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ナザル坊は自慢の婚約者さぁ!


「お茶が美味しいのぅ。冷たい緑茶は初めてじゃ。」


しんさんがふぉっふぉっふぉっと笑いながら冷茶を飲んでいる。


「冷たいお茶はさっぱりするらぁ?」


熱いお茶も良いけど、冷茶も良いさぁ。

コップの中で氷がカランと音を立てている。


「カルちゃんのお茶は私のとは違うようじゃが?」


私が飲んでるお茶は、しんさんの冷茶よりも色が濃い。


「これはねぇ、甘いお茶なんだぁ。飲むかぁ?」


友達を何人か呼んでのお茶会は初めてだけん、少しばかり疲れちまったさぁ。そんな時はこのウス茶糖の甘みがたまらん。


「ふぉっふぉっ、後でもらおうかのぅ。」


しんさんとお茶さ飲みながら、のんびり周りに目を向けると、お茶会の会場の出入り口でおときさんに何やら指示を出すナザル坊の姿が見えた。

そしておときさんが頷くと、ナザル坊は私の方へと向かって歩いて来る。


「カルディナ、日差しが強くなってきたから、会場を室内に移さないか?」


お茶会はカルディナっちの庭で開催してるんだけども、日差しが強くなってきたからか少々暑い。


「わかった。」


「主催者であるカルディナに事後承諾で悪いが、トーキンに冷たいデザートを用意してもらっている。カルディナも中に入ると良い。もちろん校長先生にも用意していますので、どうぞお入り下さい。オレは他の参加者に声をかけてきます。」


ナザル坊はそう言って一礼すると、談笑している王子様とセッちゃんとアリアちゃんの所へ歩いて行った。


「ナザル君は本当に優しい子じゃのぅ。カルちゃんの事をよく見てる。」


しんさんがナザル坊の後ろ姿を、目を細めて眺めている。


「だらぁ?ナザル坊は本当に良い男なんだぁ。私の自慢の婚約者さぁ。」


昔は私の後を泣きながらひょこひょこついてきてたナザル坊が、私の疲れに気付いて気を回してくれる。

いつの間にか人に気遣える立派な男に成長したけぇ。

あんなにちっさかったナザル坊がって思うと、時間の流れが早く感じるさぁ。


「リュカはナザル君なら多少の我儘なら受け入れてくれるとわかっていてやってるからのぅ。カルちゃんには悪いが、リュカに甘えさせてあげてやって欲しい。」


「王子様はナザル坊が大好きだらぁ?大丈夫。私もナザル坊もわかってるけ、温かく見守ってるさぁ。」


「それに、君に話しかけるとナザル君の反応がいつもより返ってくるからのぅ。それが楽しくて、カルちゃんには過剰に構うている。」


それは私もそう思ってただぁ。


「やけに王子様がナザル坊に突っかかると思ったら、王子様はナザル坊にヤキモチさ妬いてたんだぁ。納得したさぁ。」


王子様は私にわざとちょっかいを出せば、ナザル坊は王子様に構うからなぁ。


「以前……私と孫でナザル君を手放しで褒めているのをリュカに聞かれてねぇ。ナザル君の事を褒められて嬉しい反面、その時からリュカはどうもナザル君をライバル視しているみたいでのぅ。難しい年頃じゃて。」


しんさんの孫って事は、王子様のお父さんか。

私としんさんでナザル坊と王子様さ見ると、ナザル坊は顔を顰めて王子様と話をしている。

こうやって私の可愛いナザル坊と、しんさんの可愛い王子様が仲良くしている微笑ましい姿を見てると癒やされるさぁ。


「さて、私達も中に入ろうかのぅ。」


しんさんがスッと私の手を取ってエスケープさしてくれる。

王子様の曽祖父なだけあって、エスケープの動作が自然で優雅さぁ。


「そう言えば…、今度のゲートボール大会の話じゃが、主催側であるゲオルグは私達とチームとして参戦出来なくなってしまったんじゃ。」


「ゲンさんがか?」


ゲンさんは私達のチームの要だぁ。それは困った事になったなぁ。


「校長先生、カルディナ様。発言よろしいですか?」


私がしんさんと話してる時にこっちにやってきたセッちゃんが、キレイなお辞儀をして話しかけてきた。


「おぉ、セッちゃん。今日はそんなに畏まらんで欲しいのぅ。」


「しんさんや、セッちゃんはいつも礼儀正しい良い娘さんなんだぁ。セッちゃん、どうしただぁ?」


セッちゃんの私達に対する態度は、自分より目上の人に対して接するお貴族のご令嬢のソレ。

いつも貴族のマナーを守るセッちゃんが、前々王様であるしんさんに、友達感覚で話せないさぁ。

あっ?私?私は茶飲み友達だけん、しんさんとはもちろん友達として接しているんだぁ。


「どうか、ゲオルグ様の代わりに私をチームに加えて下さいませんか?」


セッちゃんがゲートボールかぁ。

しんさんをちらりと見ると、しんさんは笑って頷いた。


「セッちゃんは今日からチームメイトさぁ!」


「はい!ありがとうございます。」


嬉しいそうに笑うセッちゃんは、本当に可愛い。


室内ではうめの孫が好きだった炭酸で作った寒天のデザートを食べて、私のお茶会はつつがなく終わった。


「マックイーン嬢。ありがとう、今日は本当に楽しかった。」


王子様が私の左手を取り、指先にチュッと口付けると、満足そうに微笑んだ。


招待したお客さんを見送る私の横では、ナザル坊がブスっとした顔で王子様を見ている。


「楽しかったなら何よりさぁ!またいつでもおいでぇ?」


王子様って職業も大変って聞いた事があるさぁ。きっと王子様は毎日大変なんだろうなぁ。


「マックイーン嬢は良いね。ナザルとの婚約を解消して、オレと婚約を結び直さない?」


私の掴んだままの左手の薬指に、王子様は再度口付た。


「リュカ王子!お戯れが過ぎ……。」

「それは駄目だぁ。私の婚約者はナザル坊だけだけん。王子様とは婚約出来ないさぁ。だらぁ?」


ナザル坊の言葉を遮っちまっただぁ。

しんさんはふぉっふぉっふぉっと笑っている。


「そ、そそうです。カルディナの婚約者はオレだけですので、諦めて下さい。」


王子様の手から私の手を抜き取ったナザル坊は、私の左手の薬指を、まるで汚れを擦り落とすかのようにしてるさぁ。

その顔はとても嬉しそうで、とても可愛いんだぁ。


「リュカや、次期王としての言葉は冗談でも大きい。カルちゃんはキッパリ断ってくれたが、王子の言葉を断れる者はそうそういない。人を本気で怒らせてしまう境界線がわからない王は傲慢じゃよ?ナザル君に謝りなさい。」


王子様の言葉は、その気がなくても影響力は大きい。

迂闊な冗談も言えないのは大変だぁ。


「………ごめん。」


しゅんとした王子様も可愛くてキュンっとするさぁ。


「い、いえ。カルディナの婚約者はオレだけですから。」


ナザル坊は心が広いからなぁ。それ位の冗談で怒るような男じゃないんだ。


そうしてしんさんと王子様は帰っていった。




「今日はありがとなぁ。ナザル坊がいてくれたから、お茶会さ成功したんだぁ。」


みんな帰った後、片付けの為に1人だけ残ってくれたナザル坊の腕に頬を寄せる。

いつの間にか逞しくなったその腕は、とても頼り甲斐のある立派な男のもんだぁ。ナザル坊の成長に、感慨深い気持ちになるさぁ。


「抱き締めたい。」

「さぁ!私の部屋さ行ってお茶にするかぁ。ナザル坊専用の湯呑でお茶さ淹れるけん、呼ばれるらぁ?」


ナザル坊が何か言ってたけん、何て言ったか聞き取れなかったさぁ。

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