第二十六話 ハイドと謎の料理店
もうすぐ5000ユニーク。
「え?晩飯の食材が無い?」
晩飯のおかずをつまみ食おうと思ったら、ユウがそんなことを言ってきた。
「はい、今日はベーコンとソーセージとかを使った料理をしようと思ってたんですけど・・・・・。」
「その肝心の肉がどっかいっちゃったと?」
「はい・・・・・。」
いや、肉が無くなるとかおかしいだろ。
どうやったら無くなるっつーんだ。
食うにしても、あれだろ?
「昨日買ってた俺の胴位あったのがどうやったら無くなるんだよ・・・・・。」
「まな板の上に置いといて、少し所要で離れてたら無くなってたんです・・・・・。」
「こういう時は、ハイド?」
「何だ?」
「お前、ここにあったらしい肉知らない?」
「ああ、あれか?」
「知ってんのか?」
はぁ、やっと解決。
「美味かったぞ?」
やっと・・・・解決・・・・・?
つーか、このアホ、今。
「あれか。」
「何だ?」
とりあえずこれからする事の為に窓を開け、ハイドの後ろに回り込む。
「お前が犯人か!このアホがぁ!」
と、俺はジャーマン・・・・・バックドロップでもいいが、とにかくそんな感じの要領で、ハイドを窓の外に投げた。
「ちょ、おま!?ここ三階!?ここ三階ぃぃぃ!?」
知るか。
華麗に受け身でも取りやがれ。
「どうしましょう?今日のごはん・・・・・。」
「まさかあれを一回で食うとかほんとにあいつの胃袋は何なんだろうか。」
「ああ、それならさ。」
と、窓から戻ってきたハイドが何やら提案が有るようだ。
「何だ?もう一回投げられたいのか?」
「投げんなよ。下で店やってた人めっちゃ驚いてたぞ?」
「そんな物は知らん。」
「・・・・・俺の行きつけの店有るんだけどさ、そこ行かね?」
「ま、いいだろう。ユウもそれでいいか?」
「はい、明日の朝食が少し遅れるかもしれませんが・・・・・。」
「ま、そのぐらいならいいか。」
「お前さ、あの指輪どうした?」
「あ、忘れてた。」
ちょっと前に視界から消す拍子に大気圏外に投げちゃったんだっけ。
「呼び戻すか。そ~れ~。戻ってこい~。」
と、俺は窓の外にU字磁石を出し、
『ひぃぃやぁぁぁぁ!?ふげっ!?』
帰還に成功させる。
「お帰り~。どうだった?宇宙の空気は?」
『どうだったじゃねえよ!?危うく星になるところだったつーの!?』
「そして、スカルは何も考えなくなった・・・・・。」
『俺はどんな手段使おうと勝てば良いって考え持ってねーよ!?』
「あ、このネタ知ってるんだ。取りあえず何も考えなくて良いようにする位のサービスを・・・・・。」
『要りません!?』
「じゃ、もう一回宇宙行こうか?そぉい!」
『要らねえっつってんだろーが!?って!?ふひょぉぉぉぉぉ・・・・・。』
俺は大気圏外にスカルが飛んでいったことを確認し、
「じゃ、食べに行こっか。」
「「(・・・・・いいのか?)」」
いいんだよ。
グリーンダヨ。
・・・・・ちょっと古いかな?
*****
『太陽擬きに直撃しそうになった時は本当に終わったと思ったぞ?シグ・・・・・。』
「ちっ、終わってりゃいいものを・・・・・。で、こっちか?表通りから少し離れてるように思えるが。」
「そうそう、こっちこっち。結構美人さんが切り盛りしてんだよな。あんま客来ないから気に入ってんだよ。」
「客が来ない・・・・・?」
「ま、この辺じゃちょっと変わった料理出すからだろうな。中華料理とか。」
「確かに南国で中華は聞かねーな・・・・・。」
「着いたぞ、ここだ。」
と、ハイドに案内されて着いた店は、
「中華料理屋『十三不塔』ね・・・・・。大車輪とか百万石とかにすればいいのに・・・・・。」
『全部ローカルルールじゃ無かったか?それ・・・・・。』
「何の話ですか?」
「この料理の地元で有名なゲームの話。料理は期待で来るのかどうかは別としてな。」
「いらっしゃい・・・・・あら、ハイドさん?また来てくれたんですね。」
と、俺達を迎えてくれたのは、ほんわか、と言う言葉が恐ろしく似合う人だった。
ユウとは何か違うベクトルの入ってそうな人である。
「ああ、何か料理の用意が間に合わないからって事でな。」
「そうなんですか~。では、何にします?」
と、水とメニューを持ってきた。
メニューには、やっぱり麻雀関連がびっしりと書かれていた。
でも、分かりやすいように下に何がどんなのかって書いてある。
「んじゃま、国士無双セット一つ。」
「この・・・・・えと、紅一色ラーメンセットと言うのを・・・・・。」
「清一色セットと言うのをお願いします。」
「はい、少し待っててください。」
それにしても・・・・・。
「客、居ねーな。」
「割合いつものことだぞ?ま、俺としては静かな感じが良いわけだが。」
「そう言うもんかね?」
「そう言うもんだって。」
そんな感じに他愛も無い話しに花を咲かせていると、
「お待たせしました。熱くなってるので、気を付けてくださいね。」
と、料理を持ってきた。
「さて、食べようか。」
「だな。」
って、食ったんだけどさ、
何、これ?
ラーメンが・・・・・
めっちゃ酸っぱいんですけど!?
「し、シグさん・・・・・。」
「ユウ・・・・・お前もか。ちょっと貰って良い?」
と、俺はユウの見た目担々麺のラーメンを貰って食べた。
が。
「あ、甘・・・・・何これ。」
「あとこっちの餃子って言うの、味がしなかったです。」
俺は、ユウにラーメンを返しつつ、そんな事を聞いた。
「そこのタレ付けた?」
「付けても味が無いんです・・・・・。」
「・・・・・マジか。」
「どうしましょう?」
「・・・・・ちょっと待て。」
と、俺はユウの料理に触り、
「・・・・・もう大丈夫だと思う。」
「え?あ・・・・・大丈夫です・・・・・ちょっと辛いですけど。」
「しかし・・・・・こいつの勧める店って時点で疑ってかかるべきだった・・・・・。」
何せあのオイルパスタを不味いの一言も無く平らげた奴だったわけだし。
「あ、お味の方は大丈夫でしたか?」
「ええ、何とか・・・・・。」
物理的な意味で。
きっとこの時の俺は、ひきつった笑顔を彼女に向けてただろう。
「そうでしたか・・・・・。ちょっと調味料を間違えてたかもしれなかったので・・・・・。」
「「・・・・・。」」
いや、間違えてたよ?
油と酢、豆板醤とイチゴジャム間違えるくらいには。
「あ、いらっしゃいませ。」
どうやらほかの客が来たようだ。
・・・・・。
ちょっと彼女を観察してみるか。




