11.スタート
「照準【レティクル】の中心に弾が当たるよう調整します」
「付属品のレーザーサイターを銃口に入れてください。レーザーを照射しながら、上下左右の調整ダイヤルで照準【レティクル】をレーザーに合わせます」
「次は調整ダイヤルを持ち上げて基準点に合わせ、押し戻します」
「以上で調整は終わりです」
「可変式スコープなので、自由に倍率を変更できます」
才華はスコープを調整しながら、面白いなと思った。弓道をやっているので、スナイパーライフルは納得のいく武器だった。
「さて、それでは最初からやりましょう」
才華はレバーを引いて薬莢を排出すると、弾を込めた。①スタンディング(立射)、②ニーリング(膝射)、③シッティング(座射)、④ブローン(伏射)の態勢を順番に取った。付属品の脚【マウント】を取り付けると、ブローンの態勢で的を見つめた。ストックを肩に押し当てる。ゆっくりと引き金を引いた。タンと音がして、中心に弾が当たった。
「説明は以上です」「何か質問はありますか?」
「特にないです。ありがとう」
才華は弾丸をリュックとスカートのポケットに詰め込んだ。ライフルスリングを肩に掛ける。スナイパーライフルはずっしりと重かった。
レクチャーが終わると、才華は控室に向かった。(大田さんに報告しないと)
大田は控室で煙草を吸っていた。窓際に立って外を眺めている。
「大田さん、終わりました」
「おぉ、立派な狙撃兵だな。重くないか?」
「重いですね。でも、大丈夫です」
「心の準備はいいか?」
「はい」
二人は空港の隣にあるスタートポイントへ移動した。男のスタッフから地図を受け取ると、簡単な説明を聞いた。
「ここがスタートポイントですが、同時に帰還ポイントでもあります」
「セーフポイントは地図に記載してあります」
「その他の施設名も地図に記載してあります」「私からは以上です」
毒島が男のスタッフの後ろから大声を上げた。「さぁ、殺し合いの幕開けでーす。二人の意気込みを聞きまーす」毒島の後ろでカメラマンが撮影をしている。
「特にないよ」大田がぶっきらぼうに答えた。
「頑張ります」才華がお辞儀をした。
「それではドゥームズデイ、スタートでーす」毒島はポーズを決めながら、カメラの方を見つめていた。
「地図の南東にある学校まで走るぞ」大田は走り出した。才華は慌てて大田の後ろを追った。地図を再確認した。
「お前、殺してやる」ホールで揉めた若い男が才華を待ち構えていた。手には刃物を持っている。若い男は才華を狙い、刃物を頭上に振り上げた。次の瞬間、大田が若い男の首筋にある頸動脈をサバイバルナイフで切り裂いた。
「な、何で……何が……」若い男は飛び散る血液を左手で押さえながら卒倒した。若い男の後ろにいたチームの仲間は、それを見て逃げ出した。
「才華ちゃん、大丈夫か? とにかく走るぞ」大田は再び走り出した。才華は生まれて初めて人が死ぬところを見た。心臓の音が大きくなった。
才華は走りながら嗚咽を漏らした。だが、迷っている時間はなかった。肩に掛けたスナイパーライフルが大きく揺れている。大田の速度は予想以上に速かった。(本当に四十九歳なの?)大田を追いかけながら、才華は唇を拭った。手の甲に薄いリップの跡が付いた。
>>登場人物
鈴木才華17歳
大田六三郎49歳
毒島?歳
斎藤?歳
>>設定資料
L115A3。ボルトアクション式の大口径スナイパーライフル。射程距離は1,500m。弾はマグナム弾。




