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夜行準急(後編)
あれから2日が経ち、あの老人のことも忘れようとしていた頃、食堂室に行くと、その老人が座っていた。
「お前さん、一昨日に買ってもらったブレスレット、大事にしてるかい?」と言われ、僕は答えた。
「ええ。綺麗すぎて使えない程ですよ。」
「そうかいそうかい。ところで、あの噂は聞いたかね?」
「噂?何のことですか?」
「聞いてないのかい?二等車の客が先頭の展望席から飛び降りたっていう噂さ。」
「え?」
「儂も又聞きしただけだから、そこまで何があったか知らないけどなぁ。」
「そうなんですね。」
「それじゃ、儂はここでおいとまさせてもらうよ。」
「そうですか、ではまた。」
そう言い、老人は最後尾へ歩いていった。
その姿を見送りながら、僕は何を注文するか考え始めた。




