2−40.最弱ウサギさん、お家へ帰る
「ここまで来れば流石に追って来ないでしょ」
街道を駆け抜け、レソルガ樹海の端。
今回は誰も欠けずに戻って来れた。
「聖女ライナが生きていたのは不思議じゃないけど、司祭は厄介だったわね」
めいめい頷く。
司祭なんておまけ程度の戦力だと思っていたが、何やら魔術とか使うみたいだし、単純に面倒くさい。
それでも生き残ったのだから、次は対策を立てていく。
それだけだ。
死ななければチャンスはある。
幸いにもこちらには妖精やツワブキ、ゲッコウといった情報源もいる事だし、決してゼロからのスタートではない。
ね、ゲッコウ?
「儂、魔術はそんなに詳しくないんやで?」
この神剣はかつての魔王のボケを淡々と披露するものです。
過度な期待はしないでください。
あと、部屋は明るくして、TVから3メートルは離れて見やがって下さい。
…なんの話よ。
そんなボケは要らないから、帰ったら魔術について教えてもらうからね。
「…サー、イエッサー」
…有無を言わさぬその感じ、魔王ムーヴが板についてきてるでぇ。
三点リーダーを言葉にするな、違和感しかない。
全く…。
へし折るぞこの駄剣め。
「実戦はどうだった、エイリ?」
「お姉様を堪能しました」
即答するのは良いが、内容がおかしいぞ、エイリちゃんよ。
「いや、戦いの感想を言いなさいよ」
「楽しいかったです!強い相手がいるってゾクゾクしますねぇ♡」
流石バトルマニア。
カルシャには無い戦いへの渇望がウズウズしてやがるぜ。
私にこの娘は扱いきれるのだろーか。
甚だ疑問だ。
とりあえず強くなってくれそうではあるので、もう少し様子見かな。
で、真逆の最弱転生者。
「アンタはどう?」
ギフトは生産系、戦いの腕も身体能力も並。
唯一思考回路は生き残るためになかなか鋭そう。
そんなジラムはこの戦いで何か学んだかしら?
「正直、ヤバイ戦場は勘弁願いたいですね」
「ま、アンタはそうよね」
弱い者の感想だな。
ま、コイツは今後どうするか、これから考えていくか。
最後はレイジ。
「レイジ、別働してた時、何か気になる事はあった?」
レイジにはドラゴンとライダー殺しの他に、情報収集も任せていた。
「そうだな…」
細かい事は色々あるだろうが、ここでは大きい事だけ伝えてくる。
「捕われた地虫は見つけたよ」
異端処理用の地虫か。
こんな街の真ん中でも飼えるのね。
「やっぱりジノスって奴も居たのかしらね」
地虫がいたって事は、やっぱり異端処理するつもりだったのかも。
「そこまでは判らない。でも、殺したのが特別印証をつけた処刑配達人だったから、恐らくは」
だとしたら狙いは悪くなかった訳だ。
「まぁ良いわ。どちらにせよエストの邪魔は入っただろうしね」
あのクソ司祭の野郎は予想外だった。
アイツのせいで殺しには至らなかったし、新米勇者を殺す事にもならなかっただろう。
ま、今更嘆いても仕方ない。
生きてるだけで十分よ。
「皆よくやってくれた。早く帰って休息しましょ」
私は魔王。
同時にウサギ。
まだまだか弱いウサギよ。
いつ死ぬかもわからないんだから、今は生きている事に感謝する。
それを邪魔するなら、容赦しないわ。
余裕があるなら報復もしてやるんだから。
一神教なんてクソ喰らえ、よ。
*
尖鉄都市グリム・ソルガ。
その中央の御所の奥。
御簾に隠された最奥には、一つの棺が安置されている。
中に横たわるのは、エリス・レッサカルシャ。
魔王の影武者にして、第一の臣下。
その亡骸は既に主によって改造され、永く眠り、目覚めを待っていた。
ゆっくりと、ゆっくりと、変化を続けて、ソレはもうすぐ目覚めを迎える。
まどろみに揺蕩う精神。
それは果たして、元のままなのか。
それとも、変わり果てているのか。
それは主すらまだ知り得ない。
人知れず、エリスの身体は覚醒に向かっていた。
「ーーーーーーーーーーーーカル、シャ、姉、」
ーーーーー第2節“ウサギクラフト魔王譚編”完ーーーーー
後書きウサギ小話
あっあの羽は!編
「ところで、なんでライナはカルシャさんの場所が解ったんだろうね?」
「…妖気アンテナ?」
「妖怪じみてはいるけど、違うでしょ」
「じゃああれだ、レーダー的なやつ」
「…カルシャさん、ひょっとしてあの聖女がコウモリかなんかだと思ってる?」
聖女さまの羽はコウモリの羽!
完!
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ウサギクラフト魔王譚編、完結しました。
ここまでお付き合いいただきありがとうございます。
第2節は、カルシャが魔王となり、一神教と敵対するまでのお話でした。
最後はカルシャらしい、逃げるエンドでしたね。
ハクスラはどこいった。
新キャラが増えていくので、作者の力量ではかき分けがだんだん難しくなってきた今日この頃。
第1節と同じく、またもや次節のプロット、ありません(๑•̀ㅁ•́๑)✧
また考える時間を設けてから更新しますので、それまでお待ちいただければ有り難いです。
これからもどうぞよろしくお願いします。
2019.12.15
烏月ハネ




