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空気を読まなかった男と不良未満少女の、ひとつ屋根の上交流日記  作者: 未紗 夜村
第九章 もっと繋がったり、もっともっと繋がったり。
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五月二日(火・7)。知らず弛緩してゆく、空気。そしてそれは、もっと――。

 本来お一人様用であるホットプレートは、一ターンで焼ける量がかなり制限されている。いくら女の子が過半数を占めている状況とはいえ、皆が本来のペースでお腹を満たしていくのはちょっとばかし無理があった。


 けれど、俺達は暇を持て余すことなくほぼずっとお口を動かし続けることができていた。香ばしく焼けた肉や野菜を、平素よりゆったりとした動きで咀嚼したり。それをこくんと飲み下した後は、次の分が焼けるまでの間、自分と同じく口元が暇になった相手と軽くお喋りに興じたり。あとは、女の子同士が戯れで『はい、あーん』ってお刺身を食べさせあったり、俺が唇に挟んだラムを詩乃梨さんが口で受け取ってあぐあぐと食べてくれたり。


 さらに途中からは、詩乃梨さんが炊けたご飯をよそってくれたり、香耶が酢飯をこしらえてくれたり、佐久夜がミックスジュースをこさえたりして、食卓がより一層リッチで華やかなものへとグレードアップ。食べて、飲んで、ダベって、笑って。そうして、やがてあれだけあった食い物を粗方胃に収め終えた頃には、皆があごと頬の疲労に見舞われて思わず苦笑いしていた。


 一様にだらけた座り方でお腹を撫でさすってる女の子達を見やりつつ、俺は残りの肉と野菜をいっぺんにじゅーじゅーと焼きながら声を放る。


「みんなー、今日はもうお腹いっぱい食べたかなー?」


『たべましたー!!』


 異口同音に返事をしてきた娘っこ達は、一瞬きょとんとした表情で違いに顔を見合わせてから、まるで箸を転がすような(※鈴を転がすようなではない)ケタケタ笑いを漏らした。人懐っこい佐久夜はともかく、他人に対して警戒心の強い詩乃梨さんや香耶までもが心の底から可笑しそうに笑い声を上げているっていうのは、なんとも言えない感慨のようなものがあって、思わず俺までぷふりと吹き出してしまう。


 俺は軽くのどを痙攣させながら、飲みかけの缶ビールも処理してしまおうとして、残りをぐいっと一気に煽った。


 俺が最初に三分の一くらい飲んだ後は、みんなが時々舐める程度に回し飲みしてた、しあわせの魔法が多重がけされてるそれ。本来ならば、苦くてぬるくてとても飲む気になれないはずなのに、俺はあまりの美味さに思わずごくごくとのどを鳴らして五臓六腑へ染み渡らせた。


 酒が美味いなんて感じたのは、生まれてこの方、初めてのことかもしれない。


「………………っぷはぁ~ッ!」


 なんとなくCM風味を気取りながら豪快に息を吐いてみたら、愉快に笑ってたはずの詩乃梨さんがくしゃりと鼻へしわを寄せて不機嫌そうに唸った。


「こたろー、くさい!」


「待って、その言い方だと俺の体臭が臭い感じになっちゃうから、ちゃんと『お酒が臭い』って言ってくれる?」


「やだ! くさい! こたろー、くさい!」


「あらまぁー、そういうこと言っちゃうのねー? 言うこと聞かない悪い子には、うっかりおしおきしちゃうぞ-?」


「……………………く、くさい、こたろー、くさい、くさいくさい、ちょーくさい」


 詩乃梨さんは、被ってるフードを手で引っ張って顔を隠しながら、隠しきれないわくわくの滲む童女染みた声音で『くさい』連発。あらあらまあまあ、この娘ったら俺におしおきされたくて仕方ないらしいですわよ、おっほっほ!


 俺は佐久夜に箸を渡すことでじゅーじゅー言ってるホットプレートの世話をも託してから、一口分も残っていない缶ビールの残りを一滴残らず口内へ含み、空き缶の代わりに詩乃梨さんの肩をがっちりと捕獲して顔を寄せた。


「ひのりふぁん、ほっひふいへ」


「………………なに言ってるか、わかんないもん……」


「うほらー。ほれ、うほらー」


「…………………………嘘じゃないもん」


 ほらぁ、やっぱ嘘やんけ。俺がこっち向いてーってお願いしてるのばっちりわかってるくせして、詩乃梨さんは俯いたままのお顔を上げてくれません。こっち向いた瞬間に口移しで酒を飲まされることがわかりきってるから、俺の方を見てくれませぬ。


 うーん。にんにくと同じで、『詩乃梨さんも一緒にお酒飲めば臭くないよね!』と思ったんだけど、これ駄目? それ以前に、やっぱ未成年に強制飲酒させるのは駄目かしら? でも正直、俺の口の中のこれ、そろそろアルコールよりも俺の唾液成分の方が濃くなってきてるんだけど、それでも駄目かね?



 もう駄目でもなんでもいいから、とりあえず詩乃梨さんのナカを俺の体液でいっぱいにしたい。



「…………………………む?」


 あれ、なんか俺、ちょっと酔ってる? 今の体液のニュアンス、唾液じゃ無くてせー○きだったよね? いや、わりと素面の時でもそういうえろい話自体はしてたけど、今は話だけに留まらず『この場ですぐに詩乃梨さん押し倒してもいっかなー』とか考えた気がする。


 むぅ。いくらそんなに量が無かったとはいえ、やはり酒の一気飲みはまずかったか……。一旦酒が抜けるまで、迂闊なことはしないで大人しくしてた方がいいかもしれない。


 なら……、メシの残りは佐久夜がはぐはぐと消化してくれてることだし、しばらくは『アレ』でみんなにまったりしててもらおうかな?


「ごっくん」


「……………………あっ……。こたろー、飲んじゃったの……?」


 完全に無意識でうっかり口の中の液体を嚥下したら、詩乃梨さんがこの世の終わりみたいな悲壮なお顔を向けてきました。どうやら彼女、俺が口の中で熟成させてた液体を熱烈に所望していらっしゃった模様。ごめんねしのりん、後で違う液体を下のお口にたらふく飲ませてあげるから許してね。


 俺はフードに覆われた詩乃梨さんの頭にそっとキスをして、あやすように背中もぽんぽんと叩いてあげてから、すっくと立ち上がった。


 俺の動きを追従して見上げてきた三人娘に、俺は二度目となる台詞をちょいアレンジして放り投げる。


「みんな、お腹はほんとにもういっぱいかな~?」


 なんでわざわざ何度も確認してくるのかわからなかったのか、皆きょとんとしたお顔になっちゃいました。


 若干この世の終焉の名残を引きずってる詩乃梨さんと、疑問を口にするより肉を口に入れることを優先した佐久夜に代わり、香耶が無垢なくりくりお目々を向けてきながら訊ねてくる。


「……もし『まだお腹いっぱいじゃないです』って言ったら、どうなるんですか? …………まさか、『俺の肉棒とミルクでお前達のナカをいっぱいにしてやるぜ』みたいなことを――」


「言いません、なんでお前そんな無垢な瞳のままで唐突にバズーカ砲撃ってきてんの? ……………………え、ちょっと、ここそんなはにかんだ笑顔見せる所じゃないからね? もっと悪びれろ? そしてもっと慎み持って?」


 アカン、これ香耶も軽く酔っぱらっとる。アルコールじゃなくて空気にだけど。この子をクールダウンさせるためにも、尚更アレを持ってこねばなるまいて!


 てなわけで。俺はみんなに軽く手を振って『てきとーにおしゃべりしててちょ』とジェスチャーし、一旦その場を離れて冷蔵庫へと向かった。


 開け放つは冷凍室。漏れ出てきた冷気が、酒と肉と女によって我知らず火照っていた顔をひんやりと撫でてくれて気持ち良い。酒と肉と女、酒池肉林とはこのことだな、ぐぇっへっへ。


 とかアホなこと考えてたら、詩乃梨さんがガールズトークの傍らでこちらにジト眼を向けてきた。一瞬俺の下卑た思考が読まれたかと思ってヒヤリとしたけど、あの眼はたぶん『いつまでも冷蔵庫開けっ放しにしてんじゃねぇ、電気代もったいねぇだろうが』だね、きっと。


 仕方無いので、俺は冷凍室で涼むことはやめて、その代わりみっちり冷気が蓄えられてる小さな箱を二つほど取り出した。氷の小部屋を後ろ足で封印し直して、ゲットしたアイテムを両腕で抱き締めるように抱えて皆の下へと舞い戻る。


「カップのやつもあるけど、食い過ぎで腹壊してもなんだから、まずこれだけな」


 適当に台詞を放りながら元の位置へ腰を下ろした俺は、箱を覆っていた透明なフィルムをぺりぺり剥いき、蓋をぱかっと開けてこたつの上の空いてるスペースに置いた。それに合わせて、おしゃべりしてた少女達の意識が俺の献上品へと移る。


「……あいす?」


 誰が口にしたかわからない疑問符混じりの言葉に、俺はうむと深く首肯した。


 チョコレートでコーティングされた、一口サイズのバニラアイス、六個入り。それが二箱だ。つまり計十二個だから、一人あたり三個だな。

 

 俺は詩乃梨さんのケモミミをぺふぺふと撫でながら、ぼけーっとアイスに見入ってる香耶と佐久夜に笑いかけた。


「これが、俺からの『ごめんなさい』と『ありがとう』だ。……で、わかるか?」


 ちょっと時間が空いてしまったから、何のことかわかってもらえないかもと少し心配ではあったけど、女の子達はみんな得心の笑顔を見せてくれた。


「琥太郎さん、律儀ですね。……やっぱり、悪い人にカモられそうな気配がひしひしと……」


「あー、こたちーってそんな感じするよねぇ。しのちーもしのちーであほみたいに良い子やし、これが似たもの夫婦ってやつなんかねぇ」


「む。さくやごときにあほとか言われて、わたしはとっても傷つきました。さくやの分のは、かやが食べちゃっていいよー」


 詩乃梨さんの無慈悲なる宣告に、香耶はまばゆい笑顔で元気に頷き、佐久夜はアイスそっちのけで「ご、ごとき……?」と若干本気の気配が滲む悲壮な呟きを漏らした。


 驟雨に打たれる仔犬状態になってしまった佐久夜を見て、詩乃梨さんは若干どころではないくらいに本気で大慌て。アイスを指で直に摘まみ上げた詩乃梨さんは、俺をぐいっと押し退けて精一杯身を乗り出し、しょんぼりしてる佐久夜の口へ指ごとアイスをダンクシュートした。


 詩乃梨さんの唐突なアクションに一同が眼をぱちくりしてたけど、やがて佐久夜が溶けゆくアイスみたいににま~っと顔をほころばせ、詩乃梨さんの指を口内全体でぺろちゅぱと舐り出す。


「んひひっ。しのちーってば、うちのこと大好きよねぇ♪ らぶを感じるよ、ラァヴをっ!」


「は? ちょーし乗りすぎ。わたしが愛してるのは、こたろーだけ。さくやのことなんか、べつに……だから、その……。………………………………ゆび、やめて、くすぐったい……。舌、引っこ抜くよ?」


「ひよぇえッ!?」


 有言実行、佐久夜の舌を軽く摘まんだ詩乃梨さんは、それをちょっとだけ揺すって佐久夜の顔を戦慄に染め上げた。俺は香耶と互いに苦笑いを浮かべて、『こいつら、何やってんだかな』『まったくです』と声も無く会話を交わす。


 佐久夜にしろ詩乃梨さんにしろ、さっきの『あほ』や『ごとき』発言はただのノリみたいなものだ。普通の人なら、いちいち気にしないで流してる場面だろう。そこをきちんと気にしたり気にされたりできるっていうのは、お互いのことをどうでもよくない、対等な友人として見ているからなのかな。


 もしこれが俺と俺の友人達であったなら、俺は誰もこきおろさないけど、誰かが俺をこきおろしてみんなはそのままスルー、っていう展開しか待ち受けてない気がするなぁー……。嗚呼、唐突にねがてぃぶ……。


「………………ん?」


 ふと意識を現世に戻してみれば、俺ほどではないにせよネガティブ入っちゃってる顔色の香耶が、禁断の愛に片足突っ込みかけてる佐久夜と詩乃梨さんをじっと眺めていた。


 ネガティブ。より詳細に語るなら、嫉妬や羨望、憧憬の類か。詩乃梨さんを愛している香耶にとって、いつまでも詩乃梨×佐久夜(いや、逆か?)の百合百合イチャコラを見せつけられるなんつーのはちょっとした拷問だろう。


 俺は、ネガティブ仲間のよしみってことで、詩乃梨さんの背中の上から身を乗り出す形で香耶へアプローチを仕掛けた。


「ほれ、香耶。あーん」


 付属のスティックでぷすりと刺したアイスを、香耶に向かって差し出す。


 そしたら、香耶ではなく佐久夜と詩乃梨さんがびっくんと劇的に反応。でも二人は俺に何か言うでもなく、指を舐めたり舐められたりしながら待機モード。


 皆の顔を見回してから、香耶はこっちに顔を寄せてくるどころかすすーっと身を引きながら眉を顰めた。


「……なんのつもり、ですか?」


「『はい、あーん』のつもり」


「……………。いえ、それはわかってるんですけど、なんでいきなり?」


「あーん、ほれ、あーんって。あーんってしてみ?」


「……………………。いえ、ですから、あの、なんでいきなり、そんな、あーんって、それ、私、べつに、やるの、なんで――」


「やってくれないなら指で無理矢理食わせるぞ」


 にこにこ笑顔で脅迫してみたら、香耶はおろおろあたふたから一転してむぐっと息を詰まらせた。


 香耶は再度、佐久夜を見て、詩乃梨さんを見て、そして俺――のことは見ずに、串刺しにされたアイスのみを頑なに見据える。


 そして香耶は、止めていた呼吸を脱力の溜息へと変え、不承不承、嫌っそーに、顔だけを突き出してきてアイスにぱくりとかぶり付いた。


 その場で咀嚼することはぜず、香耶は元の場所へ戻って背筋を伸ばし、もぐ……もぐ……と殊更緩慢な仕草であごを動かす。


 やがて、こくんとのどを鳴らした香耶は、ちょっとだけしあわせそうな表情で小さく息をはいた。


「……美味しい……」


 その感想はきっと、彼女の心から無意識にぽろりとまろび出たものだったに違いない。だって香耶ちゃんってば、自分が何言ったかとかどんなお顔してるのかとかまったく気付いてない様子で、物欲しげに次のアイスを眺めてるんだもん。


 予想以上に喜んでもらえたことですっかりテンション上がっちゃって、俺は迷うことなく香耶の視線の先のブツをぷすりと突き刺し、また香耶の方へ差し出した。


「はい、あ――」


「調子に乗らないでください」


 平板なアクセント、且つ早口で一喝されてしまった。しょぼーん……。


 行き場を失ったアイスと気持ちをどうすればいいかと悩む俺に、香耶は重ねて「調子に、乗らないでください」と厳命しながら、流れるような自然な動作で眼前のアイスをぱくりとくわえた。


 かっ攫っていったそれをもごもごやる香耶は、背筋はぴんと伸ばしてるのに、首はがっくんと前に倒してて、長すぎる前髪のせいで表情の大半が見えなくなっちゃってる。でも俺の心眼には彼女の顔がばっちり映ってて、香耶ちゃんは今、とってもとっても恥ずかしそうに顔中真っ赤っかになっていらっしゃいます。


 その見えないはずの表情に、思わず見とれてしまう俺。


 そんな俺の表情を、詩乃梨さんは後頭部に眼がついてるみたいに完璧に見抜いた。


「こたろー、でれでれしすぎ」


 ちょっとふて腐れたように言い放った詩乃梨さんは、佐久夜の口から指を引っこ抜くと、俺のあぐらの上にうつぶせ状態でぽすんと完全に乗っかった。


 おっぱい!


 香耶へのでれでれが、一瞬にして詩乃梨さんへのむらむらに上書きされてしまったぜよ。すげぇなおっぱい。ところでこれおっぱいでいいのかな、詩乃梨さんの背中側しか見えないからこれがパジャマのたるみなのかノーブラおっぱいなのかいまいち判断しかねる。


 ……手突っ込んでまさぐっていいかな? 詩乃梨さんったら足をぱったんぱったん上げ下げしてすっかりビーチリゾートでくつろいでるような風情だから、ここはきっとオイルを塗るような手付きで背中もお胸も舐るようにペッティングして差し上げるのがよいのではないでしょうか。


 む。チョモランマ。


「………………こたろ――」


「何も言わんといて」


「………………あーい♪」


 ちょっと前のふて腐れなんぞどこへやら、詩乃梨さんは上機嫌にむふふと笑いながら足をリズミカルにぱったんぱったん。だからさーしのりんさー、ナニで俺のメンタル測るのちょっとやめてよぉー、もっと慎み持ってつつしみー。


 なんか俺、今日はこの三人娘全員に同じようなこと言ってんな……。みんな、もっと慎み持とうよ、ね? ここに男子が一人いるのよ? 俺の性別忘れないであげて?


 まあいいや。


「しのりん、あーん」


「あーん」


 俺はスティックではなく指でまたアイスを一個掴み、詩乃梨さんの口のあたりへ持って行った。詩乃梨さんは迷うことなく俺の指ごとぱっくんちょして、ごきげんに頭をゆ~らゆ~ら揺らしながら、ついでにケモミミもぴこぴこ揺らしながら、もぐもぐ、もぐもぐ。


 俺は、空いている方の手で詩乃梨さんの背中を優しく撫でた。詩乃梨さんはくすぐったそうに身じろぎしたけど、決して俺から逃げようとはせず、頭をゆ~らゆ~ら、足をぱったんぱったん。


 詩乃梨さんは、こくんとのどを鳴らすと、鼻から大きく息をはきながら五体を脱力させて蕩けた。


「はぁぁぁぁぁぁ~…………」


「極楽かい?」


「………………ん。ごくらく。………………こたろー、愛してる」


「おお、素直……。俺も詩乃梨さんのこと、愛してるよ」


「ん。知ってる。…………へへ、ふへへ、ふゅへっへっひぇっひぇ……♡」


 詩乃梨さんの笑い声があまりにも蕩けすぎてて面白くて、俺もついつい似たような笑い声をあげた。


 あー、やべぇ。詩乃梨さんヤベェ。ハマる、詩乃梨さんにどんどんハマってく俺がいる。これ、あれだな。とりあえず、あれだよ。




 セッ○スしたい。




 どうしよ、性欲が急激に臨界点突破しちゃったぞ。でもこのまったりとしたしあわせをずっと堪能していたい気もする。さぁーってどうしよっかなー。


「………………………………」


 ふと気になって、佐久夜と香耶の様子をちらりと窺ってみた。


 佐久夜は、アイスを自分で取ってちびちび囓りながら、なんか寝ぼけてるようなぽーっとした顔で詩乃梨さんと俺を眺めてる。なんだろこの顔。腹一杯食ったら眠くなってきちゃったとかだろうか?


 香耶は香耶で、ここではないどこかへ意識が行ってるような顔で、佐久夜と同じく俺と詩乃梨さんを見つめてる。なんだ、お前もおねむなのか? 添い寝してやろうか? 詩乃梨さんと一戦交えた後になるけど。


 うーん。一戦、どうしよう。佐久夜も香耶も眠そうだし、それに詩乃梨さんも、リラックスしすぎたせいか警戒心ゼロの家猫みたいなだらしないあくびかいてるし。みんなして眠そうにしてるもんだから、なんか俺までちょっと眠くなってきた気する。


 いや、このまま寝たらまずい。だって後片付けしないと。換気扇回してあるとはいえ、匂いの元を放置してたら流石にまずかろう。それに時間経つと油固まっちゃうし。


「……………………なあ……」


 そろそろ後片付けしようか、と呼びかけようとして――結局、やめた。


 緩慢な仕草で胡乱な目つきを向けてきた佐久夜と香耶には、なんでもない、と首を振って見せて。ぴくんとケモミミを上げてきた詩乃梨さんにも、何も言わずに優しく頭を撫でて上げて、再びリラックスの海へ鎮めて差し上げた。


 俺は、本日のノクターン突入を断念した代わりに、みんなとのたわいない会話をのんべんだらりと愉しむことにしたのだった。

 最終回近いかも? かもだからまだわかんないけど。そしてノクターン突入断念したと言ったが、それは○だ。

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