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虚界少女  作者: sara
迷雾
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钟声

葉山雅子は女子生徒の手を引いて、一歩ずつ警備室へと向かっていた。しかし、そこへ近づけば近づくほど、あの生臭い異臭はますます強くなり、二人は思わず鼻を覆い、胃がぐるぐると翻弄されるような感覚に襲われた。


ふと何かを思い出した葉山雅子は、持ち歩いていた公文書ケースから未開封の予備のマスクを取り出し、その女子生徒に差し出した。


「とりあえずこれでもつけときな。この匂い、長く嗅いでると毒になるかもしれないから」と彼女は言った。「それから、警備室に行ってみよう」


女子生徒は感謝の気持ちを込めてマスクを受け取り、素早く装着すると、黙って小さくうなずいた。


二人は互いに支え合いながら、慎重にホームの端にある警備室へと近づいていった。足を踏み出すたびに、足元のコンクリートが空洞のような響きを立て、死んだように静まり返った駅の中にそれはひときわ鮮明で、どこか不気味ささえ漂わせていた。


「あの……」息苦しい沈黙を少しでも和らげようと、葉山雅子が先に口を開いた。「私は葉山雅子よ。あなたのお名前は?」


女子生徒は少し戸惑いを見せた後、小さな声で答えた。「私……佐藤美咲です」


彼女の声は冷たい風にほとんど飲み込まれそうだったが、葉山雅子にはしっかりと届いた。


「佐藤美咲ね。なかなかいい名前だわ」


「あなたの名前も素敵ですよ、葉山さん」


その後、再び沈黙が訪れた。せっかく会話を始めてみたものの、無理やり作ったそのやりとりはかえって場をぎこちなくさせただけだった。それでも、お互いに名前を知り合ったことで、葉山雅子は少し安心した気がした。恐怖と未知に満ちたこの駅では、名前こそが二人にとって唯一、確かで知り得る存在だったのだ。


「はじめまして、佐藤さん。こんな状況下だけどね」


「私も……私もです、葉山さん」


やっと二人は警備室の扉の前に立った。ドアは確かに半開きになっており、そっと押すだけで簡単に開いた。


葉山雅子は深呼吸して、そっと扉を開き、中を覗き込んだ。


警備室の中はとても古びていて、空気にはカビと埃のにおいが立ち込めている。部屋の中央にある古い木製の机の前には、一人の人影が座っていた。


その人物は背を向けて椅子に腰かけ、真新しい濃紺の警備員制服を身にまとい、大きなフード付きの帽子を被って、じっと前方のホームを見つめ、まるで眠っているかのように動かなかった。


「誰かいる!」心の中で喜びを覚え、雅子は小声で呼びかけた。「あのう、先生……私たち、助けていただけませんか?」


相手からは何の反応もない。


「先生?」とさらに声を張り上げたが、人影は微動だにせず、返事すらなかった。


胸騒ぎが走る。雅子は思い切って近づき、手を伸ばして相手の肩をそっと叩いた。


「先……」


指先が相手に触れた瞬間――


じっと座っていたはずの体が、突然前のめりに倒れ、見る間に干からびたようにペタンと地面に崩れ落ちた。制服も一緒に形を失い、大きなフード付きの帽子は転がって脇へと落ちた。


「ああ――!」葉山雅子は驚きの叫び声を上げ、とっさに二歩後退した。


そしてもう一度よく目を凝らすと、彼女は魂が抜けるほど驚いた。


床に転がっていたのは、生き物でもなければ、死体ですらなかった。


それは、警備員の制服をまとった白骨だったのだ!


骨は地面に落ちて数片に砕け、頭蓋骨は首の部分で折れて机の下の暗がりへと転がり込み、空洞となった眼窩が雅子の方を向いていた。


そして、骨に纏われていたはずの真新しい制服も、たちまち色あせて厚い埃と蜘蛛の巣に覆われ、まるで何十年もの風雪にさらされてきたかのようだった。


「ああっ!!」


葉山雅子は恐怖のあまり何度も後ずさりし、両膝が震えて地面に崩れ落ち、両手で顔を覆った。


「どうしたの、葉山さん!」ずっと扉の外で怯えて入ってこられずにいた佐藤美咲が物音に気づき、不安げに尋ねた。


「骨……骨があるの!」雅子は震える指で机の下に転がった頭蓋骨を示し、顔面は蒼白だった。


「骨だって?」


佐藤美咲は怖かったものの、勇気を振り絞って室内へ入り、机の下を覗き込み、さらに机の前に進んで床に落ちていた帽子を拾い上げた。


「骨なんてどこにもないじゃない。見てごらん、葉山さん、これはただのボロボロの警備帽よ」と彼女は言いながら、手にした帽子を雅子の目の前に差し出した。


「見せないでよ!」葉山雅子は目を覆い、顔をそむけた。


すると佐藤美咲はそのまま帽子を自分の頭にかぶり、雅子の手を取って触らせながら、確信に満ちた口調で言った。「本当に帽子だってば!」


触感からしても、それは確かにただの帽子らしい。葉山雅子は自分自身を納得させようと必死になり、ようやく覆っていた手を離してゆっくりと顔を上げると、佐藤美咲がその帽子をかぶってこちらを見つめていた。


「これは……」信じられない思いで目をこすり直し、もう一度その隅を見やったが、そこにはもう何もなかった。


さっきのは、緊張のあまり見てしまった幻覚だったのだろうか?


彼女は恐ろしさを感じながら、背後の椅子の方へ視線を向けた。


床に散らばっていたはずの白骨は跡形もなく消え、椅子の上にはただ一枚のぼろぼろの警備員制服が、きちんと畳まれて置かれているだけだった。


「ここには何もなくて、この帽子と服だけよ」と佐藤美咲は説明した。「私が入ってきたとき、葉山さんが机の下に落ちたこの帽子を指さしていたの」


佐藤美咲は頭から帽子を外し、葉山雅子に手渡した。薄暗い照明の下、その帽子は古びた皮革の光沢を帯び、帽子の徽章には錆が浮かんでいた。


葉山雅子は訳が分からぬままだったが、白骨が消えたことにひとまず安堵した。とはいえ、胸の底に広がる寒気は消えるどころか、むしろますます濃くなっていた。


先ほどの一瞬の感触はあまりにもリアルで、骨が地面にぶつかる音まで克明に聞こえたのに、本当にあれはただの幻覚だったのだろうか?


彼女はためらいながら、椅子の上に畳まれた制服に手を伸ばした。


警備員制服の生地はざらつき、古びたカビのにおいが漂っていた。埃を落とそうと服をぱたぱたと振ると、


パラリ――


制服の内ポケットから小さな紙片が一枚、ひらりと床へと落ちた。


雅子は身をかがめてその紙片を拾い上げた。それはすでに黄ばんだ車票で、端は少し擦り切れ、警備室の薄暗い灯りを借りて、日付を読み取った。


「2004年5月11日」


2004年? 二十年も前なのか!


葉山雅子の胸に、とてつもなく不安な考えがよぎった。


黄ばんだ車票、朽ち果てたホーム、古くて埃だらけの制服、そして時が忘れ去ってしまったかのようなこの警備室……


もしや、この“如月駅”は、二十年も前に廃止されていたのではないのか?


二十年も前に廃止されたなら、なぜさっきの列車はここに停まったのだろう? なぜ放送でこの駅名が流れたのだろう?


もっと重要なのは、どんな普通の列車だって、二十年も放置されたこの幽霊駅に来るはずがないのに――!


「私たちは……一体、何の列車に乗ってしまったのだろう?」


葉山雅子は警備室の窓の外を見やった。


外は相変わらず真っ暗で、何も見えない。駅周辺の濃霧はますます厚くなり、この小さな部屋ごと飲み込もうとしているかのようだった。空気中の刺激臭も一段と強まり、鉄さびや腐敗した植物のにおいに加え、形容しがたい血の匂いさえ混じっていた。


「葉山さん?」様子がおかしいのを見て、佐藤美咲が心配そうに呼んだ。


雅子は我に返り、慌ててその車票を自分のポケットに押し込んだ。佐藤さんにこの絶望的な日付を見られたくなかったのだ。


「とにかく」と彼女は努めて平静を装いながら言った。「外は危険すぎるから、今はここで一夜を過ごして、夜明けが来て霧が晴れるのを待とう。それで帰る方法を考えるわ」


「うん、あなたの言う通り」と佐藤美咲は素直にうなずいた。


警備室は古びてはいても、二十年経ったガラス窓はまだ十分に丈夫だった。外では寒風が吹き荒れ、窓枠をガンガンと鳴らしていたが、そのガラスは割れることなく、二人を厳しい寒さからなんとか守ってくれていた。


室内で探し回った末、佐藤美咲は鉄製の戸棚の中から、まだ油が半分残った石油ランプを見つけ、隣には予備の石油の瓶もあった。


一方、葉山雅子は机の引き出しから湿気にやられていないと思われるマッチ箱を発見した。


佐藤美咲は慣れた手つきでキャップを外し、ランプに油を注ぎ、それを葉山雅子の前に差し出した。


葉山雅子はランプを受け取り、マッチ箱から一本のマッチを取り出した。


「うまく点きますように」と祈りながら、火打石の表面を力強く擦った。


チッ――


マッチは勢いよく燃え上がり、暗闇の中でオレンジ色の炎が躍った。雅子は慎重に手で炎を守りながら、マッチの火をランプの芯へと近づけた。


芯はすんなりともえ上がり、ランプはプッと軽い音を立てて、薄黄色の光がじわりと広がり、警備室の大部分の闇を追い払った。


「よかった! やっと点いたわ」と葉山雅子は安堵の笑みを浮かべた。


二人はランプを目の前の床に置き、警備室の隅で身を縮め、互いに寄り添って体温で暖を取ろうとした。佐藤美咲は薄手の制服ジャケット一枚しか着ておらず、凍えて唇が紫色になり、震えていた。


それを見た葉山雅子は、古びた警備員制服を手に取り、佐藤の肩にそっとかけてやった。


「じゃあ、あなたは?」と佐藤が申し訳なさそうに言うと、雅子は微笑んで答えた。


「私はあなたよりずっと厚着してるし、コートの下にはセーターもあるから、大丈夫よ」


静けさが訪れ、二人の間の雰囲も少し和らいだ。壁には掛け時計が掛かっていて、時間は一分一秒と流れ、秒針がチクタクと音を立てていた。


「葉山さん、どうしてこんな遅くまで駅で電車を待ってたの?」と佐藤美咲が膝を抱えて小さな声で尋ねた。


「最近、会社で大きなプロジェクトがあって、一週間連続で残業続きで毎日遅くなっちゃってね」と雅子は苦笑いした。「この仕事が終わればやっと休めると思っていたのに、こんなことになっちゃったわ。あなたはどうなの、佐藤さん? こんな夜遅くになぜ外にいるの?」


「私……彼氏の健吾と、今日は私の実家に行く約束をしてたの」


「そうなんだ」


「ええ、でも両親とは二十四時間も連絡が取れなくて、電話もずっとつながらないの。地元の警察に問い合わせても、『遠出していて行方不明になった』って言われるだけ。でも両親は普段はずっと家にいて、旅行なんか絶対しない人たちだから、自分で田舎の実家に行って様子を見に行こうと思ったの。でも一人じゃ怖いから、健吾に付き合ってもらおうって……ところが途中で車が故障して、道の真ん中で動かなくなっちゃったの」


「それは確かに大変ね」


「仕方なく、最寄りの駅まで長い道のりを歩いて、最後の電車で行こうと思ってたの。でも……途中でまたこんなことが起きて、トンネルに入ったところで、健吾が……彼がいなくなっちゃったの」と言って、佐藤美咲の目に涙が滲んだ。


葉山雅子は、最近世間を騒がせている“不可解な失踪事件”のことを思い出した。ニュースでは似たような例が何度か報じられており、帰宅途中で忽然と姿を消したり、監視カメラの死角で空間から蒸発したりする人がいるが、警察はいつも曖昧な説明しかせず、“家出”や“事故”だとばかり言っている。


そんなあいまいな対応にネット上では、これらの失踪事件の背後には常人には想像もつかない恐ろしい真相が隠されているのではないかという噂が広がり、さまざまな都市伝説めいた話が飛び交っている。


「心配しないで」と雅子は慰めた。「もしかしたら、彼は車両の向こう側に取り残されちゃっただけかもしれないし、あるいは……別の場所で降りちゃったのかも」


もちろん、本人ですらそんな言葉に本当の確信はないのだが。


葉山雅子が佐藤の両親の失踪についてさらに詳しく尋ねようとしたそのとき、途切れ途切れの鐘の音が、幾重もの濃霧を突き抜けて遠くから聞こえてきた。

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