橘陸という男
今回は視点を変えて、天音ちゃんに「褒めてください!」と懐く大型犬系新人・橘陸のサイドストーリーをお届けします!
『ミスター東薬』として女子部からもモテまくり、派手な世界で生きてきた彼が、なぜ地味な薬局長・天音ちゃんにここまで本気で沼ってしまったのか——?
天音ちゃんの細やかな仕事ぶりと母性にノックアウトされた、橘陸の可愛すぎる本音と葛藤をお楽しみください!
俺は橘陸。
誕生日はまだ来ていない、二十四歳の新卒ピチピチ薬剤師だ!
極寒の地・北海道の函館ラッサール高校から、満を持して本州へと乗り込んできた。
コスメ大好き! 綺麗な都会が大好き!
函館にはない華やかな関東圏は本当に素晴らしかった。何しろ暖かい!!
(どこがダ埼玉やねん……めっちゃいいじゃねーか! なんでも揃ってるし、東京より家賃も落ち着くじゃん♪)
……まあ、我ながら俺はイケメンである。
東京薬科学大学時代はキャンパスが分かれている女子部からも話題沸騰で、一応『ミスター東薬』で通っていた。
中高で蓄えた学力のおかげで大学の勉強も国試も余裕余裕。いつだってスクールカースト上位の派手な女の子たちに囲まれ、人の輪の中心にいたのが俺の日常だった。
そんな俺が配属になったのは、ドラッグラベール所沢駅前店。
待ち構えていた直属の薬局長は——ものすごい「地味系」だった。
けれど、彼女は凄かった。
膨大な細かい作業を淡々と完璧にこなし、俺が何を聞いても嫌な顔ひとつせず優しく教えてくれるのだ。
処理の速さ、高度な医療知識、そして派手さ! それだけをモットーに生きてきた俺の人生に、激しい衝撃が走った。
派手さはない。だけど、彼女の優しい声や彼女自体にはたくさんの固定患者さんがついていた。
俺なら見落としてしまいそうな些細なミスも、決して咎めることなく、優しく包み込むように教えてくれたのだ。
「ただ早く出したり、難しい指摘をしたりすることよりも、もっと大切なことってたくさんあるの。橘くんも優しい対応、頑張っていこうね♡」
優しい対応……優しい対応……。
俺はこんなにも母性があふれる女性を見たことがなかった。……いや、見ようとしていなかったのだ。
今まで派手な女の子ばかり追っていた自分……橘一生の不覚……!!
教えられているすぐ至近距離で、俺の胸は悶々として仕方がなくなる。
薄いナチュラルメイクに、透き通るような肌。
毎朝一生懸命、少しだけ隠そうとしているソバカス。
ふわりと鼻をくすぐる、嫌な感じが一切しないコンディショナーやシャンプーの香り。
(あかん……母性あふれるお姉さん薬局長に、もっと褒められたい……!!)
「今日もいち早く薬局に行って、店舗を隅々までピカピカに磨き上げてオープンするんだ!」
天音さん、今日はどんな可愛い顔で俺を迎えてくれるかな……?
橘陸は今、人生で一番充実した最高にハッピーな新人ライフを送っているのだった。
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