第四十二話 謎の吸血鬼を追え(後編の二)
「ふふふ~ふ~ふっふふ~。」
某ロープレのファンファーレの鼻歌を歌いながら、さっきの戦闘後の周りを物色しているわけだが・・・・・。
「ウォルター。お前は何サボってる?」
「俺さっき頑張ってたじゃん?別に良いだろ?」
「さっきまで彼女が居ただろう椅子の上で全力で寛ぐな。殺意が湧く。」
「細けえやろーだ。別に良いだろーが。」
と、俺は椅子の上でゴロゴロと、まるでニートのように寛ぐ。
ま、宝探し云々はもうどうでもいいし。
さっきの吸血鬼のドロップ品がもう宝な訳だしさ。
「お前な、ソウルコアで遊ぶのは別にいいが、無くすなよ?」
「無くす訳ないだろ?いい加減に扱ってるわけじゃねえんだし。」
「・・・・・先日のライカンスロープのソウルコア、何処にやった?」
「ギャンブル用に売った。」
「・・・・・何やってるんだ、お前は・・・・・。」
ああ、さっきの話に出て来たソウルコアと言う物だが、俺はよく知らない。
リンネが言うには、高純度・・・・・もとい高レベルやボスキャラなどの強いモンスターを倒すと時折落とす宝石の事で、様々な用途で使われているらしい。
起動触媒、魔力付与、使い魔化、生贄にと使い勝手が良いそうだ。
ま、そんなもんに頼らんでも俺は強いがな!
「いいからお前も少しは働け!」
「嫌で御座る!絶対働きたくないで御座る!俺の世界は何人たりとも汚させない!渡さない!守り通して見せる!俺のために!」
「心に響くようで響かんわ!さっさと働けニート!」
「や☆だ☆」
「・・・・・シッ!」
「・・・・・おおぅ。」
俺の頭上数センチ、つかるところ椅子の背に小太刀がぶっ刺さっていた。
・・・・・投げたな?
「・・・・・危ねぇーな。当たったらどうする気だよ?」
「当たってもお前の場合皮膚で止まる。」
「・・・・・試したの?」
「試したから言ってるんだろうが。」
おい、一歩間違ったら死んでる事何さらっとやってやがんだこのロリ。
「・・・・・?」
ん?
今なんか揺れた気が・・・・・。
「うん、大漁大漁。」
「どこ行ってたんだ?おっさん?」
「最初から言ってるだろ?俺の目的宝さ、が・・・・・!?」
また揺れた。
今度は結構大きい。
「・・・・・何だ?」
「城の方からっぽいが?」
と、二人が言ってるのでそっち側を見ると・・・・・。
「二回も無くていいぞ!?このシチュエーション!?」
・・・・・。
何つーか、皆様予想通りと言うか、あれです。
主不在になったためか、城が崩れ始めていた。
「もうこっちまで崩れて来そうだな?」
「冷静に言ってる場合じゃないと思うが!?」
「リンネ!何とかしろ!?」
「無茶を言うな、無茶を!」
って、あーあ。
もうこっちまで崩れ始めてら。
「ウォルター!私達を抱えて飛べ!」
「死ぬわ!?もうちょい生存率高い手段選べ!」
「兄ちゃん!気合で何とかしろ!?」
「おっさん落ち着け!?」
「ええい!こうなったら・・・・・!」
と、リンネが懐から緑色の宝石を取り出した。
「おい!?こっちまで崩れ・・・・・飛んでる?」
「話しかけるな、結構神経使うんだぞ、これ!」
リンネが床に何らかの魔法をかけ、床が浮いてる状態になっている。
・・・・・つーか、最初っからそれ使えよ。
それと、贅沢言っちゃ駄目なんだろうけど、もうちょいスペースにゆとり持とうや。
「と、とりあえず安心・・・・・!?嬢ちゃん!傾いてる!傾いてる!?」
「分かってる!・・・・・つーか、宝物、捨てろ。」
「無茶言うなよ!?こっちの生活が・・・・・『借りるぞ!おっさん!』・・・・・ってオイ!?」
二人が喚いてる内におっさんから宝物を詰めてるらしい袋を取り上げ、床の中心辺りに立つ。
「これでちょっとはマシか?」
「・・・・・まあな。じゃ、ゆっくり下ろすか。」
「それにしてもさ、お前まだソウルコア持ってたのか?」
「保険で持ってた。・・・・・お前に渡すと碌な事にならんと言うのは何度も痛感してるんでな。」
「・・・・・まだある?」
「渡すと思ってるのか?」
「「ですよねー。」」
「若干一名待て。」
とまあ、若干グダグダになりつつも、俺達は城から脱出に成功した。
*****
「・・・・・やっと戻って来れた。何かもう、いろいろ疲れたが・・・・・。」
「体力ねえな、リンネ。大丈夫かよ?」
「誰のせいだと思ってるんだ?」
「おっさんのせい?」
「兄ちゃんのせいじゃねえのか?この話の流れからして。」
「ま、いいだろ?で、おっさんどうすんだ?これから。」
「んー・・・・・。得に考えて無いな。風の向くまま気の向くままって感じで行動してきたし。」
「・・・・・。」
「どうした?」
「おっさん面白いし、一緒に行動しねえか?」
まあ、無理で元々、リンネと二人っきりじゃ息も詰まるし。
「んー。ま、いっか。」
「よっしゃ。仲間確保。」
「・・・・・。まあ、私としては別にいいか。さて、クエストの報告に行ってくるがお前たちはどうするつもりだ?」
「取りあえずあの城で見つけた物換金してカジノで遊ぶかな?」
「良いね、兄ちゃん!俺も混ぜろや。」
「・・・・・お前等は。行ってくる。」
「じゃ、さっさと行くか?・・・・・おっさん?」
「ん?ちょっとな。先行っててくれ。後で追いかける。」
「・・・・・わかった。」
とおっさんは路地裏に入って行った。
ま、待ってても仕方ないし、先行ってるか。
*****
「・・・・・さて、人払いはしたんだ。姿位見せてもいいんじゃねえか?」
と、何もないはずの空間に声をかける。
すると、蜃気楼のように一瞬空間が歪むと、黒い鎧に獅子を模した仮面をかぶった男が現れた。
・・・・・はい、この辺でもう分かりますね。
俺です、シグ・レインフィールドです。
「・・・・・釣れねえな、幻影纏ってないで本来の姿位見せろや。」
「―――――見せる義理は無い。」
いや、俺が幻影?纏ってるって気づくだけでもすごいが・・・・・だから?って話である。
「お前、確かあの坊主が俺と接触した辺りから居たよな?」
「―――――・・・・・。」
「ま、そんなんはどうでもいいがな。面白い奴って事には変わりないし。」
・・・・・。
ま、いいか。
本来の姿をさらして。
「・・・・・どんなのが来るかと思ったら、チビちゃんかよ。」
「二頭身ボディに改造しようか?」
「結構だ。で、あいつはお前のなんなんだ?」
「友人って事で。」
「そうかい・・・・・で?お前、名前は?」
「そう言うのはまず自分から・・・・・いや、ま、知ってるからいいけどさ。シグ・レインフィールドだ。」
「・・・・・ん?ああ!お前がか、サリアが言ってた最近引っ越してきた同族ってのは?」
「サリア?」
「確かディアードで中華料理屋を・・・・・ってお前、何で青い顔・・・・・いや、もう食ったな、あいつの料理・・・・・。」
「何?まさかとは思うが、あんたあれのお父さん?」
「そのまさかだ。しかし、何処で間違えたらあんな料理に・・・・・。」
うん、あの料理の腕は何かもう神秘を感じる。
「・・・・・あー。何かもう安全ってのは分かったから、帰るわ。」
「そうか?じゃ。サリアをよろしく。」
「出来ればよろしくしたく無いですけどね。」
そう言って俺はその場を後にした。
余談だが翌日、カジノで全額すってパン一でロリに叱られているおっさんと筋肉達磨が居たのをここに記しておく。
次回から元のシグ視点です。




