第二十五話 龍の過去、生徒会長になった決め手
「・・行くぞ」
夜の十一時
女子たちは龍のいる部屋に向かおうとしていた
「でも龍はこの時間帯は来てほしくないって・・・」
「そんなに来てほしくないと言ってるなら尚更行ってみたいじゃないか」
「で、でも・・・」
カチャ・・・
「・・暗いな・・・」
「・・・何してるのかな?君たち」
「!!」
「りゅ、龍!」
ドアを開けた入り口の横に俺は立っていた
階段で足音がすると思ったら・・・
「まさか俺が夜這いされるとはな・・・」
ボッ・・・
一人残らず赤くなった
・・なぜ赤くなる・・・
「・・そんなに寝れないなら、やるか?」
と言ってトランプを取り出した
「またあがり」
今のところ高良の全戦全勝
「真衣ちゃん、強ーい」
「トランプは運や駆け引きだけでなく何が次に引けるかシャッフルの計算などでわかるものだから」
・・・こいつ、頭よすぎじゃね?
「高良さん・・学年何位?」
「・・一番」
・・そうか・・・
学年は俺もだけどな・・・
「じゃ、じゃあ全国模試は?」
「・・四番」
「龍は?」
「・・・一位だけど」
・・何このシーンとした空気
嘘だと思われてる・・・
「・・・」
俺は立ち上がって全国模試の解答用紙と成績表を出した
「ほら証拠だ」
「・・・本当だ・・全問正解してる・・・」
「・・あなた天才」
こいつに言われるとなんでかムカつく・・・
「じゃあ、何で真衣ちゃんみたいに計算しないの?」
「シャッフルしてるの俺だし・・それにそうしたら楽しくないじゃん。勝ちが約束されてさ」
「じゃあ今までのは?」
「運と勘と駆け引き」
俺は結構運いいからな
超強運って言われたことあるし
「・・・あなたほんとに天才。その発想は私に無かった」
「楽しむ事?」
「そう、楽しむ事は発想に無かった。次からは計算しないでやってみる」
・・無口な高良が・・
よく喋るな・・・
「じゃあ耳塞いで目瞑ってろ」
「・・なんで?」
「見えてると無意識にでも計算しちゃうと思うから。癖ってのはそう簡単に治らないからな」
「・・なるほど。あなたほんと天才」
俺はハイハイと流しながらトランプをシャッフルした
・・目も耳も塞いでるな
「次何する?」
「さっきはブラックジャックだったっけ」
「じゃあ神経衰弱とか」
「・・知らない」
みんな、えぇ!?と驚いた顔で高良の顔を見た
そこまで驚く事じゃない
知らない奴は結構たくさんいる
そこでみんなが神経衰弱の説明をした
「・・よくわからない」
「お前らがまとめて説明しようとするからだ。誰か一人が説明しないと混乱する」
そして部長が説明をし神経衰弱を始めてから少したった
「・・・龍って生徒会長だったよな。どうやって成ったんだ?」
「どうやって、か・・・俺は特に活動もしてなかったからな・・・・まぁ、最後の演説がきっかけか・・・」
「演説・・・」
「では、次は一年の火炎龍君の演説を始めます」
「・・・えー、あー、こほん。俺は一年の火炎龍・・・」
ヴン
いきなり後ろのスクリーンにある記事が映し出された
「・・これは・・・・」
内容は俺が小学生の頃のだった
『小学生の男子が殺人を起こす
火炎龍|(8)、小学二年生が両親の事故死の翌日、人を殺しかけた。
そうさ!その男は親の死を理由に人を殺したんだ!
こんな奴を生徒会長にしてたまるか!』
・・俺は・・・
殺したのか・・・
殺してないはずだ・・・
俺は・・俺は・・・
「・・火炎!!お前はそんな奴だったのか!!」
・・函崎・・・
・・俺・・は・・・
「お前は・・そんなに弱い奴じゃ無いはずだ!!」
・・・函、崎・・・
「お前は、トラックに轢かれそうになった俺や妹を体を張って助けてくれたじゃないか!!」
「そうよ!私だって、誘拐されそうな時、いつもたすけてくれるじゃない!!」
「お前は何で・・・なんで・・・あの時の事は嘘だったのか!!」
あの・・時・・・・
「大丈夫か、お前たち」
「あ、ありがとう・・・」
「・・お前、鷹三沢高校に行くのか?」
「あ、あぁ・・・」
「そうか。それなら、俺がまた。いつでも助けてやるよ。もちろん、学校もな」
「私だって・・・」
「火炎!!」
「うるさい!!!」
その一言で生徒はいっせいに静まった
俺はマイクをどけて裸声で演説を始めた
「・・俺は確かにあの時、殺人未遂を犯し警察の世話になったことがある。
俺の両親が亡くなった後だから親が死の理由で犯したと思われてもおかしくないと思っている。
俺がそんな事をしたのは両親を二人いっぺんにいってしまい精神が乱れたからだ。
俺はその時『鬼人』と呼ばれた。
そして警察でつけられた俺の双名がついた。
知っているだろう、龍の息吹と言う名を」
その名を口に出したとたん
生徒や先生たちがざわめいた
知ってる奴はたくさんいるようだ
「だが俺はもうそのようにはならない!と言いたいがそれは嘘になる」
『そうだ!!お前は鬼人としてしか生きられない!!お前は―――――』
「だまれ!!!!」
俺は今まで出した事無いような大声を出した
と同時にステージを降りマイクでいろいろと言っていた奴のところに向かって走った
「お前にわかるか!親をいっぺんに亡くした気持ちを!絶望感を!お前にわかるかぁ!!」
バキィッ!!
俺はそいつの顔面を潰す思いで殴った
「ぐっ・・・い、今!見たろ!今こいつは生徒を殴った!これでお前は・・・」
「この鷹三沢高校の生徒でもない奴が威張るな!野乃原学園、三年生、洞内巳哲!!」
また体育館中がざわめいた
洞内はこのあたりじゃ有名な不良で警察でも手を焼いている
「な、何で俺のことを・・・」
「警視庁特務調査隊、隊長、火炎龍。いままでの報いだ。洞内、お前を傷害罪、窃盗罪、そして侮辱罪で逮捕する」
「・・く、くそ・・・」
さらにざわめきが大きくなった
俺は手錠をかけた洞代を引っ掴みステージにあげた
「・・こいつの事はとりあえず放って置いてだ。この学校はよく他校の生徒がケンカを売りに来ていたと言う。だからもし俺が生徒会長になったら、この学校を護る!他校の生徒から殴り込みが来ても俺が返り討ちにしてやる!自宅謹慎になろうと停学になろうと、退学になろうとだ!!俺が高校生である限り!この学校を!生徒を!必ず護ってやる!!警察として、生徒会長として、生徒として・・人として!!・・・俺について来い!!」
「って訳があって俺を嫌ってた奴らがなぜか票を入れてくれて生徒会長になった」
「なるほどな・・・」
「ちょっと待って。今の会話で警視庁の名前が出てきたけど・・・その時に警察だって暴露しちゃってたの!?」
「・・・あぁ・・そうだけど・・?」
それがどうかしたのか・・・?
「じゃあみんなあんたが警察だって知ってるの!?」
「多分ほとんどの人が忘れてるだろうけど、そうだね」
「・・・・・へぇ・・・」
・・なんだろう・・・
このもういいわ、みたいな空気・・・
「・・・それより龍」
「何?」
「さっき警視庁と言っていたがお前は警察庁じゃなかったのか?」
・・・それは確かに疑問だよな
いつも警察庁と言ってるのに
「俺は二つの庁の所属してるんだ。警視庁では調査隊として人を調べたりしている。警察庁では攻撃隊として犯人を追うんだ」
「なるほど、龍にとっては二つで一つなんだな」
「そういう事」
そんなこんなでもう十二時半になった
「・・もう、一時間半か・・お前ら、もうお開きだ。部屋もどれ。そして夜這いもしに来るな」
「夜這いなんかしない!」
「どっちでもいい。ほら、さっさと帰れ」
と言って追い返した
危なかった・・・
「・・ふぅ・・・寝よう・・・」
それからまた三十分後
「やっぱりやめようよ」
「今度こそ寝てるって」
「また起きてたらどうすんの?」
「大丈夫、あけるよ」
カチャ・・・
「・・・やっぱり暗いな・・・」
「クゥ・・・」
「・・ほら、寝てる」
「寝顔、見てみてみるわね」
「・・・・・そぉ~っとだからね」
そぉ~っと・・・
「・・うわっ!」
「ど、どうしたの?」
「ん・・んー・・・」
「お、起きちゃったじゃん!」
またか・・・
「あなたたち・・いい加減にしてよね・・・こっちはもう眠いんだから・・・」
「・・・あ、あれ・・?」
第二十五話 終