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3−2.狂犬JKちゃん、暴走駄犬と戦う

「戻ったわよ。門を開けてちょうだい」


グリムソルガに帰還すると、相変わらず大勢の出迎え。


そういうのは要らないんだけどなぁ。


ま、いいけど。


とりあえず疲れたし、いったん休みたい所ね…。


司祭エストと聖女ライナから逃れて2日。


ほとんど止まらずに帰還したので、カルシャもビーストたちもかなりの疲弊具合だった。


元気なのは乗り物酔いしなかったエイリちゃんだけである。


そんなカルシャたちの前に、グレインが進み出て跪く。


「ご無事でのご帰還、何よりです、カルシャ様」


今回の出迎えはグレインのようだ。


「皆は御所?」


「いえ、今は中央広場に」


訓練か何かだろうか。


御旗を旗持ちに預け、世話係が鎧を外してくれる。


ケイオスビーストたちはここから別行動。


彼等の居住区に戻らせる。


とりあえず司祭と聖女については伝えておかないと。


「御所に集めて。最低限の情報共有だけするわ」


「御意」


グレインが幹部クラスに伝令を飛ばす。


グレインの指揮も様になってきた。


鎧も外して身軽になったので、大きく伸びをする。


本当に疲れた。


早く休みたい。


「さっさと済ませるわよ」


これが良くなかった。


一人先行する形になって、足早に御所に向かい扉を開ける。


まさか御所に入った瞬間、エリスが復活している状況に出くわすなんて、予想できないじゃない?


ましてや生体反応もないんだもの。


それに、妖精たちの糸で縛ってたって油断もあった。


だから、少し暗い御所に人影。


それがエリスだとは思わなかった。


疑問符が浮かぶ。


外から中に入った直後なので、目がなれておらず誰か判らなかった。


「ツワブキ?」


当てずっぽうに名前を呼ぶと答えはなく、代わりに振り返る。


自分と同じ目線の高さ、その瞳は夕焼けの茜。


直感的にマズいと思った瞬間、視界が狭まる(・・・・・・)


魔眼だ。


確証は無いが、これは改造で付与した魔眼の効果だ。


屋内に居ては駄目だ。


少しでも明るい所に出なければ。


あー、もう!


復活したは良いけど、これって暴走?


疲れてる所に強制戦闘だなんて、本当に運がないわ!


危機感の赴くまま、飛び退くように御所をでる。


日光の下ですら視界が暗い。


だめだ。


これじゃあまともに戦えない。


「エイリ、エリスが来るわよ!迎撃して!」


ジラムじゃ相手にならない。


グレインは今は武器がない。


必然的にエイリちゃんしか対応出来ない。


「任せてお姉様!」


頼もしいセリフと共に、エイリがゲッコウを抜き放つ。


「ふぁっ!?いきなりなんやなんや?!」


シエスタしてんじゃねぇ!


戦闘だ、この寝起き野郎!


「エリスは不死種化したウェアウルフよ。災禍の種と魔眼があるから十分注意して」


「あいあいキャプテン!」


エイリに向けて注意喚起するのと、御所からエリスが飛び出してきたのは同時だった。


「ーーーー!」


声もなく、音もなく。


ミスリルで作られた御旗を振るう。


まったく…復活を素直に祝わせてくれないなんて、とんだ駄犬っぷりね!


着地、同時に推進。


地を滑るように進むエリスに対してエイリの横凪。


「止まれっ!このっ!」


跳ねるエリス、空を切るゲッコウ。


空中で回転し着地すると、槍を打ちつけるがごとく逆袈裟に振るう。


金属音が響き、つかの間の鍔迫り合い。


「ーーーーーーーー」


ようやく魔眼の効果が薄れてきた。


意志なきその貌にはやはり生気がない。


それが不死種化したからなのか、暴走によって意志が欠落しているせいなのかは解らない。


一息鋭く呼気を吐き、エリスは鍔迫り合いを弾き終わらせる。


「なんか言えば!?お姉様の前だよ?!」


エイリの呼びかけにも関心を示さず、代わりに鋭い槍の一撃が返される。


無駄がない。


長柄の得物でエイリに懐に入らせず、攻め続けるエリス。


「あぁんもう!言葉通じないですよぅ、お姉様ぁ!?」


こんなに強かったっけ?


カルシャですら困惑する程の技量である。


泣き言を言いつつも負けていないのは、やはりエイリちゃんが強いからであり、代打として代わった人選は間違って居なかった。


それどころか、的確に動きを止めさせる。


槍の先読み、躱して小手に峰打ち。


大振りな攻撃の中を掻い潜る、鋭い蜂のような攻撃。


エイリちゃんの普段の言動からは攻撃一辺倒かと思われがちだが、意外と堅実な戦い方をするのである。


「ウチに勝てると思ーうーなーよー!」


武器を使った戦闘では完全にエイリちゃんが優勢。


こうなるとエリスは防戦一方。


しばらくの打ち合いの後、エリスの槍が弾き飛ばされ、エイリの蹴りが腹に入る。


「いっぽん、いただきぃ♡」


だが、本番はここからだった。


槍を取り落としたエリスは、両手を胸の前で交差させる。


その瞬間、爪がナイフ程も伸び、手の甲を食い破って露出した骨と一体化、鈎手甲のようになる。


改造によって得た毛髪硬質化、再生能力を応用したのだろう。


恐らくだが、槍の苦手だったエリスはこういった素手に近い方が強い。


何より身軽だし。


「っ!早っ!」


「嬢ちゃん急に早なったな!?チートか?!」


違うな。


これが不死種エリスのスペックなのだ。


生命の枷が外れて、無駄の無い動きをする獣。


動き出してこなれてきたのだろう。


「しかも鈎爪硬いでー、コレ!刃こぼれしてまうぅ!」


…それは流石にないだろう。


仮にも神剣だぞ、お前。


「そうはゆうても水竜の角やろ、この娘の爪!下手すりゃ折られてまうで?!」


うっさいわね!


そん時は打ち直してやるわよ!


不安な答え、おおきに!


心中のちょっとマヌケっぽい会話の間にも、エリスとエイリの打ち合いは続く。


エイリからは軽口が完全に消えた。


本気の目だ。


余裕もない。


…まぁ、楽しそうではあるのだが。


あれ、意外といいコンビなの?


ライバル的な感じになりそうなの?


カルシャがこんな事を考えていられるくらいには、拮抗していた。


ここまでは。


後書きウサギ小話

異世界言語?編



「なんか言えば!?お姉様の前だよ?!」


「では言わせて頂きますが、死体とはいえ人の身体を勝手に弄くるのは如何なものでしょうか。死体とはいえ尊厳というのはあってしかるべきなのではないでしょうか。さらに言わせて頂きますとーーーーー」


「あぁんもう!言葉通じないですよぅ、お姉様ぁ!?」


「いや、明らかにいっぱいしゃべったよね!?」


難しい言葉は聞こえない都合の良いおみみ!


完!

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