悪魔課長の降臨と、ドキドキの共同作業!?
今回は本部の『悪魔課長』こと神崎葵企画統括が所沢駅前店に殴り込み!
日本薬局協会理事に就任した彼女から下された命令は……なんと「一ノ瀬薬局長と天音ちゃんのペアによる学会発表」!?
ライバルである氷室涼香への対抗心を燃やす一ノ瀬と、二人きりの共同作業にモヤっとする神楽坂エリア長、そしてお留守番で悔しがる橘くん。
天音ちゃんの胃がさらにピンチを迎えるドキドキの共同作業編、開幕です!
カツ、カツ、カツ……。
所沢駅前店の静かな店内に、鋭く洗練されたヒールの音が響き渡っていた。
バァン!!
「ごきげんよう、皆様!」
ルージュを引いた艶やかな唇を自信満々に吊り上げ、調剤室のドアを盛大に開けた人物。本部の『悪魔課長』こと、神崎葵企画統括課長である!
その圧倒的な威圧感にも動じず、神楽坂迅エリア長がスマートに一礼した。
「お疲れ様です、神崎課長。本日は当エリアに何かご要望でしょうか?」
「フッフッフ……神楽坂ちゃーん! 今日も相変わらずイケメンマックスじゃないの〜!」
「ありがとうございます」
(……すごすぎる。言われ慣れているのか、照れもせず淡々と流す神楽坂エリア長……尊い……っ)
完璧な上司の立ち振る舞いに、私、薬師寺天音は見とれてしまっていた。
すると、神崎課長が鋭い視線を私に向けた。
「薬師寺先生って、あの子?」
「そうです、神崎課長。……薬師寺に何か?」
「そうよ〜ん♪ あっ、そうそう! 隣の店舗の一ノ瀬ちゃんも連れてこなきゃね!」
あっという間に召集がかかり、調剤室の一角に私、神楽坂エリア長、一ノ瀬薬局長、そして新人の橘くんの四人が集められた。
「ハイハイハイ! 集まったわね、野郎ども!! そこの紅一点の薬師寺ちゃん……なんだか誰かを彷彿とさせるわねぇ……」
「……?」
(誰かって……白鳥駅前店の陣内エリア長のことかな……?)
私の首傾げを意に介さず、神崎課長はパンッと派手に手を叩いた。
「ま、いいわ! 驚きなさい……私はァ〜、この度、日本薬局協会の『理事』に就任したのよ!!」
「おめでとうございます、神崎課長。……では、次の年大会で我がドラッグラベールから何か成果を出せ、ということでよろしいですね?」
「そう! 流石は神楽坂! 理解が早くていつも助かるわ〜!」
高らかに笑う神崎課長が、バシッと私と一ノ瀬薬局長を指さした。
「そこでぇー!!! 一ノ瀬蓮! 薬師寺天音! 二人に学会での発表を命じるわ!!」
「!!?」
唐突すぎる指名に、私の目玉が飛び出そうになった。
「そっ、そんな! 一ノ瀬先生はともかく、私はその……日々の業務でいっぱいいっぱいで……!」
「当エリアを選んでいただき光栄です。……一ノ瀬、薬師寺先生のフォローを頼む」
神楽坂エリア長が淡々と応じる。けれど……気のせいだろうか。神楽坂エリア長の美しい眉がほんのわずかに潜められ、どこか悔しそうな色が瞳に混じっているような……?
「っ……! ありがとうございます、神崎課長!」
一ノ瀬薬局長はどこか嬉しそうに胸を張った。そこへ、指をくわえて見ていた橘くんが焦ったように割り込んでくる。
「ちょちょちょ! 俺も行きたいっす、神崎課長〜〜!!」
「あーんたはまだ新人でしょーが! あんたの代はねぇ、生駒君も白石ちゃんもいる超激戦区なの! 新人賞を取るために力を蓄えなさい! つか、一ノ瀬と薬師寺ちゃんがいない間、あんたが店舗を守るんでしょーが!」
「ぐぬぬぬぬ……っ!」
悔しそうに唸る橘くんに、神楽坂エリア長が肩を叩く。
「かしこまりました、神崎課長。では二人が不在の間は私が店舗を守りましょう。行くぞ、橘」
「そんなぁ〜〜! 天音さぁぁぁん!!」
橘くんの悲痛な叫び声を残し、二人はいったん店舗の奥へと戻っていった。
残された一ノ瀬薬局長に向かい、神崎課長はニヤリと悪魔のような微笑を浮かべる。
「クックック……一ノ瀬。あんたが新人賞で惜しくも敗れた氷室涼香……あちらのエリアでも、おもしろーい発表をやらかすらしいわよ? あんたは在宅医療や緩和医療が得意でしょ。見せてもらうわぁ……新人賞…準優勝者の実力ってヤツをね!フハハハ!!」
「はいっ! 頑張ります!」
「それと……ふふっ」
神崎課長がすっと私に顔を近づけ、耳元で小声で囁いた。
「面白いわね、薬師寺薬局長。しっかりエスコートしてもらいなさい……あの男、どう見てもあなたにゾッコンよ?隣のエリアを男女比逆にした感じ…フハハハ…」
(えぇぇぇぇ〜〜〜〜〜〜!?!??)
ゾッコン!? 一ノ瀬薬局長が私に!? なななにを言っているのこの悪魔課長はーーー!!?
こうして、ただの地味な薬剤師である私に、唐突にあてがわれた『学会発表』という高すぎるハードル!
そして、身分違いで尊すぎる隣の店舗のイケメン・一ノ瀬薬局長との、過剰にドキドキする共同作業が始まってしまうのだった……!
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