第三十二話 何しに行ったんだっけ?
ガシャコーン。ガシャコーン。
プシュー。
・・・・・。
今、俺の居るところを表現すると、こんな音があちらこちらで響いている。
『何て言うか、ファンタジーに工業都市って感じだよな、ここ。』
「まあな、都市ってほどでもないけど。しかしまあ、こんなうるさい所に室戸君?が住んでるようだが、不眠症になってないか心配だな。」
『住んで都って言葉があるんだ。ま、何とかなるんじゃねーの?』
「その前に、スカル。」
『何だ?』
「・・・・・いや、何でもない。」
こいつ毎回毎回、一体どうやって戻って来てるんだ?
流石に宇宙に放り出したら戻って来ないときはあったが。
「俺の居る所と比べたらなんかさ、ほんとに冒険者多いよな、ここ。」
『仮にも冒険者の一大拠点なんだ、そりゃ多いだろ。』
「だよな、こう、冒険者です、って感じの奴がゴロゴロ・・・・・うわぁ!?」
ブシュー!
・・・・・音にすると、こんな音だろうか?
俺に、思いっ切り排気ガス?蒸気?がぶち当たった。
「ちょ、坊主!?大丈夫か!?」
「いや、驚いただけです。」
ま、マジで当たってたら今頃火傷してるわな。
こう言う事言ってる以上直撃はしてない訳で。
『あっち!あっちぃぃぃ!?』
皆様予想通り、身代わりが犠牲になったわけです。
え?指輪なのにどうやって防いだって?
そんな方は二次元フィルターでも通して見て下さい。
「さて、本題の室戸君は一体どこにいるのやら・・・・・。」
『探せよ、能力で・・・・・。』
「もうやって・・・・・あ、見つけた。」
さて、そっちに向かう前に、彼視点に移しましょう。
そして俺は営業モードに移行です。
*****
・・・・・。
俺は、工房の裏で空を眺めていた。
こっちに来てからと言う物、驚きと勉強の数々で、こう、自分だけの時間って物が無かったかもしれない。
最初にこの世界で右も左も分からない時に拾うように俺を工房で働かせてくれた親方には感謝しているが、ま、それは置いといて。
俺は自分で作った剣を見る。
・・・・・俺が言うのもアレだが、かなり歪である。(最初に作った奴だし。)
親方曰く、一応筋は有るらしいが、剣としては駄目らしい。
俺としてもこんな剣売るのもどうかと思う。
中に込めた魔力は相当な物なので、一級品と言えばそうなのかもしれないが、大概俺が打った物を親方が打ち直したらほんとに見た目が伝説の剣っぽくなる。
「おい、クラウス。休憩終るぞ?」
そうそう、俺の今の名前はクラウス・ヴィンセント。
何かおかしい気がするが、別にいいと思ってる。
「ああ、先輩。今戻ります。」
「またそれ見てんのか?さっさと打ち直したらどうだ?」
「あ、いや、これ結構思い入れが・・・・・。」
「お前も頑張ったらそれなりの見た目にはなんだろ?今は駄目でも。」
「・・・・・流石に魔力付与しかまともに出来ない俺が、親方並みの剣打てるんだろーか。」
「やり始めて一か月も経ってねーわ初めてで形にはなるわのお前の才能の方がスゲェっての。ま、二、三年がんばりゃいいんじゃね?俺は五年頑張ってもこれだが。」
と、先輩は鉄の塊を見せて来た。
先輩とそんな雑談を交わしつつ、工房の中に戻る。
「親方、戻りました。」
「戻ったか。クラウス、お前に客が来てるぞ。」
「・・・・・俺にですか?」
え?俺なんかやったっけ?
・・・・・心当たりがない。
じゃあ、誰だ?
「よお。」
誰だったかと言うと、俺をこの世界に連れてきたおっさんが客として俺の所にやってきた。
「・・・・・何の用だ、お前。」
「・・・・・おいおい、仮にも客だろ?もうちょっと懇切丁寧に接しろよ。こう、三つ指ついて艶めかしくよ。」
「・・・・・ぶぶつけはいかがでしょうか?後、俺は男だ。」
「追い出すな追い出すな。ま、お前は元気そうだな。」
「なあ、クラウス。この人、知り合いか?」
「ああ、大した事情話すことなく俺をこの辺に放り投げた理不尽な馬鹿って話前にしたよな?それがこいつだけど?」
「・・・・・事実だがもうちょっとまともに言えんのか、お前。流石にパンツ一丁で放り出したのは悪かったと思わなかったけどさ。」
「・・・・・思えよ!?後、そんな事しても無いのにさも事実のように語るな!?」
「そんなどうでもいい事は置いといて。お前の作品貰いたいんだけど?」
と、かなりの量の金貨が入った袋をカウンターに置いた。
・・・・・どこから出したの?それ。
つーかそれだけあったら家一軒、いや、工房一個ぐらい買えるぞ!?
「俺の作品?今、無い。つーか売れるような出来の物は無い。」
「じゃ、出世払いって事で、受け取っとけ。散財大歓迎。」
と、工房から出て行った。
何がしたかったんだ?あの人?
「つーかよ、この大金、どうすんだ?」
・・・・・本当に置いて行きやがった。
マジでどうすんだよこの金。
「ちょっと貰って良い?」
「どうせ返す金だから、触らないでくれる?」
・・・・・何かつかれた。
もうベッドに戻りたい衝動に駆られつつ、俺は仕事に戻るのだった。
*****
「ふぅ。暇も潰せたし、帰るか。・・・・・お土産、要るかな?」
はい、先ほど彼の勤めている工房から出て来たシグ君です。
『お土産って・・・・・この辺で良いのってあるのか?』
「最悪釘やネジとかでも買って帰ればいいだろ?ハイドの奴食うだろうし。ポッ◯ーみたいに。」
『お前はあいつを何だと思ってるんだよ!?』
割と面白い奴だと思ってるよ?
ハイドのやることなすこと見てて飽きません。
ポッ◯ー彩色したら、食うかな?




