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22 炊き出しと発情期?


 神父のおっさんによる襲撃から数時間が経過した。

 コボルドたちの消火活動によって火事は消し去り、集落に落ち着きが戻ったのは夕方ごろだった。

 そして俺は、


「あのさぁ、シャルロット? ひとつ聞きたいことがあるんだが……」

「ん? どうしたのオーズ?」

「――なんで俺、おまえの村で肉を焼いてるんだ?」


 村の中央では数人のコボルドと一緒に料理をしていた。

 ただいま、熱い鉄板に味付けがされた肉類を焼いている。


「襲撃と、消火活動で、みんな疲れているから、おいしい料理で気分転換させたいけど、たくさんの料理作らないといけないから、料理できる人は強制、参加。なにより、オーズの料理、絶品。みんなにも、ごちそうさせようと、いつか思ってから、ちょうどいい機会」

「たしかに、炊き出しで人手が足りないのは分かったが、それほど絶品って言うほどか? 俺のは趣味程度の味なんだけど?」

「卑下しなくてもいい。その証拠に、みんな、おいしって、言ってる。――ほら」


「おう、豚の坊主! 肉追加だ。塩味で頼む」

「こっちはタレだ。この濃厚でフルーティーな味がうまくてたまらん」

「獣臭いの甲殻牛が、このタレのおかげであまり臭くないぜ」

「岩塩蟹の塩だけでなく、ほかにもスパイスも使ってるな」

「焼き加減もいい腕だ。こんどあたしと、料理してみないか?」

「オーズさん、私と一緒に飲もう!」

「鍋料理できたから、食べましょうよ!」

「この後暇なら、二人っきりで……」


 俺が肉を焼いていると、ぞくぞくとコボルドたちが押し寄せて来る。

 最初、ここまで好意的な関係になるとは予想していなかった。

 オークだから怖がれるか、警戒されるのかと予測していたが、犬娘が俺たちのこと説明してくれたおかげで問題は起こらず、彼らの輪に入れたのは幸運でしかない。

 むしろ、友好的な態度でグイグイと追いつめられて、どう接すればいいかわからなくなる。

 なので、会話を極力短めにし、ポーカーフェイスを保ちつつ、ほぼ無言で肉を分配していく。

 口よりも行動でほうが楽でいいわ。


 にしても、メスのコボルドたちだけは、なぜ俺に色目を使ってくるのだろうか?

 俺が疑問に思っていると、犬娘がムスッとした顔で答える。


「魔物のメスは、本能で強い雄に惹かれるもの。それに、種族は……問わない。知性が低いの魔物の雌が男の冒険者を襲って種をもらうこと、よくあるし」

「節操無いな、魔物って。あとシャルロットさん、なんで不機嫌そうに俺の横にべっとりとくっついてるわけ?」

「……別に。ただ、あなたの横にいたい……から」


 そう言って、俺がコボルドたち(おもに親御さんたち)に焼けた肉を配っているさなか、犬娘は俺の腕に絡みつきながら鉄板から焼けた肉をつまみ食いをする。

 あのー、腕にくっつかれると、調理の邪魔なんですけど。

 腕から柔らかいもの感じて集中力が途切れそうなんですけど。


「シャルロットさま、ずるいー」

「わたしもオーズさんといちゃいちゃしたいですぅぅ」

「というか、長の孫娘さま、彼を独占しすぎです!?」

「ただでさえ、十年以上も、こんな強い雄を我々に隠してイチャコラしてたなんで卑怯だ!」

「オークだから、あっちのほうはすごいんだよなぁ」

「長の孫娘だからって、良いことと悪いことがあるぞゴラァ!」

「長の孫娘なら、あたしたちにも、分けてくださいよ!」

「一度だけの交尾でもいいですから!」

「体つきなら、あたしのほうがいいですよぉ!」

「想像しただけで、あそこが疼いちゃう」

「はぁはぁ、みんなと乱交……」


 年齢がバラバラのメスのコボルドたちが犬娘に向かって反論する。

 ってか、数名、発情していないか? 

 とくに最後の奴らダメだろう。

 このままだと暴動起こしそうだが彼女たち以外のコボルドたちはというと「お、発情期か?」とか「モテモテだな」とか「まぁ、他種族の子を産ませてもべつにいいかな」など傍観ムードだった。

 おい、それでいいのかコボルド?

 おまえらの娘たちが、(オーク)と交わる気まんまんなんですけど。

 オークの特性のせいで、生まれてくる子は犬じゃなくすべて豚なんですけどー!

 血筋的にダメだと思うんだけどー!!

 そればかりか、メスのコボルドたちの言葉に犬娘が不機嫌Maxになりそう――って、懐から剣を取り出そうとすんな義姉!

 相手は身内みたいなもんだろが!

 おまえらもあんまりこいつを怒らすな――って、なんでおまえらも戦闘態勢とってるわけ!?

 一様おまえらの偉い人の孫娘だぞ、こいつ! 

 男を巡って戦っていいのかよ!?

 ん? 

 相手が誰であれ、雌として雄に一番愛されたい気持ちに地位や種族など関係ない?

 ふむ、かっこいいセリフだな――じゃなくって!

 

 一発触発の女の闘い止めようとすると彼女たちの間を一人の少女が割り込んだ。


「おやおや、シャルロットさんだけでは飽き足らずほかの獣娘をその気にさせる案て罪な人もとい罪な豚ですわねぇ」


 と、愉悦交じりできたのはラウラだ。

 ただし、その姿はいつもと違っていた。

 というか別人になっていた。


「別にハーレム主人公になった覚えはないんだけどなぁ。ところで、なんでおまえ人間になってるんだ? 新しいスキルかなにかか?」


 いつもは緑の肌で下半身が触手になっている植物系魔物娘(アルラウネ)の彼女だが、目の前にいる彼女はドレスを纏った中学生くらいの人間の美少女の姿をしていた。


「あぁ、これですか? 襲撃犯が人間、しかも魔物嫌いの神官だったので変装してみましたの。変質系のスキル応用して肌と髪の毛を変え、下半身の触手を束ねて足の形した、いわば擬態ですわ」


 そういって、スカートをめくり、ちらりと太ももを見せる。

 セクシーなガーターベルトから露出したのは女子中学生の青い果実の生肌――とは言い難い、まるで縄を束ねたような緑色っぽい異形な両脚であった。


「どう、そそられるでしょ?」

「うーん、なんかグロぽい見た目だけど俺的にはアリか無しかといえばアリかな。まぁ、アルラウネにしろ、人間にしろ、元からエロ娘だから魅力的なのは変わりないけど」

「うっふふふ。誉め言葉として受け取っておきますわ」

「公衆の面前で、イチャコラ、しない……の」


 そういって、犬娘が俺の首に両腕を回してさらに密着する。

 まるで構ってほしい飼い犬のようだ。

 ちなみに、身長が俺のほうが高いので、首にぶら下がっている状態になっている。

 重さは感じないけど、若干、鬱陶しい。

 胸あたりで大きな柔らかいものが当たって気持ちいいが。


「もう、シャルロットさんたら。今日は一段とオーズ様に独占気味ですわねぇ」

「……そんなわけない。いつも通り」


 恥ずかしそうに花娘から目を逸らす犬娘。

 それにしても、花娘の言う通り犬娘の態度がおかしい。

 たまに積極的になるが、ここまで大胆になることはなかったはずだ。

 しかも、犬娘の親戚らしき者たちの面前で。

 花娘と違って羞恥心はあるのはずなのだが?


「それよりも、ラウラ。あなたに一つだけ……聞きたいことが、ある」

「おや、なんでしょうか? わたくしとあなたは親友同士の間柄なんですから、質問なら遠慮せず話してくださいましな」

「……なら聞くけど……そいつらに、何を……した?」


 犬娘が怪訝な様子で花娘に指をさす。

 正確には玉座らしき椅子に座る花娘を神輿のよう担いでいる屈強な“コボルドたち(雄)”をだ。

 たしか、彼らは犬娘と同じ屈強な戦士のコボルドたちで、戦士としての高いプライドをもつ優秀な(ひと)たちだと彼女から聞かされていたが、なぜか現在花娘の下僕になっていた。

 その証拠に花娘が飲み物が欲しいと呟くと、神輿を担いでいないコボルドが飲み物を持ってきたり、花娘が暑いといえば大きな団扇で仰いだり、花娘が肩が凝ったというと肩をマッサージしたりと奴隷のように従っている。

 しかも、ジュースがまずかったのか花娘が無言で彼らに飲み物をぶっかけると「ありがとうございます」と嬉しそうな顔していた。

 完全にドM犬である。


「子供たちを助けたとき、いささか一悶着がありましてねぇ。わたくしのこと誘拐犯と間違えて襲ってきたので、ちょっとばかり調教を……」

「うん、わかった。私、もう理解したから、何も言わないで」


 悲哀な表情で目を手で押さえる犬娘。

 うん、同僚があーなってたらそりゃ泣きそうになるな。

 あと、犬娘に喧嘩を売ろうとした雌のコボルドたちが花娘が現れただけで急に黙ったのも納得した。

 彼女たちも犬娘と同じく、戦士であり、子供たちの救助に参加していた。

 なので、彼らと同じく花娘の餌食にされたのだろう。

 花娘を前にして、全員が恐怖に震えて互いを抱きしめていた。

 いや、ほんとナニしたんだおまえは?

 さっきから「触手が、触手が……」とか「やめて、針でそんなところ刺さないでぇ!?」とか「光が、光が溢れてくるぅぅぅう!!」とか譫言をつぶやいているんだけど!

 とくに最後の娘が重症ぽいんですけど!?

 何勝手に犬娘の同僚たちに恐怖心を刷り込ませてるわけ!?

 ほら、傍観していたコボルドたちも若干、引いてるぞ!


 と、ドSの魔物に恐怖しているコボルドたちの中で、彼女に恐れず近づいてくる一団が俺たちの前に飛び出して来た。


「らうらー、いたー」

「おねいちゃん、いっしょに、ごはんたべよう」

「そのあと、ぼくたちと、あそぼう」

「ぼく、おにごっこがいい」

「わたし、おままごと」

「まほう、みせてー」

「バチバチする、火花、もういっかい、やってー」

「やれー」


 舌足らずで花娘に群がるのは今回の襲撃で誘拐されかけたコボルドの子供たちだ。

 花娘に保護されたあと、誘拐によるショックと疲れて数時間寝込んでいたが花娘の処方と介護により元気になった。

 その経緯があってか、子犬たちは花娘に懐かれて人気者だ。


「はいはい、あとでたーっぷり、遊んであげますわよ」


 じゃれ合う子犬たちに花娘が微笑みを零す。

 その笑みいつもの相手を見下したよう嘲弄とは違い、まるで母神のように慈愛に満ちていた。

 というか、


「おまえ、意外と子供好き?」

「意外なのは余計ですが、実際、子供たちに慕われ喜ぶことに、わたくし自身も驚いていますわ」


 と、自嘲交じりに言葉を返す花娘。

 あのマッドサイエンティストのドS痴女が幼子たちに甘いという事実に俺は驚きを隠せなかった。


「ふふ、あえて理由を申せば、子供は命の宝物。子供がいるからこそ種が絶えず生命と文明が未来へと紡がれていくと、わたくしにとってそれがとても尊いものだと思うのでしょうか。ついつい可愛がってしまいましたわ。ほんと、純粋無垢には敵いませんわね」


 スカートの下から伸びてきた触手で子供たちを持ち上げながら、彼らを愛撫する。

 触手がめずらしいのか、子犬たちは触手につかまり鉄棒のように遊び始める。

 見た感じ、シュールな光景だが子犬たちが楽し気に遊んでいるから姿と、あどけない笑みを浮かべる花娘にまるで子供たちと遊ぶ母親を傍観する父親の気分だと、俺はそう思ってしまう。

 むしろ、初めて見せる花娘の一面に心が鼓動する。

 やばい、ギャップ萌えで惚れそうだ。


「なので、子供が欲しくなったのでわたくしを孕ませてくださいましな、あなたさま」

「はっはは、どうしたらそういう結論になるのか教えてほしいな、この触手ビッチ」


 ……訂正、やっぱりこいつ痴女だわ。

 露骨に俺を父親にしようとする魔女だよ、ほんと。

 俺のさっきまでのトキメキと感心を返せよ、コラ。


 あと、義姉さん。

 なにげに頬を赤く染めて下腹部に手を当てないでくさい。

 ほかの雌犬たちも、物欲しそうな目でこっちを見るな。

 発情期ですか、この雌どもめ。


 その有り余る色気と肉欲で攻めて来ても父親なんかにはならないからな! 絶対に!!


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