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VRゲームで鳥をもふもふしたいだけ!  作者: 音夢


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83羽目:彩光の祈り

 みぃの温かい肩が当たり、横を向くと安堵した表情の彼女がこちらに少し体重を預けるように、もたれ掛かっている。体は冷え切っているが、みぃの温もりで心がホッと緩んだのを感じた。


「ナイスファイト。結構ギリギリだったから最後の方ハラハラしたわよ」


「本当に、間に合ってよかったよー! 最後の見た? ペンギンのように華麗なスイムだったでしょ?」


「……どざえもんになりに行ったかと思ったわよ」


「それ、天に召されてるから!」


 即座にツッコミを入れる。


 でも、みぃが楽しそうにしているのを見て、うちも力が抜ける。いつの間にか、体の冷えも消えていた。さて、すべての部屋の扉が開いたが、また結晶が出てきたってことは、どこか隠し扉があるのかな? この床のメッセージも何かのヒントになってそうだけど……。


「まだ結晶があったのね……それに『その涙はやがて波となり、光を映す導きへと変わる』って次のヒントなのかしら」


 みぃもうちと同じ事を思っていたようだ。これまで手に入れた結晶にはローマ数字が刻まれていたけど、この青い結晶は光にかざしても記号が刻まれていなかった。この部屋、『祈りの涙』の扉を開けるのと同じ詩文がヒントかぁ……。うちはもう一度、教会で見た祈りを思い出す。


 

 我らの水の魂よ、深き悲しみを抱きし者よ。


 黒き炎が世界を埋め、悲しみの涙は海を満たした。

 あなたはそのすべてを受け止め、静寂の底に沈めた。

 その涙はやがて波となり、光を映す導きへと変わる。

 我らはその悲しみを忘れず、恵みに感謝し、明日を照らす希望と共に歩まんことを――ミレア・ノヴァ。



 涙はやがて波となりってさっきの部屋の状態みたいだなぁ。この部屋で光を映すものは鏡だけど、入口は薄暗いしあまり光のイメージがない。それなら、さっきの広間の方が明るいし、あっちの鏡に意味があるってこと?


「みぃ、この『光を映す導きへと変わる』って鏡な気がするんだけど、さっきの広間の床にあった巨大な鏡だったりするかな?」


「可能性はあるわね。入口のパネルに結晶をはめ込む場所はなかったし。赤い結晶があった所に、これをはめ込んでみましょ」


 二人で先ほどの広間に戻り、台座の光の筋が当たっているくぼみに先ほどの結晶をはめ込むと、鏡のフチをなぞるように青く光った。おぉ、まさかの一発でギミック正解だった?


 だが、数秒待ってみてもフチが淡く光っているだけで、他には何も起きなかった。


「あれ? 何も起きないね。って、このマークなんだろ?」


「これ光を集める鏡みたいよ。ほら、このマーク押すと説明文が出てくるの」


 そう言いながら、みぃが眉を寄せて目の前の空中を見ている。言われたとおり、三角形の中にビックリマークがついているアイコンを押してみると、パネルが表示された。


 ―――――――――――――


 《光の導管》

 起動方法:三光の集結

 成功条件:正しい光を同時に起動する


 ―――――――――――――


 三光って太陽、月、星の光のことかな。それを同時にってなると……朝方とか、夜の時間とかにするってこと? 実はこの満潮タイマーがヒントになっているのかもしれない。ゲーム的にはありえそうだけど、こういうのは得意なみぃに聞いてみるのが一番だよね。


「この三光って太陽、月、星のこと?」


「それもあるかもしれないけど……この書き方だと、三種類以上の光が存在すると思うわ」


 みぃが鏡と部屋をぐるりと見渡し、口に人差し指を当てている。彼女が考え事をするときによくする仕草だ。ゲームでも、レポートでも、その真剣な眼差しを眺めるのが実は結構好きなんだよね。


 見てるだけじゃなくて、うちも協力できるようにいろんな方向性から考えてみよう! この部屋は床も濡れてないし、気兼ねなく寝っ転がれるぞー! いろんな角度で部屋を見渡すためにゴロンと寝っ転がる。まずは天井! ウッ、眩しい!


「出た……茶ラブのルーイ。ねぇ、匂いで正しい光とか探せたりできない?」


「犬じゃないわい! 光に匂いがあったら外に出ただけでうちの鼻がもげちゃうがな?!」


 思わず起き上がってエセ関西弁でツッコミを入れてしまう。犬ちゃいまんがな。


「布団干すとお日様の香りっていうし……ルーイなら行ける気がするのよ。ほら、謎運と引き換えに鳥運がデスロード突入してるし」


「鳥運関係ないよね?! あと、デスロードに突入しないで?!」


「えー」


「えー」じゃないの! 考えるの放棄してませんか?! ちなみに、お日様の香りは太陽が残った洗剤とかを分解した匂いらしいよ。匂いはわからないけど、鳥ちゃんなら紫外線の色まで見えるし正しい光とかわかったりするのかな?


 うーんと考え込んで地面を見ると、足元の光が水面みたいに揺れていて、なぜか美術の授業で使った水入れが頭を過ぎった。キラキラとした透明な水に、いろんな色がゆらりと混じっていくのを見るのが好きだったなぁ。


 ん? 光……。水……と色……?

 頭の中で何かがカチッと繋がった。


「みぃ……三光って色のことだったりするかな?」


「色?」


「三つの色を混ぜると白になるよね? これもそうなのかなって」


 みぃの目が見開かれ、すぐに理解が追いついたように頷く。


「RGB……レッド・グリーン・ブルー。光の三原色よね」


「それそれ! この部屋にある全部の色を混ぜると黒くなる。それが失敗。でも、(R)(G)(B)だと白になる。それって、希望の色っぽくない?」


 昔、水彩画で思う通りの羽の色にできなくて、先生に色の話をしてもらったんだよね。扉にはめた結晶の色は透明、赤、黄、緑の四つ。この広場にあるのは透明以外の三色。


「青はここにあるし、黄色以外の結晶の光を集めればいいんじゃないかなって」


 そこまでは分かったけど——。


「でも……光を集めるには、どうしたらいいんだろ」


 みぃが沈むように埋め込まれている鏡の円盤をじっと覗きこむ。


「……扉を閉めたら、天井の光が各結晶に当たって――中央に反射される、とかかしら? 試しに戦の扉を閉じてみましょ」


 なるほど、そしたらこの部屋の天井から太陽の光がいくつも差し込んでいるのに納得がいく。みぃが赤い結晶がはまっている扉を押して閉めてみた。


「ありゃ、全然当たらないね。STR(筋肉)で扉を外してみる?」


「そんな脳筋パワー解決じゃないと思うわ……あと、外れたらバグな気がする……」


 呆れるようなジト目で見られた。押してダメなら、引いて外すじゃないかー。この光をさらに反射でもできたら扉に当たるのになぁ。そういえば、さっきの部屋にあったパネルの鏡……あれ、使えるんじゃない?


「使えそうな物思いついたから見てくる!」


「ちょ、え?」


 使えなかったらどうしようかと思ったが、フリスビーくらいのサイズの鏡はあっさりと外れた。何もエラーとか注意が出なかったし、きっとバグじゃないと思う。両手に鏡を持ってエッホエッホと駆け足で戻る。


「これ、上手く角度調整して当てたらよさそうじゃない?」


「何かと思えば……フリスビーでも取りにいったのかと思ったわよ。でも、確かにこれならできそう。えっと、ここらへん……かな」


 みぃは天井の太陽光が斜めに差し込む場所を探して、そこに鏡を一枚そっと立てかけ角度を調整した。光が鏡に反射して赤い結晶に当たった瞬間、結晶の内部がふわっと赤く灯る。細い光の帯が涙の結晶から放たれると、中央の鏡へ吸い込まれていった。


「わ……キレイだね……」


「そうね。神秘的でキレイ……」


 思わず見とれてしまうほどの光景だった。あとは同じように、緑の結晶がはめ込んである祈りの扉を閉じるだけだ。三光が集まったら、どんな風になるんだろう? でも、他の扉と違って引いて閉じないといけないんだよね……これ、閉まるのかな?


 案の定、取っ手も、掴めるところもないので、完全に閉じることができなかった。扉がわずかにズレているせいで、どの角度から反射しても光が結晶から逸れてしまう。やっぱりしっかり閉めないとダメか。


 密室っぽくなるし、みぃが嫌なこと思い出すかもしれないから、やらせたくないな……。祈りの部屋はまだほんのり暗いだけだし、大丈夫かな? みぃならすぐ調整できるだろうし、心頭滅却するためにひよこの数でも数えてたら終わってるよね。きっと大丈夫!


「これ、中から閉めないとダメっぽいね。うちが中から閉めるよ、みぃは鏡の調整お願い!」


 ——その瞬間、みぃの表情が僅かに曇った。



「やだ」

次の更新はいつもの木曜日です。


[読者の皆様]

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