第二十六話 夜の姿、料理の評価
「りゅ、龍の部屋・・だよね・・・」
「・・・お姉さん・・ですか?」
・・・そうだな・・・
そう思ってもしかたない
「私が、火炎龍よ」
「・・え・・えぇーーーーーーー!!」
「嘘だ!龍は・・もっと男らしい声で喋ってる!」
「髪も短かいし!」
「胸だって無い!」
・・・いろいろ俺のことをよく知っておいでで
「でも、私がそうなの。パジャマだって」
といいながら電気をつけた
「ほ、本当だ・・・」
「でも・・なんで・・?」
「わけを話すわ。このままじゃあなたたちが混乱するから・・・」
それは十二年ほど前から私の母さんは科学者である薬の研究をしてた
その薬は性別転換薬
その研究を何故していたかは知らない
でもそれをずっと研究していた
そしてある日、その薬をうちに持って帰ってきて研究の続きをしたの
その時・・・
「お母さん。これ何?飲んでもいい物?」
「あ、だめ!それは飲んじゃだめ!!」
その時はもう遅くて薬を半分くらい飲んでしまったあとだった
でも効果は現れなかった
だから母さんは違う方法で研究をすると言ってそれを違うビンに入れて新しく研究を始めた
そしてその夜、十一時・・・
「お・・おい・・・龍・・・」
「あ、あなた・・・お、女の子に・・・」
「・・なんで・・・?」
それでわかった
あれは本当に飲んでしまってはいけないものだったって
それから五年くらい経って
知り合いの科学者にその薬を調べてもらった
その結果を知って私は抗薬のカプセルを作ってもらってそれを夜に飲んでたの
「それでさっきあなたたちが部屋に入る前にその効果が切れて今女子の姿をしてるって事」
「へ、へぇ・・・」
「修学旅行のときとかどうしてたの?」
「もちろん抗薬のカプセルを飲んでたわ。でもあの時はまだ昼の私と夜の私とが区別つかないくらいだったから意外と大丈夫だったの」
「す、すごい・・・」
やっぱり定期的に飲んでたけど
「部屋には普段誰も来ないから飲まないけどね」
「・・・わかいい・・・」
「え・・・」
「これって理想図よね」
「うん。スタイルもいいし瞳が綺麗。髪もさらさらで肌すべすべ」
な、なんかぺたぺた触ってくる・・・
「・・やっぱりこういう時っていやらしい事考えるの?」
「ううん、考えない。外見、声、感覚は女子だから」
普段も考えないけど
これから先もあるかどうか・・・
「・・ところでこうなってるのってどれくらいまで?」
「朝三時あたりかな」
「そうなんだ・・・」
・・もうそろそろ寝ないと・・・
限界・・・
「ね、ねぇ。そろそろ帰ってくれない?もう限界で・・眠い・・・」
「・・そうだな。女の龍を見るのも終わりだ」
「・・もうちょっといたいな・・・」
「私は・・もう寝たい」
限界過ぎて視界がぼやける・・・
「・・ここで・・」
「寝ないでよ・・・」
「・・・・・・・・・」
「ほらふてくされてないで・・何かしてほしいことでもあるの?」
「・・・じゃあキスとか・・・」
きす・・・
キスねぇ・・・
「それすれば帰る?」
京都はしずかに頷いた
「・・わかったわ」
チュッ・・・
「・・これでいいかしら?じゃ、おやすみ」
バタン
「・・・・ど、どうだった!?」
「・・・・キスって・・いいわぁ・・・」
「お、お姉ちゃんの笑顔がコワイ・・・」
翌朝
「おぉ、起きたか」
「おはよう。いいにおい・・・」
「今日は和風にアジのヒラキだ」
俺の好きなものの一つである
魚は好きだ
「とりあえず、出来たぜ。アジのヒラキ定食だ」
「おいしそう!」
「いただきます!」
元気だなぁ・・・
「・・・じゃ、俺は行くとするか」
「・・もう行くの?ご飯は?」
「食った。これから会議だ」
「・・・警察庁?」
俺の職場は一つだけになってしまった・・・
まだあるだろうが・・・
「学校だ。ヒントは十月初日」
「十月初日・・・」
「・・運動会」
「あぁ!運動会か!」
「そうだ。じゃ、先行ってるからな。遅れないようにしろよ」
学校にて
朝九時
「すいません、会長。遅れました」
「いや、大丈夫。それより運動会の実行委員長は五人か?」
「はい。そうです」
「了解。じゃあ最初の議題だ。運動会に何をするか、だ」
放課後
家庭科部室
「・・瑠奈は新入部員でいるのか?」
「そ」
いつの間に入ったんだ・・・
「・・・それは?」
「あぁ、家庭科部に必要不可欠なもの。料理に必要な食材や調味料、そして裁縫に必要な布や糸、針などなど・・うちから持ってきたんだ」
「いらないんですか?」
「食材や調味料は入手できるし裁縫は買えばそろう。それに今一番それらが必要なのはお前ら家庭科部だろ?」
それに食材も調味料も裁縫道具も余分に持ってる
むしろ売るほどあるかも
「ありがとうございます」
「いやいや。さて、部長。今回の部活は何するんだ?」
「え・・っと・・・じゃあもうすぐお月見という事で月見団子なんて・・・」
なるほどな
月見団子か・・・
でも・・・
「難しくないか?」
「大丈夫です。龍さんなら知ってるはずですから」
俺は料理のレシピ帳かよ・・・
「まぁ、知ってるけど・・・ここにはその材料が無いんだ」
「そう、ですか・・・じゃあ・・・・何が作れますか?」
「そうだな・・・俺が今持ってきたのだと・・・・ハンバーグ、シチュー、カレー、コロッケ、唐揚げ、カツ丼、チャーハンなど・・・・・・とかかな」
「・・じゃあ今日はチャーハンにします」
チャーハンか
よし、なら・・・
「必要なのは塩コショウ、油、白米、卵、野菜、チャーシュー・・かなとりあえず。準備にかかれ!」
「はい!」
部員たちは食材をかき集めた
「次は・・・オタマとフライパンだな。全部とったら各自好きなように調理しろ」
「はい!」
各自調理を始めて少し時間がたった
俺は顧問代理としてみんなの調理を見て回っている
「・・・京都、それはもう少し塩コショウをして味付けたほうがいい」
「う、うん。あ、ありがとう・・・」
・・顔が赤い・・・
大丈夫か・・・?
調理を始めてから約十分後
近づいてくる何かに気付いた
「・・・・・・」
誰か来るな
うちの生徒じゃねぇ・・・
・・・行くか
「俺はちょっと席をはずす。出来上がったら皿に移して試食会だ。いいな!手はなるべく動かし続けろ。チャーハンはこげやすいからな」
「はい」
校門前
帰宅部が帰る中、違う学園の生徒が数人紛れ込んでこちらに向かってきている
「・・お前ら、この学校に何か用か」
「あぁ、用だな。あるぞ、鷲見翼って女にな」
翼に?
何だ・・・?
ケンカの事でか・・・?
「用なら俺が承る。何だ」
「じゃあここに来るよう頼んでよ」
「何をするんだ」
「何って知ってるだろ?恨みがあるんだよ」
恨みか・・・
やはりケンカの事か
「それなら無理だ。我が校の生徒を危険にさらすわけにはいかねぇ!」
「・・くっはっはっはっはっは・・・我が校の生徒だってよ。何様だよこいつ」
「俺はこの学校の生徒会長だ」
「それなら大人しく校内で書類でもまとめてなぁ!」
喋り終わると同時に殴りかかってきた
が、俺はそれをあっさり受け止めた
「お前らこそ大人しく学校に戻りな。そうしたら許してやろう」
「うるせぇ!」
バシン!
またも受け止めた
が
「両手ふさがったなぁ!」
「腹ががら空きだ!」
とけりを入れてこようとした
「食らえ!」
バシッ!
見事命中だ
見方にな
「あ・・・何!?」
「時間切れだ」
「時間切れだぁ!?それがどうした」
「高速の連打打ち、機関銃拳!」
ドガガガガガガガガガガガガガガガガ・・・・・・
「帰りな」
「ゴフッ・・あ゛い・・・ごべんなざい・・・」
「ボス・・・今思い出じましだ。あいづは龍殺しでずよ・・・」
「・・どうりで・・だ」
・・また呼ばれ方が増えた・・・
火炎龍、龍の息吹、寝起き、黄眼の龍、追う者、そして龍殺しか・・・
六名、か・・・
俺は・・・もう、鬼人を超えちまったか・・・
「よぅ、出来たか?」
「あ、うん・・・どうしたの?それ」
「まるで返り血を浴びた様だが・・・」
「あぁ、うん。浴びた」
さっきの奴らを連打撃してたら浴びたようだな
今度からはなるべく気をつけないと・・・
「どうして浴びたんだ?」
「さっき翼に用があるとか言うチンピラ共がいたからな。俺が返り討ちにしてやった」
「私に用があったなら連れて来ればよかったじゃないか」
「・・我が校の生徒を危険な目にはあわせられないよ。個の人として」
俺は演説で誓った
この校の生徒は絶対に傷つけさせない、と
「・・・あ、ありがとう」
「でも次からは制服を脱いでからしてね」
「わかってるよ。で、出来たんだろ?試食はしたか?」
「したけど・・・」
けど・・・?
何だ・・?
「何かあったのか?」
「いや、私たちには何がなんだかわからず・・・おいしいとしか言えない・・・」
「・・それで俺に指摘してほしいとそういう事か」
みんな素早く頷いた
「わかったわかった・・俺はそれぞれ料理をS~Fの段階で評価する。もちろんまずいと思ったらFだ・・じゃあ誰から試食するか?」
「じゃあまず私のから」
最初にそう言ったのは瑠奈だった
「・・・・・」
匂いはいいし見た目もいい
うまそうだ
「いただきます」
といって一口食べた
「・・・B++だ。うまいけどもう少しコショウを足して、米の水分を弾きパラパラにするべきだった」
「うぅ・・ズバッと言うから少し傷つく・・・」
「ズバッと言わなきゃ指摘にならんだろ」
傷つくあたり少し自覚してるのか・・?
でも瑠奈にしちゃちゃんと卵は米に絡まってる
「・・うん、上出来だ。よく出来たな」
「・・あ、ありがとう・・・」
「次は誰だ?」
静かに高良が前に出た
そして俺の前に自作のチャーハンをおいた
「・・おまえ、料理は?」
「・・あまり得意じゃない」
・・それにしては米と具が見栄えよく混ざってる
そして匂いだって香ばしい・・・
「いただきます」
「・・どう?」
「うん、Aだ!得意じゃないとは思えないな」
「ほんと?」
高良はパァっとした顔でこちらを見ている
「あぁ、だがちょっと具の味が濃いな、野菜やチャーシューが出しゃばり過ぎている。もう少し抑えれば・・・」
「わかったの」
よし、と頷いた
次、と聞く前に京都が名乗り出た
「お前は料理、どうだ?」
「よくするけど、チャーハンを作るのは初めて」
・・確かに初めてのようだな
少し焦げたような匂いがする
「・・いただきます」
「・・・・どう、かな・・・」
「・・・A-だ。これは結構バランスがいいな。米のこげた味を卵と具がうまくカバーしてる。焦がさないようにすれば完璧だ」
「・・よかったぁ・・・」
初めてだと言ってたし自信が無かったのか
しかしみんなうまいな
「次は私だ。自分で言うのもなんだが料理は自信がある」
自信たっぷりか・・・
どれほどの物かな?
「いただきます」
・・・これは・・・
むずかしいな・・・
「どうだ?」
「・・・B+。ちゃんと米がパラパラになっている上に卵で黄金米になってるのはいいが、おしいな。具に油を使い過ぎて少しバランスが崩れている」
「・・本当にズバッとくるな・・・」
「だが黄金米が出来ている事が驚きだ」
俺でも得とくするのに三、四年かかったってのに・・・
「そ、そうか。・・まぁな!」
立ち直りがはやいな・・・
びっくりだぜ・・・
「さて、ラストは、部長だ」
「わ、私、あんまり自信無いです・・・」
「いいから」
俺は手を伸ばした
部長はその手にチャーハンを乗せた
・・見た目も匂いも最高だ
食欲をそそるような料理だ
「いただきます・・・・」
「・・・・あ、あの・・・」
「うん!S+だ!米と具のバランスは取れてるし塩コショウも絶妙!さすがは部長だ!」
部長は顔を赤くしている
はずかしいのだろうか
評価しているだけだが・・・
「でも普通に評価をすれば部長以外もみんなもう少し評価は高いんだ。それがなんで落ちたと思う?」
質問するように聞いた
しかしみんな首を振り分からないと言った
「・・調理する時、みんなどんな表情をしてた?」
みんな首を傾げている
気付いてないようだ
「部長以外のみんなは顔が強張っていた、まるで競争するようにな。でも、部長は違った。こいつは料理を楽しんでいたんだ。俺の評価で一番重要視してるのは料理を楽しむ事だ。前に言ったろ、料理は楽しくする事が一番なんだ」
第二十六話 終




