・・。
「ま、撒かれた・・・・・。」
開始数分で見失いました。
ここは鼻に頼って・・・・・って、どんな臭いしてたっけ、あいつ?
「・・・・・待ってりゃ帰って来るし、戻るか。」
と、俺は宿屋に戻ることにした。
しかし、俺撒くってどんな動きしたんだあいつ?
とかなんとか考えていたら、
「なにやってんの?」
後ろに居ました。
「え?いやおま、さっき・・・・・。」
「ついて来てたの分かってたからね。からかっただけだけど?」
「・・・・・ま、いいか。で、何やってたんだ?」
「ちょっと忘れてた事があって、その仕込みをね。」
忘れてた事って何だ?
60話近くになって今更思い出すとか無いわー、とか変な事呟いてるけどどうかしたのかな、こいつ?
マジで忘れてた、勇者。




