44羽目:それは遅効性?それとも即効性?
きの子さんと目が合い、何かシンパシーを感じた。
「きの子さん、初めまして! みぃの友達でルーイです! 人間族の剣士で、鳥のすべてを受け止めるために、タンク目指してます!」
「君が新しいギルメンきのね~! 敬語とか気にしなくていいきの~。きの子は妖精族のダークエルフで、魔導士きの! きのこラブなのきの~!」
きの子さんはぱっと目を輝かせ、そして嬉しそうに語り始める。
「菌糸類って種類が多すぎるけど、きのこは特に見た目のフォルムとか色がたまらないきの! 傘の形とか、ひだの模様とか、もう自然の芸術きの!」
うちも目を輝かせて頷いた。
「気持ちわかる! 鳥類も種類が多いけど、羽の形や色合い、生息域によって全然違って、それがたまらないんだよね!」
きの子さんは、ぱちぱちと手を叩いた。
「それって、きのこと同じきの! 見た目も、生態も奥深いきの~!」
お互いの“推し”は違えど、語る熱量と愛は同じ!
その場に、ちょっとした“推し活同盟”が誕生した瞬間だった。
みぃは「やれやれ……」とため息をつきながらジト目で見ている。
その隣でまりんさんは「ふふっ」と優しく見守り、三影さんは……ちょっとだけ壁と同化していた。
残りのメンバーであるジョンさんとツバキ先輩がログインするまでには、まだ少し時間があるらしい。その間に、ゼフィさんを森まで送り届けることにした。
「はい、みんな! これ、お土産にどうぞ」
アルカナジャムを使ったパウンドケーキを手渡す。
すると、ケーキの周りに三つの光が集まり、まるで神輿のようにケーキを担ぎながら「ワッショイ!」と舞い始めた。
「……妖精は甘い物好きが多いな?」
ルミさんに新作のレシピ本を今回は借りられたし、次は食事系のレシピでも試してみようかな? ちなみに、新しい本のタイトルは『恋する薬膳ごはん~癒し&ときめきの一皿をあなたに~』だった。
♦
ギルドホームに戻ると、三影さんがみんなに声をかけた。
「これで全員揃ったな」
……と言われたものの、どうにもジョンさんの姿が見当たらない。
首をかしげながら辺りを見渡すと、壁際でジョンさんが口から紫色のきのこを 半分出したまま、床に倒れて泡を吹いていた。
ツバキ先輩が、回復っぽい瓶を口に押し込んでいるから……まぁ、大丈夫かな?
ギルドの日常は、今日も平和(?)だった。
「さて、俺たちがこれから向かうのは、地下三階層になっている、地下溶鉱都市 ――《マグマの街ダンジョン》だ。それと、さっき話したがみぃちゃんたちの進めている妖精クエストにも、関係している可能性がある」
どうやら、うちらが留守にしている間に、三影さんが妖精クエストの話を広めてくれていたらしい。
火山の入口から地底深くに繋がっているそのダンジョンは、かつて火の精霊たちと人々が協力して、武具や魔道具を生み出していた都市だったという。ジョンさんとツバキ先輩が吟遊詩人系のクエストで歌を聞き、気になって図書館で文献を調べたところ、該当する場所を発見できたんだとか。
文献によると、地底深くに築かれたその都市は、かつて火の精霊たちと人々が協力し、精霊炉を使って様々な道具を生み出す職人の都だった。しかし、冥界王の侵攻によって都市は封鎖され、精霊炉も封印された。
今では、精霊たちの気配も途絶え、危険地帯に指定されているため、隠されていたんだとか。
「確かに、この話だと炎の妖精がいそうな気がする」
「そして前回、四名で挑戦したけど……ボスが火属性の《フレイムグラット》で、物理がほとんど通らなかったのよ……」
まりんさんが困った顔で応える。
そのとき、壁際でうずくまっていたジョンさんが小さく手を挙げた。どうやら、生き返ったらしい。
「……あれはぁ、アカンかった。触れるだけで熱でHPがじわじわ削られてくし……あと、きのこも食べたらアカンかった……こっちはワンパンやったわ……」
うん、口から見えてたの、明らかに「私、毒です!」って主張してたもんね。
「だから今回は、魔法火力が要になるきのね!」
きの子さんが胸を張って宣言する。
「火属性には水か氷属性きの! きの子の【氷河の嵐】でカチンコチンにするきの!」
パーティーを組む前に、それぞれが必要な物を確認していると、ツバキ先輩がジョンさんの背中をぽんぽんと叩きながら、回復薬を手渡していた。
「次は勝てるよ。きの子んの超火力があれば、ボスも怖くない」
「おう、リベンジしよな。あと……きのこはもう、食べへん……絶対に……」
ジョンさんは、きのこ帽子を見て一瞬震えたが、すぐに気を取り直して立ち上がっていた。そういえば、前回は四人だからひとつのPTでよかったけど、今回は人数オーバーでは?
「みぃ、パーティーって五人までだけど、七人だとこの間みたいな同盟でやるの?」
「ギルドメンバーじゃない場合は同盟で複数組むけど、同じギルドならギルドPTっていうのを使えばみんなで組めるのよ。ギルマスが編成できるからもう組んでくれてるよ」
そう言われてパーティー欄を見る。
1パーティー目:三影(Lv40) みぃ(Lv35) ルーイ(Lv27) きの子(Lv40)
2パーティー目:まりん(Lv40) ジョン・M・イヌリウス(Lv40) ツバキ(Lv40)
おぉ、みんなMAXのLv40なんだ。……うち、ちゃんとついていけるかな。
「あれ? みぃレベル上がってるじゃん! おめ!」
「あり~、さっき調合してあがったんだ。お礼にこれあげるね、利子付で」
はい、と渡されたのは大量の回復薬と状態異常回復薬だった。
また利子付……その借金が、きのこの毒のようにじわじわと広がっていく。毎回くれるのは嬉しいけどさぁ……っていうか、これ、押し売りじゃない?
スタンプ、ブクマ、★をポチっとしていただくときのこが浮かび上がるかも?
きの子:「きのこ?!どこきの?!!!」




