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ソルディアの『希望』

翌日。3ー1部隊で功績が認められた山上、日ノ出、大伴、白波、家持の5人は、王城の深部へと呼び集められていた。

 

「これから軍の幹部会を行います。珍しく全員揃っておりますので、昨日お話ししたソルディア王国軍が誇る主力達を紹介しましょう」

 

ヴォルガの言葉に、大伴が聞き返す。

 

「……先輩方と言ってましたが、俺たちと同じ召喚者が他にもいるってことですか?」

 

「ええ。出席いただければ分かりますよ」

 

ヴォルガは含みのある笑みを浮かべ、重厚な石造りの扉を押し開けた。

 

■ 軍議室『希星の間』

 

扉の先は、巨大な円卓を囲むようにして、異様な威圧感を放つ男女が鎮座する空間だった。

 

足を踏み入れた瞬間、凄まじい「圧」が5人を襲う。

山上たちは、自分たちが品評会の場に引きずり出されたような、言い知れぬ不快感を覚えた。

 

「皆さんお揃いですね。お忙しいところお集まりいただきありがとうございます。本日は今後の計画についてお話しできればと……それと、先日新たに召喚された勇者たちと顔合わせができればと思いまして」

 

ヴォルガが穏やかに告げるが、返ってくるのは重苦しい沈黙だった。

円卓に座る者たちの瞳には、歓迎の意など微塵もない。

 

「まずは新メンバーから紹介しましょう。こちらから、山上業さん。日ノ出恒一さん……」

 

ヴォルガが形式通りに5人を紹介していくが、居並ぶ将校たちは視線すら合わせようとしない。

カースト上位を自負する山上たちですら、この場を支配する「格」の違いに苛立ちを隠せなかった。

 

「……では、ソルディア王国軍最高戦力。通称**『十希星じゅっきせい』を紹介しましょう」

 

ヴォルガが円卓の最奥、椅子に深く腰掛けた大男を指し示す。

 

「まずは、元帥。【地極星】ヴァルガス・バニングスさん。ソルディア王国、ひいてはこの世界で最強の力を持つ方です」

 

鋼のような筋肉を鎧に包んだ老練の武人が、初めて5人を一瞥した。

 

「ヴォルガがこの会に連れてきたということなら心配はしない。だが、戦力にならないと判断すれば切り捨てる。肝に銘じておけ」

 

ヴァルガスの声は、地底から響くような重圧を伴っていた。

 

「続いて大将。【鋼導星】ロバート・J・モーガンさん。あなた方と同じ召喚者です」

 

金髪をなでつけ、近未来的な装飾が施されたガウンを羽織る男が、下卑た笑みを浮かべた。

 

「へー、女の子いんじゃん! 後で俺の部屋来なよ、二人で楽しいことしよ! 男は興味ないから勝手にしてて」

 

ロバートの露骨な視線に、白波が嫌悪感をあらわにする。すると、隣に座る男が不敵に扇子を動かした。

 

「ゴホン。同じく大将。【金龍星】劉 鳳金さん。この方も召喚者です」

 

「まったく欧米人は野蛮ネ。そんなのと私が同じ括りとは、大層遺憾ネ……」

 

劉は糸のような目で恒一たちを見据え、慇懃無礼に鼻を鳴らした。

 

「せいぜい、かつての属国の子供たちがどれほど使えるか、見物させてもらうネ」

 

その後も、ヴォルガによる形式的な紹介が淡々と続いていく。

 

「中将。【鋭斬星】オルロック・フォン・レオンハルトさん」

 

「……不愉快だ。余所者の数が増えるなど、この国の血が汚れる」

 

「中将。【狂牙星】ザハーク・ルガルさん」

 

「……ああ……。こいつら、殺してもいい場所はどこだ……?」

 

「中将。【灰煙星】煙草 伸二さん」

 

「……新人の教育? ダルい。めんどくさい。俺に振らないでよ」

 

「少将。【鎖縛星】エルザ・シュミットさん」

 

「フフ……躾のしがいがありそうな猟犬ね。後で私の部屋へいらっしゃい」

 

「少将。【彩終星】パク・ジフンさん」

 

ジフンは全く言葉を発しない。無言のまま、恍惚とした表情で5人の顔ぶれをスケッチブックに描き写している。その視線は、生きている人間を捉えているようには見えなかった。

 

そして、円卓の端には、不自然なほど身を寄せ合う二人の影があった。

 

「少将。【双熾星・紅】今際 勇さん、そして【双熾星・蒼】今際 玲奈**さん」

 

「……レナ、あいつら見てるよ。俺たちの邪魔をするなら殺す」

 

「おにい……。おにいに近寄るやつ、みんなレナが凍らせてあげる……」

 

兄の勇は妹を抱きしめるように肩を抱き、妹の玲奈は兄の服の袖を強く握りしめたまま、日ノ出たちを「異物」として睨みつけていた。

 

紹介が終わる頃、軍議室には耐え難いほどの冷気が満ちていた。

同じ召喚者、同じ「先輩」という言葉から期待していた親近感など、そこには欠片も存在しない。

 

ソルディア王国軍最高幹部会『十希星』。

それは希望の名を冠しながら、その実態はヴォルガが繋ぎ止めた、圧倒的な力と歪んだ精神を持つ怪物たちの集団であった。

 

「……さて。顔合わせはこの程度でいいでしょう」

 

ヴォルガの冷ややかな声が、静まり返った部屋に響いた。

王国軍の最高戦力、通称『十希星じゅっきせい』。

元帥ヴァルガスをはじめ、歪んだ欲望を剥き出しにする先代の召喚者たち……。


「カースト上位」を自負していた日ノ出たちも、この異様な集団の中では新兵に過ぎません。

彼らが渚たちの前に立ち塞がる時、どれほどの絶望が待っているのでしょうか。


次回、第25話は 3/29(日) 20:10 更新予定です。


ついに勢揃いした王国側の「怪物」たち。

「十希星の実力が気になる!」「こいつら全員ボコボコにしてほしい!」という方は、ぜひブックマークや**評価(★★★★★)**で応援いただけると、執筆の励みになります!

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