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イケメンだらけのドラッグストアでいつのまにか全員から執着されていました  作者: 薬師寺 あかね


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下田の猛攻と、最優秀新人テストの試練

ドラッグラベルの高度認定医療機能をかけた「最優秀新人テスト」に悪戦苦闘する橘くん。

そんな中、天才肌実習生・下田くんが乳がんの薬物療法(ルミナール分類からトリプルネガティブまで)の難解なメカニズムをチート級のスラスラ回答で披露!

さらに「お姉さんのその魔法、教えて?」と至近距離で天音ちゃんをハート撃ち抜く下田くんと、それに激しく嫉妬して発狂する橘くんのドタバタコンビネーションをお楽しみください!

我が『ドラッグラベル』では、店舗の高度認定医療機能を取得するため、全社を挙げてのかなり難度の高い「新人・若手向けテスト」が実施されることになっている。

このテストで堂々トップの成績を収めた者には、栄えある『最優秀新人賞』が授与されるのだ。

「くっそーー……ムズイぜこれ……っ!」

休憩スペースのテーブルに向かい、橘くんが頭を抱えて苦戦していた。

「がん専門の拠点病院の門前薬局でもない限り、こんな特殊な症例のデータを深く読み込む機会なんてそうそうないっての……! うぅ、天音さーん! ここ、どう解釈すればいいのか教えてくださぁい!」

わっ……また大型犬がふにゃふにゃと甘えて近づいてきて、爽やかなシャンプーの香りが私のパーソナルスペースをグリグリと攻め込んでくる。

その隣では、透明感抜群の脱力系男子・下田くんが、クスッと楽しそうにそれを見つめていた。

「橘先輩、困ってるんですね……。僕、教えましょうか?」

「なっ……! 実習生の分際で生意気な……って、できらぁ!!」

「いや、普通にできてますけど〜」

「しまっ……!?」

ふふっ、と余裕の笑みを浮かべる下田くん。そういえば彼は大学でも学年トップクラスの天才だ。

……って、待ちなさいよ私!

今、私は先輩として、指導薬剤師の立場でこのテストに向き合わなきゃいけないのに、イケメン二人にはさまれて「分かんな〜い♡」なんてやっている場合じゃないでしょ!

はぅあ! これじゃあただの、イケメンに囲まれて鼻の下を伸ばしているだけのスケベなダメ薬局長じゃない!!

バカバカバカ、私のバカ……ッ!

「……ねぇ、お姉さん」

「ひゃっ!?」

いつの間にか隣にすり寄っていた下田くんが、猫のように首を傾げて上目遣いで聞いてきた。

「お姉さんは……このテスト、何点だったの……?」

「うっ……そ、それは……その……えっと、73点……でした……」

「へぇ……。フフッ、まぁこの問題、普通に国家試験よりいやらしいし、割と難しいもんねコレ……」

「おい、ちょっと待て! そんな余裕そうな下田は、当然この難しい設問も分かんのかよ!?」

橘くんが身を乗り出して問い詰めると、下田くんはけだるそうに、しかし驚くほどスラスラと淀みなく語り始めた。

「乳がんだよね。Luminal A(ルミナールA)ライクはホルモン受容体陽性でKi67が低く、予後が良い。Luminal BライクはKi67が高めだったりして少し悪性度が高い。Luminal B-like HER2陽性もあまりよろしくない状態だね。大体はLuminal Aライクが多いけど、ホルモン依存型だから基本はホルモン療法。ただ、若年層で子供を産んでいないとリスクは高くなる。……で、一番顔つきが悪くて厄介なのは『トリプルネガティブ』だね。ホルモン非依存性だからホルモン療法も効かないし、分子標的薬も限られるから基本は殺細胞性抗がん剤(ケモ)で叩くしかない。閉経前後で使える治療レジメンも変わるしね」

——スラスラと……。

これ本当に薬学部の実習生なの……!?

って、近っ!! 顔が近いよ下田くん……!!

「……でもさ」

下田くんはさらに一歩、私の体にぐっと顔を近づけ、その澄んだ瞳をじっと覗き込んできた。

「知識だけなら、僕でも教科書通りに答えられる。だけど……お姉さんは、テストの点数以上に、目の前の患者様が『今どんな痛みを抱えているか』をずっと深く把握できている。……不思議だな。その魔法みたいな優しさ、僕にも教えてよ、お姉さん」

 バキューーーーーーン……!!

薬師寺天音、本日二度目の完璧なK.O.!!

「くっそーーーっ! 下田ぁぁぁ!!!」

耐え切れなくなった橘くんが机をバンッと叩いて立ち上がる。

「お前な、先輩に向かって……いや、それより天音さんにそんな至近距離で甘い言葉をささやくな! お前、函館ラッサール出身の俺が教えてやろうか!」

「え? 橘先輩、もしかして悔しいんですか? 分からないふりして、こうやってお姉さんに接近して気を引こうようなセコい真似……先輩、ラッサールなら頭いいんだから余裕で解けるでしょ?」

「ぐぬぬぬぬ……!! 俺の……俺の天音さんがぁ……! 所沢駅前店の可愛い女神がぁ……生意気な実習生にいいように落とされていくぅぅぅーーーっ!?」

 ―――こうして、イケメン達の激しい謎の争奪戦と猛攻は、今日も絶賛加速中なのであった。

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