14.それぞれの思惑③
斎藤司、三十六歳。武器はドス。彼は関東を治める暴力団組織・五条連合会の組員だ。司は風俗店を経営している。上がり(利益)の半分を組に納めているのだが、自分の組を持つには大金が必要だった。(俺が関東を牛耳るんだ。必ずな)司の心は、背中に彫られた龍のように遥か上空を見つめていた。
後藤光安、十七歳。武器は木製釘バット。光安は暴走族・韋駄天の総長だ。総勢三十名を率いている。光安は中学校を卒業すると進学はしなかった。仲間と一緒に走る方が楽しかったからだ。一応、仕事はしている。建設現場でセメントを運ぶ仕事だ。仕事は嫌いではなかったが、遊んで暮らしたかった。光安は参加を決意した。
「光安、ライター持ってるか?」司は懐から煙草を取り出した。
「はい」光安はライターに火をつけ、司の口元へ運んだ。
「お前、筋が良いな。これが終わったら俺の組に来ないか?」
「良いんすか?」
「良いも何も、お前には根性がある。若頭でも務まるくらいだ」
「司さん、若頭って何すか?」
「ん? ああ、俺が死んだらお前が組長になるんだ。若頭ってのはそういうことだ」
「この糞な大会が終わったら、俺は組を立ち上げる。そして関東を制覇する」
「司さんは半端ないっすね」
「お前も三十人の子分を持つ総長だ。将来が楽しみだな」
二人は会話をしながら地図を見ている。光安は司に作戦があるのか尋ねた。
「ああ、一先ず中央のショッピングモールに向かうぞ。皆殺しだ」司は地面に煙草を投げ捨てた。
桐谷将也、二十五歳。武器はナックルダスター。将也は都内のお洒落なバーに勤めるバーテンダーだ。元プロボクサーで、高校のインターハイでは優勝したことがある。だが、プロになってから戦績が落ちたため、仕方なく引退することにした。酒の知識を学ぶうち、将也は都内に自分の店を持つことが夢になった。それが参加の理由だった。
奥田由美、二十三歳。武器は【レミントンM870】ポンプアクション式散弾銃。いわゆるショットガンだ。彼女は銀座のクラブに勤めるホステスだ。高校時代には学園祭のミスコンで一位を取ったことがある。彼女も自分の店を持つことが夢だった。常連客からドゥームズデイの話を聞き、迷いながらも参加を決めた。
「これからどうしよう?」由美は悩んでいる。
「一先ず、様子を見よう」将也は落ち着いた口調で言った。
「どこかに一旦、隠れよう」
「どこに隠れるの?」
将也は地図を眺めた。南西にガソリンスタンドがあった。
「ここにしよう」将也は地図を指差した。
「将也君が良いなら任せる」
「ここら辺に隠れて様子を見るんだ。最初はそれで行こう」
「将也君は頼りになるね」
「褒めても何も出ないよ」将也はそう言いながら笑った。
「私、怖いの。人を殺すなんて初めてだから」由美はそう言うと肩を落とした。
「俺もさ。でも、やらなきゃいけない。自分のために」将也は由美の肩を叩いた。
「そうだね。やらなきゃね」由美は深く息を吸った。
二人は南西を目指して歩き始めた。
>>登場人物
斎藤司36歳
後藤光安17歳
桐谷将也25歳
奥田由美23歳
>>設定資料
レミントンM870。ポンプアクション式散弾銃。所謂、ショットガンだ。




