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VRゲームで鳥をもふもふしたいだけ!  作者: 音夢


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23/67

21羽目:煽るのって難しいよね?

 正面には突進するトッコーボア、背後には殺気をまとったオークリーダー。どちらを盾で防いでも、どちらかの攻撃を受けることは避けられない。


 絶体絶命のピンチ。


 さっきあんなことを言ったのに、作戦を実行する間もなく終わってしまうのか!?

 大丈夫って言ったのにぃぃ! どうする、どうする――!!


「【ファイヤーボール】!」


 みぃが羊皮紙を開くと、赤い光が紋章をなぞる。

 オークリーダーの背中に燃え上がる炎の玉が当たり、バランスを崩したのか、走る速度が落ちた。


 炎の玉のおかげで、わずかに早く猪が盾に衝突したのを右へ往なし、トッコーボアはどこかへと直進していき、すぐに背後へ向きを変え盾を構える。

 しかし――もう拳が目の前に迫っていた。


 でも、走るスピードが落ちたせいか、拳の勢いも弱まっている。

 ナナメ下から狙いを定め、振り上げるように盾のフチを当て、軌道を逸らした。


 背中から煙を立ち上らせながらも、肩で荒く息をするオークリーダーは、なおも大地を踏みしめていた。

 強い……だが、負けるわけにはいかない!!


「グゥオオッ!」


 威勢よく右腕を振りかぶるが左へ回避すると、勢い余ったオークリーダーが地面に倒れ込んだ。



「グオッ!」


 短剣のダメージは低い――しかし、急所ならどうだ!

 体は人間に近い構造ならば、急所もうちらと同じのはず。


 昨日の会話が脳裏をよぎる。ならば、お前の弱点の一つは目でしょ!!

 短剣を思い切り左目へと突き刺した。クリティカルエフェクトとともに、赤いポリゴンの飛沫が舞い、オークリーダーがのたうちまわったので手を離して距離を取る。


「グガアアアアアアアアア!!!」


 よろめきながらも立ち上がると、短剣が刺さったままの左目から赤いポリゴンが滴った。

 血走った右目が憎悪に燃え、こちらを睨みつけてくる。

 ふいに、聞きなれたあの音が聞こえた。

 ナイスタイミングだ、ならば仕上げと行こうじゃないか!


「やーい!お前のかーちゃん牡丹鍋!べろべろばー【挑発】!」


 インベントリから回復薬を取り出し、口に入れ、盾を正面に構える。


「グゥオオオオオオオオアアアアァ!」


 地面をめり込ませるほどの勢いで蹴り込み、突進するオークリーダー。猪らしく正面から来てくれてありがとう!


 暗殺者(アサシン)はAGIが高いからね。ギルドでの記憶が脳裏をよぎる。

 もう速さでは負けないよ。


【反転 AGI】


 頭の中でつぶやく。思考操作によるスキル選択だ。

 瞬間、VITに振り切っていたステータスがAGIへと反転し加算され、景色が変わる。

 オークリーダーの動きが遅くなり、攻撃の軌道がはっきりと見えた。

 ぐっと踏みしめ、地面を蹴る――


「グァゥ?!」


 突如目の前に現れたことに驚き、オークリーダーが怯む。

 その隙を逃さず、盾を下から上へ振りあげて殴る。また赤いポリゴンの飛沫が激しく弾け、下からの衝撃によって後ろにのけ反った。


「グゥオオオ……!」


 続けて三段跳びの要領で腹を蹴り、さらに高く跳躍し、みぃに合図を送る。


「【ポーションボム】!」


 背後でタイミングを図っていたみぃが瓶を投げ、弧を描くように飛んだポーションが、リーダーの膝裏に直撃して破裂する。衝撃に耐えられずよろけて、後ろに倒れ込んでいく。

 どうだ!膝カックン爆弾成功!


 さてリーダーくん、硬いもので頭をぶっ叩かれて、さらに地面に叩きつけられたらどうなると思う?

 答えはね、とてつもなく、痛い!!


【反転 VIT】


 これが!最後の一撃だああああ!!


【シールドチャージ】


 盾にすべての力を込め、オークリーダーの頭へと叩きつけ、両腕から全身へと衝撃が走る。

 リーダーが頭から地面へとめり込んだ瞬間、赤いポリゴンが激しく弾け飛ぶ。

 同時に、盾を持つ自分の腕からも赤いポリゴンが散り、HPバーがみるみる黒に染まっていく。


 口の中に入れていた回復薬の瓶を歯で砕くと、減っていたバーが徐々に元へと戻っていった。

 盾をどかすと、そこには頭がポリゴンとなって散っていくオークリーダーの姿があった。

 静寂を破るように16回目のファンファーレが頭上で鳴り響いた。



「「か、かったぁー!!!」」


 勢いよく駆け寄って、思わず抱き合う。

 そのまま力が抜けて、二人して地面にへたり込んだ。


 終わった、でも……ファンファーレとピコンピコンが止まらないんですけど。

 視界の隅で次々に浮かぶ通知。

 どうやら、頑張った分だけちゃんと報われたらしい。


 《Lv16に到達しました》

 《Lv17に到達しました》

 《Lv18に到達しました》

 《Lv19に到達しました》

 《Lv20に到達しました》

 《スキル【急所突き】獲得》

 《【落下耐性小】獲得》

 .

 .

 .

 .


 【急所突き】アクティブ

 獲得条件:敵の弱点部位に対して、クリティカル攻撃を成功させる。

 効果:対象の急所を狙って攻撃を行い、通常攻撃より高いクリティカル率と追加ダメージを与える。


 【落下耐性小】パッシブ

 獲得条件:落下ダメージによってHPが一定以下まで減少した状態で生存する。

 効果:落下によるダメージ10%軽減する。


「汗もかいてないし、息は切れてないのに、マラソンの後みたいに、心臓がバクバクする感じだけして不思議……。てかなんかめっちゃレベル上がって、スキルとか取れたんだけど!」


「それねー、ゲームのいいところ。レベルアップおめ~、オークリーダーの推奨レベル30だもん、そりゃあがるよ。私もLv33に上がったわ。しかし、最後のあの回復薬の使い方と、戦術のぶっ飛び具合にびっくりだよ……。非戦闘職の私があれを倒せるとは思わなかったけど、ルーイのおかげだね、ありがと」


 また褒められた!


「そう?ふへ、へ、うへっへへへ」


「笑い方きもっ、あとずっと思ってたけど、煽り方下手くそかな?」


 きもくないもん!あとそれ言わないで!煽った事ないんだから仕方ないじゃないの!バンビーくんに煽り方講座でも開いてもらおうかな……?

トッコーボア1:「ぷぎぃ、ぷびびび(オレ、すぐぶつかった)」

トッコーボア2:「ぷぎぃー・・・(オレも―・・・)」

トッコーボア1、2:「ぷっ(あっ)」


トッコーボア3:「ブオオオオオ!ぴぎぃ?!(うおおおおお!おぉん?!)」


最後にはじかれた子は遠くの方でポリゴンになりましたとさ。

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