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4羽目:その羽に埋もれたい

 このファウスト周辺の森は昼間ならノンアクティブのモンスターしかいないみたいだし、さっきの鳥ちゃん確認したいじゃん?ちょっとだけ!ちょっと見るだけ!

 

 草むらを歩いていると顔よりもでっかい蝶のようなモンスター【ギガバタフライ】が花の蜜を吸っていたり、蔦のようなくせ毛がある緑のウサギ【アイビーラビッツ】がぽふぽふと跳ねていたりした。

 

 ブーツの裏に伝わる補装されていないごつごつとした土道の感触を楽しみながら歩いていると、低木がガサガサと揺れてまんまるボールみたいなニワトリが現れた!しかもこのニワトリたまごの殻をかぶっていらっしゃる!モンスター名を見てみる。


 【エッグケッコー】

 

 卵の殻だからエッグ!かーわーいーいー!その殻の下どうなっているの?トサカはあるの?帽子みたいに被っているだけ?それともふわ毛?見て見たい……。

 

 うずうずしながら、エッグケッコーにゆっくりと近づくも地面の食べ物を探しているのか、土と草を突いているのに夢中でこちらに気が付いていない。

 これはチャンスでは……?両腕をそーっと伸ばしてガシッとその丸い体を掴むと高級羽毛布団のような、クッションビーズとも言えそうな柔らかい感触が両手に伝わる。

 (※現実は鳥獣保護法により禁止されています)

 

 ほわぁぁああああっ!何このもきゅつる感!やんわらかぁ!頬ずりしたい!顔埋めたい!窒息したい君の羽毛で!というか、両手でつかんじゃったから頭の殻外せないじゃん!

 

 ……うーん。

 とりあえず顔うずめようか、ふへへ。


 エッグケッコーに顔を近づけると首を180度回して睨みつけてきたと思いきやモンスター名の横に赤い闘牛のようなマークが表示される。

 

 あれ、これ敵対と見なされた時出るって言ってたよね?ってことは今ワタシあなたのエネミーになったってこと?


 「コッケェェェイ!!!」

 ずびしっ!とおでこをクチバシで突かれる。


 「?!?!地味にいたいね?!」

 おでこと頭にクチバシが刺さる度に刺々しいエフェクトが現れるが、エッグケッコーさん、首がない球体みたいな体をしているからふわっとした体もぶつかる。


 自分のHPバーを見ると1だったり5だったりしか減っていない上、座っていると回復するようで減っては回復の繰り返しをしているので、しばらく痛ふわを楽しむ事にした。

 うふふ、いった!ふんわぁ、あはは、これクセになるわぁ。


 

 「(あの初心者、正座してエッグケッコーに顔うずめて何してるんだ……?)」

 

 「(シッ、あれは見ちゃダメなやつ!)」

 

 

 しばらくエッグケッコーの羽毛を堪能しているとピコン!と音がしてパネルに《【クリティカル耐性小】 獲得》と表示された。


 

 【クリティカル耐性小】パッシブ

 獲得条件:一定時間内に複数回クリティカルヒットを受けること。

 効果:クリティカルダメージ10%減少。

 

 

 へぇ、何かずっと攻撃されていると耐性がつくのか。さっきよりも痛みとトゲトゲエフェクトが減ったことだし!もうしばらく堪能してよ。んふっ、この背中のふわふわお日様の香りがたまんなぁーい。

 奥まで羽毛たっぷり、やっぱこれだねぇ。とどこかのチョコ菓子のCMセリフのような事を想いながら羽をスーハ―する。


 しかし、このもきゅつる感と程よい突きによる揺れが電車を彷彿させるなぁ、このまま枕にして寝られそうだ。すぴー。

 

 

 「(あの初心者まだやってる!?てかエッグケッコー増えてない?!)」

 

 「(シッ、だから見ちゃダメなやつだって!)」

 

 

 どれくらいの時間が経ったかわからないが、ひたすらにふわふわとザクザク刺されるのを堪能しつつ、寝そうになりかけてはハッとしていたらいつの間にか【クリティカル耐性大】と【集中回復】をゲットできていた。あとふわザクが周りにも増えて幸せも増加!


 

 【集中回復】パッシブ

 獲得条件:一定時間、座ったまま連続してダメージを受け続けること。

 効果:座った状態でHPの自然回復速度が上昇する。


 

 【クリティカル耐性大】パッシブ

 獲得条件:一定時間内に複数回クリティカルヒットを受けること。

 効果:クリティカルダメージ50%減少。

 

 耐性的なのついたら実質ダメージゼロになるのでは、ということはエンドレスふわザクを楽しめちゃうパターン?と思っていたけれど、このゲームでは最低でも1はダメージがプレイヤーに入る様になっているみたいだ。

 まぁ、1から5の間を行ったり来たりしていたダメージが1だけになっているなら4ダメージ分の時間は稼げているから耐性って夕方のスーパーの赤シールくらいお得だね!

 

 しかし、幸せな時間はそれ以上続く事もなく、エッグケッコーの鳴き声で徐々に仲間が集まったこともあり最終的に10羽で全身をもふザクされ、パリンという音と共に私は幸せに満ちたポリゴンとなって飛び散ったのだった。

 


 目を覚ますと先ほど説明を受けていた案内所から少し手前に寝ていて、HPのバーはほぼ黒で埋め尽くされわずかに赤いバーが覗いている。

 

 受けた説明の1つを思い出してパネルを開いてみると、ステータスがすべて半分の5になっている上に29m32sとカウントダウンタイマーが表示されていた。

 やられて町に戻ると一定時間半減するって言ってたね、でもクリティカル耐性大と集中回復もらえたからヨシ!

 レベルが高くなるにつれてステータス半減の回復時間が長くなるって言ってたけど、Lv1の自分だとゲーム内時間30分ほどで回復するのね。

 

 結局エッグケッコーの殻の下ってどうなっていたんだろう?等と考えている間、集中回復のお陰もあってか、HPが3分の1程に戻っていた。まぁ、ここに座ってHPとか回復していてもいいけど、澪もそろそろログインして来そうだし、おとなしく町の中をうろついてようかな。


 ふわザクされた感触を思い出してはニヤニヤしたいのを抑えて、今度は森とは反対側にある城門を潜り抜けると徐々に道の両脇に露店が表れ始めた。

 大通りを中央へと進んでいくほど露店が増えているみたい。

 

 「ほわぁ~南米へ行った時に通った町みたいな活気だなぁ」

 コンドルは飛んでいくを聞きながら野生のクロコンドル見たいから行ってきたんだよねぇ。

 

 観光客の様にキョロキョロしながら歩いていると1本の路地裏に現実世界でも珍しい白カラスがいた。

 鳥ちゃんがこんな街中にも!!!!行っちゃうよね!君の元へ!人気のない路地裏ってリアルなら危ないから近寄らないけど、ここはゲーム!そして鳥がいたら行かないという選択肢はなぁい!


 むむ、この白カラスちゃん近づいても微動だにしないね?というかうちの後ろを見ている?動物にしか見えないあの世のモノ的な何かが背後にいらっしゃいますの……?

 

 路地裏はポツンと切り取られた空間かのように静けさが漂っていて、白カラスが見ていた方角を振り返れると先ほどまでいた賑やかな表通りがまだ見えるだけだった。

 

 よかった、これで振り返ってお化けがドゥーンみたいなホラーシーンじゃなくて。

 まぁ、今はゲーム内だけどお昼の時間帯だし、そんな白昼堂々とお化けは出てこないか!ゲームとかならもっと夜のホーンテッドなマンションっぽい建物でやるよね!庭のインテリが十字のお墓のやつ。

 

 再び振り返ると、先ほどまで何もいなかった所に黒いローブを着た人がいた。いや、正確に言えば先ほどまで()()()()()が居た場所に()()()()()()()()()がいたのだ。


 「おわぉぅ!!」

 乙女なのにびっくりして変な声が漏れたじゃんよぉ!

 

 プレイヤーだと頭上にプレイヤーマークが表示されるが、ない場合はNPCだと聞いていたので、この人はNPCってことなのだけど。さすがにいきなり登場したらビックリはする。というか、私の愛しの白カラスちゃんはいずこへ?実はカラスに変えられていた王子様だったのかな?

 私まだ変身解除の口づけしてないですよ?

 

 しかし、この人ローブを深く被っているので顔が見えないし、いかにもTHE・怪しい占い師のような雰囲気を醸し出しているだけだった。

 

 うーん、NPCってことは話しかけたらいいのかな?いきなりブスッって刺されたり、カツアゲとかないだろうし平気か?

 我ながら判断基準が物騒だとは思うけど、海外だと割とある話だからなぁ。と、ぼんやり考えていると占い師がゆっくりと口を開きしゃべりだした。

 

 「……汝、その背に光の翼を授かる者よ。」


 えぇ……?

本作品をお読みいただいてありがとうございます。

少し更新頻度を上げられそうなので、毎週火曜日だったのを今後は毎週月曜日と木曜日の夜に更新する事にしました!

これからも鳥もふをお楽しみいただけたら嬉しいですっピ!

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