19.衛星電話
川谷純也は指を折りながら数を数えていた。
「二千万か」
「どうかしたのか?」佐藤雄二が尋ねた。
「二人殺しただろう? 俺の借金が八百万円だからよ。あと二、三人殺せばお釣りが来ると思ってな」
「お前、降りるのか?」
「欲をかいたら早死にするぜ?」
「俺はな、会社の金を横領しているんだよ。そんなはした金で帰れるか」
「一体、いくら横領したんだ?」
「二億だよ」
純也は考えた。(二億だと? こいつ、頭がおかしいのか? お前と心中なんてご免だぜ。隙を見て逃げるか)(お前は一人で勝手に死ねよ)
雄二も考えた。(こいつ、信用ならねぇな)(変な動きを見せたら、殺してやる)
「まぁ、なんだ。そういうことなら最後まで付き合うぜ」純也が笑った。
「お前ならそう言うと思ったよ」雄二も笑った。
斎藤司は荷物を整理しながら、後藤光安に質問をした。
「光安、お前。女は好きか?」
「はい」
「俺は風俗を経営しているんだが、これが終わったら派手に遊ぶぞ」
「俺、司さんに一生付いて行きます」
「ははは、お前は素直だな」
司は荷物から衛星電話を取り出した。電源を入れると、司はダイヤルを押した。
「東二、俺だ」
「兄貴、無事ですか?」
「俺は無事だ。指示通り動いているか?」
「えぇ、見てますよ」
「何か変わったことはないか?」
「一人、強い奴が居ますね。女とチームを組んでます」
「どんな奴だ?」
「服装は短パン、半袖。武器はナイフです。歳は三十代後半で、男を瞬殺しました。多分、殺し屋か何かでしょう」
「成程、殺し屋か」
「他には何かないか?」
「南東に移動しているみたいです」
「そうか、何かあったら連絡を寄こせ。こちらからも連絡する」司は電話を切った。そして衛星電話をモバイルバッテリーに繋いだ。
司は地図を食い入るように見つめた。隠れる場所を探すためだ。近くに工場がある。司は作戦を練り直した。
「光安、作戦を変えるぞ」
「ショッピングモールは良いんすか?」
「あれは止めだ。ひとまず、この工場へ向かう」司は地図を指差した。
「了解っす」二人は工場へ向かった。
一方、その頃、名倉浩二は自宅の部屋でパソコンを眺めていた。
浩二はドゥームズデイを見るために全財産の十万円を使った。(しかし、視聴料が高いよな。一千万人近くが見ているそうだから、売上げが約一兆円か。そう考えると賞金の五億円なんかゴミみたいに安いよな?)
浩二は才華のオッズを見ていた。不思議と人気があった。(優勝候補枠だとよ。何が起こったんだ?)
(チーム戦だから、よほど強い人とチームを組んだのか?)浩二の考えは当たっていた。才華のパートナーは傭兵の男だった。ダイジェストで戦闘が流れると、浩二は気分が悪くなった。(おぇ、グロいな。首を切ったのか?)
>>登場人物
佐藤雄二30歳
川谷純也28歳
斎藤司36歳
後藤光安17歳
名倉浩二17歳
武田東二30歳
>>設定資料
DoomsDayその①。ドゥームズデイは大規模な賭け事であり、様々な事柄が賭けの対象となる。誰が優勝するのか、誰が最初に死ぬのか、誰が最初に逃げ出すのか、など状況に応じて賭け事が成立する。一日に動くお金は三兆円とも言われる。
DoomsDayその②。ドゥームズデイの運営は絶大な力を持つ。世界中の権力者、セレブや富豪が後ろ盾になっている。




